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大分・由布市の廃校をアトリエに制作する「ザ・キャビンカンパニー」が描いたカカオの世界『ミライチョコレート』とは?【PR】
大分・由布市の廃校をアトリエに制作する「ザ・キャビンカンパニー」が描いたカカオの世界『ミライチョコレート』とは?【PR】
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大分・由布市の廃校をアトリエに制作する「ザ・キャビンカンパニー」が描いたカカオの世界『ミライチョコレート』とは?【PR】

世の中からチョコレートが消滅している1000年後の世界で、チョコレートを探しにいく旅を描いた絵本『ミライチョコレート』(白泉社)。作者は大分県由布市の限界集落で制作を続ける2人組の絵本作家「ザ・キャビンカンパニー」です。この絵本が誕生するきっかけは、「明治ミルクチョコレート」「きのこの山」などでおなじみの明治からの声がけだったとか。「チョコレートとは何か」を主題にした絵本に込めた想いや制作裏話について、キャビンカンパニーに伺いました。

「チョコレートって何?」からはじまる物語

『ミライチョコレート』の主人公マヤは、1000年後を生きる女の子。博物館でチョコレートについて書かれた本を読んで、「食べてみたい!」と一念発起。チョコレートを探す旅に出る、というストーリーだ。作者のキャビンカンパニーは、阿部健太朗さんと吉岡紗希さんによる美術家ユニット。出身地の大分県で、もう十数年、創作活動を続けている。

阿部 「チョコレートを主題に絵本を描いてほしい」との依頼を受けたときは正直、戸惑いました。企業の方から絵本制作の話をいただくことはけっこうあるのですが、その企業の歴史や事業、社風などをよく知らないと、なかなか難しいんです。でも明治さんは、「会社のことはまったく気にしなくていい。『チョコレートとは何か』を深めていくような絵本にしたい」と。「食事」という普遍的な内容なら、やってみる価値はあると思いました。

吉岡 ちょうどそのころ、「食べものがどこからくるのか」というテーマで絵本を描きたいと思っていたんです。コロナ禍初期に、緊急事態宣言でスーパーやレストランに行けなくなって、日々のご飯をどうやって調達するのか皆さん悩まれましたよね。私たちは由布市の 山奥の廃校跡にアトリエを構えているんですが、周りのおじいちゃんおばあちゃんは、誰も脅えていなかったんですよ。みんな自分でお米や野菜を育てていて、80歳でも自給自足。そのようすを見て、「私たちはすごく弱いな」と感じたんです。

阿部 それから、廃校の花壇で野菜を育てはじめたんですが、いつ植えてどんな世話をして、いつ収穫すればいいのか、私たちは何も知らない。いつも田んぼや畑の横を通って、農家の皆さんの働き方を目にしていたはずなのに、ちゃんと自分ごととして見ていなかったんでしょうね。

『ミライチョコレート』(白泉社)の主人公マヤは、3024年の世界でカカオの森にたどり着き、工場でチョコレートを自作。そのおいしさに魅せられる

阿部 「昔は、家で飼っている鶏の卵を食べて、特別なときにはその鶏を絞めて食べていた。でも、卵すら毎日は食べられなかったよ」と近くの農家の方に言われたんです。いまはスーパーに行ったら、いつでも何でも並んでいて、一つひとつの食材のルーツを考えることはほとんどないでしょう。なので、食を見直す絵本をつくりたいと思ったんです。お米も野菜も、みんな農家さんがつくっていて……などと、いろいろ考えていたのですが、どうも説教くさくなっちゃう。そんなときに、チョコレートという題材に出合ったんです。

吉岡 たとえばジャガイモなら、日本でも生産されているからなんとなく工程がわかる。でも、チョコレートは生産地が遠いから、まったくイメージできないんですよね。だからこそ、どこからどの道をたどってチョコレートとして私たちのもとに届くのかを伝える意味があると思いました。主人公のマヤちゃんは、自分で考えて行動に移せる子ども。自分たちもこうありたいな、と思いながら描きました。 

発売を記念して、都内でおこなわれた読み聞かせイベント。子どもたちは、大好きなチョコレートのヒミツに興味津々!

阿部 カカオからチョコをつくる話にしようというのは最初から決めていたのですが、子どもがひとりでガーナやコートジボワールなどのカカオ産地に行くストーリーには違和感がある。カカオの木に登って実をとる絵を描くとなると、児童労働を想起してしまいますしね。どう描くべきか2人で悩んでいたある日、「未来の話にすればいいんじゃない!?」って、どちらともなく言い出したんです。

吉岡  「1000年後の話にすれば、子どもひとりでも、親代わりのロボットとなら一緒に冒険ができる!」と意見が一致。そこから、その時代には温暖化や過疎化が進んでいるだろう、などと想像を巡らせながら未来の世界を描いていきました。

1000年後を描いた絵本。街全体がタワーになっており、その周囲は木々に覆い尽くされているという世界だ

阿部 私たちが住む由布市の集落は、平均年齢が70歳以上。人口は100人程度です。あと30年もすれば、消滅してしまうかもしれません。そんな状況で自然のなかに住んでいると、森が襲ってくる感じがするんです。

吉岡 アトリエを構えた15年前、校庭跡は土のグラウンドだったんです。ところがいまは、草原のような状態。遊具もすっかり草に埋もれて、もはやジャングルです。定期的に地域のおじいちゃんと草を刈ってはいますが、とても追いつかない。このままだと森に浸食されて、埋もれてしまうんだろうなあと思っています。

阿部 かつて人々は、里山と共存していました。雑木林を切って薪にしたり家を建てたり、わらを刈って家畜のエサにしたり……。暮らしがそのまま、森の整備につながっていたんです。山と里の中間地点には田畑がありましたが、いまでは耕作放棄地が増えて、自然との境い目がなくなりつつある。その結果、うちの周辺でも、イノシシやシカなどの害獣がどんどん里に出てきています。人々は里山を離れて、駅周辺に集中している。いずれ私たちのアトリエ周辺は森に飲み込まれて、人々は一極集中のコンパクトシティに住むようになるのかもしれません。絵本では、そんな未来をモデルにして、人々の生活を描きました。

カカオの実は、絵本には最高の題材

吉岡 私たちも、チョコレートがカカオの実からできていることは知っていました。でも、娘はぜんぜん想像ができなかったようで、3〜4歳のころは「何かのうんち? 川から流れてくるの?」などと言っていました。

阿部 板チョコはとくに人工的な形だよね。でもこの絵本をきっかけに、ものごとを素通りせずに、「これはどうやってできているのかな?」と立ち止まって考えるようになってくれるといい。自分で考えることなく、ただ与えられた情報を鵜呑みにしてばかりだと、弊害がたくさんありますから。

吉岡 チョコレートはみんな大好きだし、自分で考えて行動することを伝えるのにぴったりの題材。私たちも、絵本制作を通じて勉強させてもらいました。今回はじめて、カカオの実が木の幹になるということを知ったんですよ。

阿部 色もサイケデリックだし、「そんなところから生えるの?」という感じ。カカオの森をモチーフにしたことで、自然とファンタスティックな世界を表現できました。明治さんから声をかけてもらったおかげです。幸福な共同作業でした。

photo: 横江淳、text:萩原はるな

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