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「ワクワクできるか」が勝負! 再生プラスチックの最先端アイデアが大集合!!
「ワクワクできるか」が勝負! 再生プラスチックの最先端アイデアが大集合!!
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「ワクワクできるか」が勝負! 再生プラスチックの最先端アイデアが大集合!!

この夏、東京・新宿区のDNPプラザで開催されている企画展「Recycling Meets Design展 『デザインの力』で再生プラスチックを活かしたい。」(10月1日まで)。主宰する「Recycling Meets Design Project」は2019年に大日本印刷内で立ち上がり、数多くのデザイナーやリサイクル業者、関連企業などを巻き込んで広がり続けています。このプロジェクトの現在地を、企画展の展示内容とともにレポートします(後編)。

―――前編はこちらーーー

技術力×デザイナーの発想力で未来へ!

デザインの力を借りて再生プラスチックの可能性を拡げようという「Recycling Meets Design Project」(以下、RMD)。2019年に立ち上がったこのプロジェクトの取り組みの経緯や環境については、会場の一角にある展示コーナーで説明されている。

会場内には18の「再生プラスチックの用途を広げるプロダクトアイデア」に加え、プロジェクト全体の成り立ちとその進捗などに関する資料なども展示されていて飽きさせない。

プロジェクト立ち上げの契機となったのは、大日本印刷でパッケージ関連の企画・製作に携わる福岡直子さんと、そのビジネスパートナーで世界的なデザイナー、ヘンリー・ホーさん(デザイン会社GTDI代表)のつながりだ。

「デザインの力で社会問題を解決し、世の中に前向きなインパクトを与える——そんなプロジェクトができるんじゃないか。2019年、旧知のヘンリーから、そんな投げかけがありました。そのとき私たちは、環境に配慮した『GREEN PACKAGING』のブランド化、普及などの取り組みに携わっており、それとヘンリーのアイデアなどがつながって、RMDが立ち上がりました」(福岡さん)

勉強を進めていくうち、福岡さんらは、「この問題はデザイナーがアイデアを出すだけでは到底、解決策までたどりつかない」と気づいた。デザイナーだけでなく、実際にプラスチックのリサイクルを手掛けているリサイクラーや、再生プラスチックを現時点で利用している製造業者やエンジニアなど、各ジャンルのスペシャリストたちの知識、経験も必要だということに思い至ったのだ。

そこで、この問題に関わるさまざまな業種の人たちを集め、自由闊達に意見を出し合う「共創」という体制をつくる方向に進んでいく。

左から木村雅彦さん(GKグラフィックス取締役)、福岡直子さん(大日本印刷Lifeデザイン事業部イノベーティブ・パッケージングセンター企画本部 本部長)、ヘンリー・ホーさん(GTDI 代表)。RMDの立ち上げに関わった3人だ。

その体制づくりのために尽力したのが、もう一人の中心人物である木村雅彦さん。彼は、ヘンリーさんと同じくデザイナーであるとともに、地方の都市計画の場などで異業種の人間をつないできた、「共創」の経験が豊富なスペシャリストだ。

「通常のプロジェクトは、各ジャンルのエキスパートが役割分担して進めていくのが一般的です。でも今回のように道なき道を行く案件の場合、それではなかなか前に進みません。たとえばエンジニアも自分の立場からデザインについて意見するし、リサイクラーもその知見をプロジェクト全体に共有する。この『共創』という仕組みがなければ、RMDを前に進めることも、広げることも難しかったと思います」(木村さん)。

「使い捨てにしない」「自分で裁断する」ホテルアメニティも!

2020年に正式にスタートしたRMD。当初は内輪の取り組みに近かったものの、徐々にさまざまな業種や企業から参加者が集い、現在は20を超える企業と、そこに所属する人たちが動く一大プロジェクトに発展している。

展示会「Recycling Meets Design展 『デザインの力』で再生プラスチックを活かしたい。」のメインコンテンツは、共創活動から生まれた18種類の「再生プラスチックの面白い利活用アイデア」だ。いくつか紹介しよう。

まずは、繰り返し利用可能な配送用パッケージ「Mailoop(メイループ)」(デザイン・小玉文さん=BULLET、鈴木英怜那さん=大日本印刷)。再生プラスチックにリサイクルゴムを混ぜてつくられた柔らかな素材は、薄い革のような手触りで心地がいい。スタンダードな四角いパッケージはもちろん、ハート形や吹き出し形などさまざまに成形できるのもメリットだ。さらに、開け口の留め具を兼ねた電子ペーパーを宛名伝票にすることで、配送の管理も再利用も簡単になるという。

成形の自由度も高い、循環する配送用資材Mailoop(メイループ)。従来の配送システムでは使い捨てとなっている梱包材が、「使い捨てない配送材」に生まれ変わった。大日本印刷ではテストを兼ねて社内便に活用している。

「RETTER(リター)」(デザイン・梶田岳さん、菱木啓之さん=以上、GKダイナミックス、鈴木英怜那さん)は、ホテルアメニティが使い捨てられがちのはもったいない、という視点から開発されたアメニティセットだ。封筒に入った葉書サイズ、厚さ約2㎜のリサイクルプラスチック板から、ホテル宿泊者自身がコーム、歯ブラシ、カミソリ、クリップの4つのアメニティをつくる。使い終わったアメニティはチェックアウトの際、宿泊者がホテルのフロントなどに備えられたシュレッダーに入れる。自ら使用済みアメニティを細かく切り刻むことで、ふつうはブラックボックス化して見えないプラスチック再生プロセスの一端を知ることができるわけだ。

ホテルのアメニティセットとしての使用を想定している「RETTER(リター)」。納入時には薄く平らな形状で、ホテルから再生工場へは粉砕された状態で運ばれるため、輸送時のCO2排出量も抑えられる。

「贔屓アスリートの腹筋に座れる」画期的なクッション!

「BODY RUG(ボディ ラグ)」(デザイン・廣瀬俊朗さん、伊藤亜美さん、福井佑介さん=ともにTEAM FAIR PLAY)は、新感覚のスポーツ観戦グッズ。競技場で観客のお尻を守るシートクッションは、近年は100円ショップなどでも手に入ることから、会場に置き去りにされ、ごみになってしまうことも多い。それを解決すべく、贔屓のアスリートの体を3Dスキャンし、その筋肉(腹筋や大胸筋など)の上に座るような、特別な体験ができるシートクッションが開発されたのだ。たしかにこれなら、誰も使い捨てにはせず、持ち帰って何度もつかってくれるだろう。自宅に飾る、という人もいそうだが……。

シートクッションの使い捨てを防ぎながら、再生プラスチックの理想促進を図るプロダクト「BODY RUG(ボディ ラグ)」。写真のモデルはプロトタイプで、元ラグビー日本代表・廣瀬俊朗さんの腹筋や大胸筋がモチーフになっている。

「RNI(アルニ)」(デザイン・板倉真紅さん、杉本優弥さん=ともにGTDI)は、Z世代を意識した、多用途に使える家具の新形態。再生プラスチックを使ったユニット(生活材)をレゴブロックのような感覚で組み合わせることで、スツールやローテーブル、収納棚などさまざまな用途につかえる家具になる。

「家具」という概念を再考し「自由度の高い生活材の組み合わせ」という形で再定義した「RNI(アルニ)」。若い人たちへの経済的負担を最小限にし、ムリなくデザイン性の高い物を使いつづけられる仕組みづくりを目指す。
 

これらのアイデアからは、環境への配慮や利便性を追求するのみならず、「見て、つかってワクワクできるか」を大切にしていることが伝わってくる。この「ワクワクできるか」は、RMDが掲げる大事な判断基準だ。

「2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)により、ごみとして回収されるプラスチック資源の量はさらに増えており、再商品化による循環が重要な国策課題となっています。現時点でのRMDの展示は、製品化までは見えていないジャストアイデアの段階です。しかし近い将来、RMDが中心となってさまざまな企業や専門家の方々のお力を借りつつ、再生プラスチックの用途を広げることができると信じています。世の中をいいほうに変える一助となっていけると、うれしいですね」(福岡さん)。

―――前編はこちらーーー

text:奥津圭介

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