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「ロコモコ」発祥地ハワイ島・ヒロで、日本人移民が持ち込んだ生魚食文化「ポケ丼」を愛でる
「ロコモコ」発祥地ハワイ島・ヒロで、日本人移民が持ち込んだ生魚食文化「ポケ丼」を愛でる
COLUMN

「ロコモコ」発祥地ハワイ島・ヒロで、日本人移民が持ち込んだ生魚食文化「ポケ丼」を愛でる

ハワイは19世紀から、日本人を移民として受けいれてきた歴史を持っています。かつて農業と漁業で栄えたハワイ島のヒロは、オアフ島に次いで多くの日本人が入植しました。移民たちは、日本の文化や伝統を守りながら働き、ハワイの多文化社会の形成に大きく寄与。そんな日本人移民の面影を追って、ヒロの街を訪ねました。上写真:「リリウオカラニ公園」の見事なバンヤンツリー

津浪で失われた日本人街

ヒロにはかわいい木造の店や住宅が多い

ハワイ島の北東部に位置するヒロは、「雨の街」とも呼ばれ、青々と茂った深い緑の森が多い、ハワイ州第2の都市だ。が、ヒロには、なんともいえない素朴な時間が流れ、どこかのんびりとした雰囲気。何世紀も前に建てられた木造の店舗が軒を並べる、ノスタルジックな街並みが、そう感じさせるのだろうか。ダウンタウンにはファーマーズマーケットやアートギャラリー、ショップやレストランがたくさんあって、歩くだけでも十分楽しい。

カメハメハ大王像が立つ「ワイロアリバー州立公園」

かつての日本人街「新町(しんまち)」の住人たちが寄贈したという津波被災モニュメント

ダウンタウンから15分ほど歩いたところに、ワイロアリバー州立公園がある。広々とした緑地が広がり、穏やかな水面や水辺の景観が美しい、とても気持ちのいい公園だ。

かつては、ここに日本人移民によって開拓され、新町(しんまち)と名づけられた日本人街が形成されていた。しかし1946年4月に起きた地震で高さ11〜15mに達する津波が襲来、一帯は甚大な被害を受けた。その後、住民は戻って街を再建したが、1960年の地震による津波で再び壊滅的に破壊されてしまう。それ以降、住民が戻ることはなかった。

その後はハワイ州政府によって保護され、州立公園となった。公園内には、新町時代に架けられた素朴な橋と新町の住人たちが寄贈した大きな津波の碑が残されている。

創業78年のカフェがつくる「ロコモコ」はシンプルで潔い

ヒロは、ごはんの上にハンバーグと目玉焼きをのせてグレービーソースをかけた料理「ロコモコ」の発祥地。当時のレシピでロコモコをつくり続けているのが、1946年創業の「Cafe100」だ。店の名前は創業者であるリチャード・ミヤシロさんが、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で活躍した日系人部隊「100大隊」の一員だったことからネーミングされたという。2度の津波に襲われてもあきらめずに、ワイロアリバー州立公園の南側に接する現在の場所で営業を続けている。いまも行列が絶えない、地元に愛される人気店だ。

こちらは創業117年!の超老舗がつくる「ポケ丼」

ワイロアリバー州立公園のすぐ近くにある、日系移民が1907年に創業した「スイサン・フィッシュマーケット」は、ヒロの海辺で100年以上にわたって新鮮なシーフードを提供している鮮魚店。ハワイ島じゅうに新鮮な魚介類を届けている。店頭では、ハワイの定番グルメの「ポケ(マグロなどの切り身を醤油ベースのソースで和えたもの)」をごはんにのせた「ポケ丼」のテイクアウトが可能。ポケはハワイの古代先住民時代から伝わる、獲った魚の刺身を味つけして食べるご馳走だ。中国や日本からの移民が持ち込んだ醤油とごま油がそれに加わり、ご飯に載せて丼にしたハワイとアジアの合作料理。たしかに、日本の漬け丼にとても似ている。

マーケットでは、水揚げされたばかりのアヒ(マグロ)やアク(カツオ)などを店内で調理販売しており、その味を求める地元民や旅行者で毎日賑わっている。ロコモコとポケ丼、どちらも日本人がもたらしてハワイに根づいた、愛すべきローカルグルメなのだ。

日本の影響を感じさせるリリウオカラニ公園の庭園

マーケットのすぐそばにあるリリウオカラニ公園は、日本の美意識を感じられる、静かで落ち着いた海辺の癒やしスポット。もともとは王族のための養魚場があった場所で、リリウオカラニ女王がこの土地を公園として提供したのがはじまりだ。

じつはこの公園には、日本人移民の歴史と深い結びつきがある。というのも、ハワイの発展に貢献した日本人の努力と文化的な遺産を記念する場として設立されたからだ。12万㎡にも及ぶ庭園には、赤い太鼓橋が架かる回遊式庭園があり、日本庭園の美しさとハワイの歴史を感じられる。公園を訪れていた多くの観光客が日本の文化に関心を寄せているようすを見て、うれしくなってしまった。

古代ハワイでは、「アフプアア」という土地利用システムがあった。この仕組みは、山から海までの自然の流れをひとつの単位とし、土地や水、動植物を循環的に利用して共存するという考えに基づいている。この知恵は、現在のサステナブルな農業や観光に活かされ、自然環境を守りながら暮らす手法として現代にも受け継がれている。一方、日本でも自然との調和を重んじた文化が根づいている。伝統的な農業や「里山」の概念は、自然の恵みをムダにせず、持続可能な形で利用することを教えてきた。

私たち日本人がハワイに特別な親しみを感じるのは、そんな共通した概念を大切にしてきたからかもしれない。海外への旅は、自分のルーツに想いをはせる絶好の機会でもあるのだ。

text & photo:鈴木博美

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