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消えたプラスチックごみ。巡り巡って……!?
消えたプラスチックごみ。巡り巡って……!?
COLUMN

消えたプラスチックごみ。巡り巡って……!?

海が泣いている——。およそ700万年の人類の歴史のなかで、現代の、このたった数十年の間に、私たちは破壊してしまったのです。海のシステムや海洋生物、美しい自然の数々を。海の被害は深刻です。私たちが考えている以上に。でも、絶望はしません。まだできることがあるはずだから。海を変えるために、自分が変わることからはじめましょう。海に願いを込めて。

地球を巡るプラスチック。
いま必要なのは「使用削減」

街からは飲み物の使い捨て容器だけでなく、レジ袋やカップ麺の容器など、プラスチックごみが下水から川、海へと流れ込んでいる。多くの人は外出先で出たごみはごみ箱に捨て、家庭ごみは分別して廃棄しているはず。それでも大量のごみが海に流入しているのは、駅やコンビニのごみ箱があふれて風に飛ばされたり、ごみ集積所の袋を動物が破ったりして、回収されるはずのものが流出してしまっているから(さらにポイ捨てや業者による不法投棄という悲しい現実もある)。

現在、陸から海へ流入するプラスチックは世界で年間800万トンともいわれている。そうしたごみが体に刺さったり、巻きついたりして傷つく海の生き物たちが各地で発見されており、なかには食べ物と間違えて食べ、命を落としてしまう海洋生物も。さらに近年、世界的に問題視されているのが「マイクロプラスチック」。海に流れ出たプラスチックごみが紫外線や波によって細片化されたもので、大きなごみが海岸に打ち上げられやすいのに対して、マイクロプラスチックは沖合へと運ばれる。結果、小魚や貝などの小型の海洋生物に取り込まれやすくなるという厄介な問題も……。小さな海の生き物の体内に蓄積したマイクロプラスチックは食物連鎖によってより大型の海洋生物に取り込まれ、生態系に悪影響を及ぼす。近年は東京湾で捕獲されたカタクチイワシの体内からもマイクロプラスチックが検出されており、皮肉にも人間が捨てたプラスチックが巡り巡って私たちの食生活を脅かしているのだ。

もうひとつの問題は、海には工業化学品や農薬などに含まれる有害化学物質が漂っており、プラスチックは性質上それらを吸着しやすいということだ。海中の有害物質の影響が、海に漂流するプラスチックによって、より広げられていく。海洋生物の体内にマイクロプラスチック自体が元来持つ有害物質(プラスチックの製造過程で添加された化学物質)と、海中の有害物質がダブルで蓄積するというわけ。

プラスチックは簡単には自然に還らない。マイクロプラスチックは海洋生物の体内に取り込まれたり、海底に沈んで蓄積したりして、永遠に地球のどこかを巡っていく。このままのペースでプラスチックを使用、廃棄していけば、将来的には海中のプラスチックごみの質量が魚の質量を上回るという試算もある。

昨今、世界では循環型社会を目指すキーワードとして3R(Reduce Reuse Recycle)活動が提唱されているが、Reuse(再利用)とRecycle(再生利用)を日々心がけているという人は多いはず。それでも悪化の一途をたどるプラスチック汚染に歯止めをかけるには、とにかくReduce(使用の削減)しかない。ひとり一人がこれまでのライフスタイルを見直し、プラスチックの利用量を減らすこと。少しずつでもいい、小さな変化が世界が直面する大きな問題を解決する手助けにきっとなる。それを心に留めて、明日からの暮らし方を考えたい。

マイクロプラスチックとは?

海に流入したプラスチックが、太陽からの紫外線を浴びたり波や砂にもまれたりして小さく砕け、5㎜以下になったもの。海流の影響を受けやすく、広範囲に広がったり、海底に沈殿したりする。小型の海洋生物が誤食することもある。

漂流するプラスチックごみで
傷つく海の生き物たち

プラスチックストローが体にささったウミガメや、ストローを飲み込んで胃に穴があいてしまったペンギン、レジ袋を飲み込んでしまったクジラなど、プラスチックごみのせいで傷つく海の生き物が続出。最悪の場合、命を落とすこともある。

東京湾の魚からも
マイクロプラスチックを検出

2015年、東京農工大学の高田秀重教授らのグループが、東京湾で捕獲したカタクチイワシの体内からマイクロプラスチックを検出。食物連鎖に入り込んだマイクロプラスチックが人間の食生活にも影響を及ぼしかねないことを示唆した。

海から私たちの食卓へ。
巡るプラスチック

東京湾以外でも、世界各地でスーパーマーケットなどで売られている食用の魚や貝からマイクロプラスチックが検出されている。すでに水道水や市販のミネラルウォーターからも検出されており、拡大への懸念が高まっている。

プラスチック添加物は体内に蓄積する

プラスチックを製造する際に添加される有害な化学物質は、マイクロプラスチックを取り込んだ生き物の体内に蓄積する。さらにマイクロプラスチックが吸着した海中の有害物質が生き物に悪影響を与えることも懸念される。

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Illustration:Amigo Koike Text & Edit:Yuriko Kobayashi Cooperation:Hideshige Takada(Tokyo University of Agriculture and Technology), Tetsuji Ida(KYODO NEWS)

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