MSC「海のエコラベル」つきの商品を扱うための認証を取って3年。いまイトーヨーカドーの売場で何が起きている!?【PR】
気候変動や、世界中で水産物への需要が増加したことによる魚の獲りすぎなどが原因で、海から魚が減っています。このまま持続可能なレベルを超えて魚が獲られていくと、近い将来、おなじみの魚が食べられなくなる可能性があるとか。国際的な非営利団体MSC(海洋管理協議会)が管理、推進するMSC「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮して適切に管理された、サステナブルな漁業で獲られた水産物の証。MSCラベルつき商品を販売しているイトーヨーカ堂の湯山一樹さんに、認証取得のいきさつや現状を伺いました。
「認証商品は、おいしくてサステナブル」を広めたい!
持続可能な漁業の普及に努める、国際的な非営利団体MSC。同団体が推進するMSC「海のエコラベル」がついた商品は、水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた持続可能な水産物だ。MSCラベルつきの商品を私たち消費者が選ぶことで、持続可能な漁業を応援し、水産資源や海洋環境を守ることにつながるという。そのうち加工業者や卸売、小売、レストランなどで持続可能な認証の水産物を取り扱う場合に必要になるのが、認証水産物と非認証水産物が混ざることを防ぐための「MSC CoC認証」だ。
イトーヨーカ堂鮮魚部 総括マネジャーの湯山さんによると、セブン&アイ・ホールディングスでは、2022年10月にMSC CoC認証を取得。店内で認証水産物を加工し、MSCラベルをつけて販売できるようになった。
「水産物は有限ですから、世界規模で漁獲量が制限されはじめています。その現状は、まだ十分には知られていませんので、当社がMSCラベルのついた商品を販売することで、海の状況に気づいていただくキッカケになればいいなと考えています」(湯山さん、以下同)

MSC認証には漁業に対する「MSC漁業認証」と、水産物の水揚げ以降のサプライチェーンに対する「MSC CoC認証」の2種類がある。これによって、MSC漁業認証を取得した漁業で獲られた認証水産物が、非認証の水産物と混ざることなく消費者のもとに届く
MSC「海のエコラベル」は、ヨーロッパでは認知度が高く、“ついているのが当たり前”というほど普及しているという。日本でも認知度は上がってきているものの、いまだ22%にとどまっている。
「認証商品の販売に取り組みはじめた2018年当時は、サステナブルについての意識を持っていない従業員がほとんどでした。バイヤーや商品企画のスタッフも『認証商品を仕入れたら、価格を上げることになるんじゃない?』『苦労をして認証をとる意味はあるのか?』という意見が多く、なかなか認証取得が進みませんでした。そんななか、2019年にセブン&アイグループの環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』が出され、『持続可能な調達』がテーマのひとつとなったことが、取り組み推進のきっかけになりました。持続可能な調達を実行することが、会社への貢献につながると考えました」
水産の仕入れを統括する湯山さんの意識が変わったことで、MSC CoC認証取得への動きが加速。同時に、仕入れの現場にも少しずつ変化が出てきたそうだ。
「商談時に、自然と水産資源の持続可能性についての話が出てくるようになりました。調達の最前線で、『この加工屋さんは認証が取れているの?』『この商品にラベルつきのものはある?』などという会話が増えてきたのです。そうするうちに、だんだんバイヤーたちの意識も変わって、2022年のMSC CoC認証取得にこぎつけました」

MSC「海のエコラベル」がついた水産品は約70ヵ国で販売され、世界で2万品目以上にのぼる。MSC CoC認証を取得した国内の企業は2020年の301社から、現在は391社に増えている。セブン-イレブンでもCoC認証を取得しているメーカーがつくったラベルつきの明太子を販売中だ
MSC CoC認証を取得後、MSC「海のエコラベル」つきの商品が店頭に並び、販促パネルや動画で認証についての説明も実施された。
「売場でお客様に『このラベルは何?』と聞かれたら、鮮魚スタッフが、『漁師さんだけでなく、加工や包装する場所まで、ぜんぶ認証を取っているんですよ』などと説明できるようになりました。それを聞いたお客様が、家庭などでその話をしてくださる。こうやってMSCラベルの認知が広がっているようです。実際、MSCラベルつきの商品を見た親子が『パパ、これはあのマークだね!』などと話されているのを何度か耳にしました。いまでは、みなさんの意識がかなり上がったと思います」

湯山さんは北海道の釧路出身。漁業関連の仕事をする父のもと、おいしい魚を食べながら育ったという。「魚食を拡大することが、地元の釧路や父、さらには会社への恩返しだと思っています」
調達の現場でも、海の変化はひしひし感じると湯山さん。
「仕入れの現場では、南の魚が北の海で獲れたという話をよく聞きます。海水温や生態系の問題、生産者の減少など、漁獲量の減少にはいろんな要因が関わっているのでしょう。そうした現状に気づいていただくためにも、実際にMSCラベルのついた商品を見て、触って購入することが大切。それがおいしくて価値のあるものだとわかれば、これからも認知度は上がっていくはずです。そのためにも、われわれは商品の力が発揮できるような商品構成と売場をつくっていかなくてはなりません。全社をあげて、意識をもう一段階上げていかないと、と考えています」
photo:西城泰輔 text:萩原はるな