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「自然と共存する姿勢、捨てるという概念を捨てる世界を当たり前にする。」若者たちの挑戦
「自然と共存する姿勢、捨てるという概念を捨てる世界を当たり前にする。」若者たちの挑戦
COLUMN

「自然と共存する姿勢、捨てるという概念を捨てる世界を当たり前にする。」若者たちの挑戦

古き日本から学べるサステナブルな知恵を取り上げているNIPPON温故知新ですが、前回に引き続き、今回も今の日本の若い世代(学生~25歳くらい)が取り組んでいるサステナブルな活動のリアルを紹介いたします。

前回の記事はこちら

環境問題やフードロスなど、少しずつ世の中の意識が変わってきていますが、大学生や20代前半の方々のお話を聞くと、問題意識や感覚が少し異なるように感じることがあります。それは、彼らが学生時代から「SDGs」やサステナブルという言葉に触れてきているからなのかもしれません。今回はそれぞれに気づきを得て活動へと繋げている、頼もしい若い世代のお二人をご紹介いたします。

「自然と共存する姿勢を当たり前にする」若者のアクション

最初にご紹介するのは、高校生の時にSDGsの調査をおこなった際の学びがきっかけで環境団体を立ち上げ、現在環境活動をおこなっている高尾文子さんです。

――今どんなことをやっていますか?

環境問題を国際関係からアプローチするために学問の基礎的な部分を勉強しながら、Climate Youth Japanのメンバーとして環境活動を行っています。

Climate Youth Japan(以下、CYJ)は気候変動問題に関心を持つ若者によって設立され、政策提言、COP等国際会議への派遣、情報発信やイベント開催などを行うNGOです。そこでは、様々な分野から環境問題を学んでいるメンバーと意見交換をしたり、勉強会に参加したり、COPに派遣されたメンバーからのレポートをまとめたりしています。

その他に個人的には定期的に地方に赴き、地域の方との交流も行っています。普段は東京で暮らしていますが、癒しと新たな気づきを求めて月に1回程度、少し遠くに足を運んでいます。

――なぜその活動をしているのですか?

気候変動への問題意識から活動しています。高校1年の時にSDGsの目標「海の豊かさを守ろう」について調べて環境問題に興味を持ち、「こんなに深刻な問題があるのに、国レベルの動きが見えない」と危機感を抱きました。中高生の環境意識向上を目標に高校2年の時に環境団体を設立しましたが、もっと規模の大きな活動をしたいと思い、現在はCYJで活動しています。

ただこのような学術的な活動だけでは真に環境問題の解決に貢献できません。東京で生活していると「自然と共存」するのではなく、無意識に「自然を利用」しようとしてしまいます。自然に対する畏敬、畏怖の念を忘れて、人間は自然をコントロールできる、と思っているのかもしれません。

しかし、どこで暮らしていても「大自然の中に生きる小さな人間の存在」という元来の位置付けを認識する必要があります。そのために私は地方に赴いて地域の方と交流し、大自然の中で暮らす、すなわち自然と共存している人たちの考え方を吸収しています。そして人々が自然と共存するための方法や自分なりの方法を模索しています。

――今後どんな活動をしていきますか?

今年の夏はガーナのホー工科大学で環境の勉強をする予定です。特にガーナの人々との交流を楽しみにしています。ガーナはMAPA(Most Affected People and Areas)と呼ばれる「既存の政治・経済システムによって最も影響を被っている人や地域」に当たり、彼らの環境問題の捉え方は、日本で育った私の環境意識と異なると考えています。この違いを認識することは、環境へのアクションを起こしていく上で欠かすことのできない要素です。

国内では、ユースとの協働や様々なフィールドで活動する人との交流を通し、日本の若者こそできるアクションに繋げていきたいと思っています。気候アクションを広げる中で根幹に置きたいのが「自然と共存する姿勢を当たり前にする」ことです。現行制度の改革を唱えるだけでなく、人々の中に「自然と共存する」という思いがあることで、一人一人の行動が大きな目標達成に繋がると考えています。

プロフィール
高尾文子
2002年生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部2年。Climate Youth Japan 2022年度副代表。(株)笑下村塾の学生記者。
高校1年生の時に参加したサマーキャンプの運営の方からの誘いでSDGsについての記事を執筆。この執筆をきっかけに環境問題に関心を持ち、環境問題を発信するために(株)笑下村塾で学生記者としての活動を始める。高校2年生では校内に環境団体を設立。大学受験を機に環境団体を下級生に引き継いでもらい、大学1年生の秋からはClimate Youth Japanのメンバーとして環境問題への活動を続けながら、サスティナブルアパレルブランドとして名高いpatagoniaで働いている。
趣味はウクレレ、自然の中でのサイクリング・ランニング、村上春樹の本を読むこと
Climate Youth Japan
笑下村塾
Instagram

「捨てるという概念を捨てる」を広げる。現役高校生が立ち上げたænoia

次にご紹介するのは、現役高校生にしてアップサイクルの活動を行う団体ænoiaを二人で立ち上げた根津はる香さんと野口璃羅さんの取り組みです。

――今どんなことをやっていますか?

「捨てるという概念を捨てる」というモットーを世の中に届けることを目的として、ænoiaという団体で活動しています。消費社会を生きる私たちは、幾ばくかの罪悪感は抱きつつも、すぐに物を捨ててしまっています。だからその現状を少しでも変えるためにこのモットーを掲げました。

具体的には、“ゴミ”とされるものをアップサイクルすることでゴミにも価値があるということを伝えていけたらなと思っています。今までの活動として、株式会社ローソン様から売れ残りをいただいてコンポストを行いました。他にも、Earthday Tokyoというイベントで海洋プラスチックゴミからアクセサリーを作るワークショップを出店しました。5歳くらいの男の子がなんと2回も体験しに来てくれたり、同い年の女の子がænoiaのインスタグラムを見てわざわざこのワークショップのためにEarthdayに足を運んできてくれたり、と本当に嬉しさいっぱいのワークショップでした。

現在は、廃油由来の洗剤を届けるサービスの開発を行っています。具体的には、各家庭から回収した食廃油から洗剤を作り、再び各家庭まで届けるというサービスです。

このサービスは大手企業と提携しており、4月にテストマーケティングを実施する予定です。

――なぜその活動をしているのですか?

もともとはChange Makers Awardsという英語のプレゼンテーションコンテストがきっかけでこのような活動を始めました。この大会では社会課題を自分事として捉え、アクションし、英語で発表するものでした。ゴミ問題についてリサーチを深めていくと、日本はゴミの焼却量がOECDの中で1位である(※)ということを知り、驚嘆しました。そこで私たちは「あらゆる資源を最後まで有効活用できるような世界を目指す」という目的を掲げ、アクションの一環としてコンポストを行いました。

その結果、Change Makers Awardsでは全国銅賞をいただきました。

しかし、その大会だけで終わらせたくないと思い、「捨てるという概念を捨てる」というモットーのもとænoiaを立ち上げ、改めて活動していくようになりました。

(※)参照:OECD,Municipal waste disposal and recovery shares, 2013 or latest

――今後はどんな活動をしていきますか?

これからも「捨てるという概念を捨てる」という理念を啓発していくために、かわいいものや日用品などを通して親しみやすい角度からアップサイクルを実施していきたいと思います。また、SNSに限らず様々なメディアを通じてænoiaの理念を広めていけたらなと思います。

廃油由来の洗剤を届けるサービスの展望に関しては、提携企業でのサービス導入はもちろんのこと、児童養護施設への無償のサービス提供も考えています。

プロフィール
根津はる香 高校2年生
8歳からベルギーに住み、インターナショナルスクールに通う。そこで出会った教師に強く影響を受け、環境問題に興味を抱く。中学1年の冬に日本へ帰国し三田国際学園中学校に編入。現在は三田国際学園高等学校に通う。

野口璃羅 高校2年生
5歳よりインターナショナルスクールに通い、多文化社会の中で社会問題を学ぶにつれ、環境問題への関心が深まる。現在は三田国際学園高等学校に通う。

ænoia
2021年4月に高校2年生二人で立ち上げた、アップサイクルを通して「捨てるという概念を捨てる」を啓発する団体。
 - SuMi Trust Innovation Pitch 登壇
 - Tokyo Startup Gateway 2021(二次選考突破)
 - 世界環境サミット グランプリ受賞
 - マイプロジェクト(全国大会出場 現在進行形)
 - Earthday Tokyoで海洋プラを用いたDIYワークショップを開催
 - 規格外花を用いたDIY石鹸ワークショップを開催
 - BLAST! School ファイナリスト(3期生)

●gmail:aenoia.official@gmail.com
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今回は学生時代からアクションを起こしてきた若者にフィーチャーしましたが、大量生産大量消費社会に生き、物質的な豊かさを享受し、それが当たり前だった世代に比べ、幼い頃から環境のことや社会問題を非常に身近に感じている分、問題意識を持っている世代のように感じます。

そんな彼らからは、学びから気づきを得て問題意識を持つだけではなく、実際に社会に良い取り組みを自分自身の活動やライフスタイルに取り入れたり、また、仕事にしたりといった形でアクションに繋げていく行動力にも、刺激をいただき学ぶことがたくさんあります。

これからの若い世代が何を感じ、どんなアクションを起こしていくのか、自然と共存する生き方が当たり前になる世界、捨てるという概念がなくなる世界、そんなサステナブルな輪が少しずつ広がっていくよう、社会の動きにも注目していきたいと思います。

守岡実里子(もりおか まりこ)

サステナブルフードジャパン代表
日本食文化研究料理家/
ローカルフードプロデューサー

大学時代にマクロビオティックで両親の病気を克服した事がきっかけで、日本の伝統的な食文化に興味を持ち食の世界へ。地方創生、農畜水産業の6次産業化支援を専門とするコンサル会社にてフードコンサルタントとして勤務し、2013年に独立。全国の地域の食のブランディングや商品開発、飲食店、旅館のプロデュースなど、地方の生産者支援に携わる。マクロビオティックや日本の食養生、江戸料理を専門に学び「和食から美と健康、サステナブルな社会を叶える」を生涯のミッションに、心と身体、地球に優しい日本の食習慣術を伝えている。日本酒好きが高じて唎酒師の資格を取得。

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