Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

衣類からサステナブルな循環を!次世代の若者のアクション
衣類からサステナブルな循環を!次世代の若者のアクション
COLUMN

衣類からサステナブルな循環を!次世代の若者のアクション

古き日本から学べるサステナブルな知恵を取り上げているNIPPON温故知新ですが、今の日本の「新」の取り組みにも注目し、今回は今の日本の若い世代(学生~25歳くらい)が取り組んでいるサステナブルな活動のリアルを紹介していきます。

テーマは「衣類」について。

大量生産大量消費、ファストファッションが当たり前の世の中になりましたが、かつては反物を着物にし、長く着て傷んできたら洗い張りをし(着物を解いて反物の状態に戻して洗い、生地を蘇らせることができます)、それをまた着物に仕立て直して活用していました。

着物文化が生活の中から消えたのはたったの100年少しほど前のこと。

私たち日本人にとって、天然素材だけでできた衣服をリサイクルしながら大切に使うのは当たり前のことでした。
そこで今回はファッション業界でサステナビリティに取り組む若者たちをご紹介します。

~眠っているお洋服をお届けして循環したい~双子が営む古着屋さん

最初にご紹介するのは、双子のお姉さんと一緒に古着屋GranMeというヴィンテージショップを運営している大﨑里歩さん。今の活動を始めたきっかけや、その想いについてお話を聞きました。

――今どんなことをやっていますか?

双子の姉とともに古着屋GranMeというヴィンテージショップを運営しています。“眠っているお洋服をお届けして、循環していきたい”という想いから、様々な形で循環のお手伝いをしています。

レトロ・ヴィンテージを取り扱う古着屋さんではありますが、それ以外にも作り手さんとコラボしてアップサイクル商品をプロデュースしたり、着なくなったお洋服をお引き取りしたりしています。お引き取りしたお洋服は、〈おまとめ売り〉という形で、次の貰い手を探しています。

――なぜその活動をしているのですか?

古着屋を始めた主なきっかけとしては、元々古着好きだったということと、ファッションがもたらす社会への影響に気づいたことです。

高校生の頃から古着が好きで、いつか姉と2人で古着屋さんやりたいねと話していました。ただ漠然と夢見ていたことが、明確な目標になったのは、大学2年生の時に見た『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』というドキュメンタリー映画です。大好きなお洋服が環境悪化や人権問題の引き金となっていたり、一度も着られずに廃棄されていくお洋服があったりという現実にショックを受けました。そんな中、古着がこういった問題に向き合うための選択肢ではないかと考えるようになりました。それ以来、自分自身が考える心地よいファッションの在り方を、古着屋GranMeの中で表現しています。

――今後はどんな活動をしていきますか?

古着屋GranMeとして、直接お洋服をお届けできる機会を増やしていきたいと考えています。

古着屋GranMeを立ち上げて約1年が経ち、お洋服をお届けするための、また、循環させるためのスタイルがだいぶ形作られてきたと思います。しかし一方で、ご縁あってGranMeのもとにやってきたお洋服の中には、まだ貰い手が見つからないものがあることにもどかしさを感じています。さらに、昨年のイベント出店を経験して、お洋服を直接見て着て選ぶことの重要性を実感しました。2022年は、茨城県外でのイベント出店やポップアップなどの機会を増やしていきたいです。

また、2021年の間に、古着屋GranMeは私自身の暮らしの一部であるということに気づきました。古着屋GranMeにとっても、自分にとっても心地よい選択をし続けられる2022年にしたいと思います。

プロフィール
大﨑里歩
1998年生まれ、双子の妹
2021年大妻女子大学英語英文学科卒業
環境を意識した行動をテーマに卒業論文執筆
大妻コタカ賞受賞
現在、古着屋GranMeオーナー

在学中に、ドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』を見たことがきっかけで、ファッションと社会問題との関わりに興味を持ち、大学3年生の時に、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのイベントインターンとしてMAKESMHNGなどの企画運営に携わる。このインターンの経験を通して、古着屋経営の目標が明確になり、現在は古着屋GranMeオーナーとして、ECサイト運営やイベント出店、アップサイクルなどおこなっています。興味があることは古着やプラントベースな食事、エシカルなもの。

SNSアカウントやWebサイトのURL
●古着屋GranMeのInstagram
●個人Instagram
Twitter
web shop

綿花産業に飛び込み、トレーサビリティーを完璧なものにしたい
―「誰一人取り残さない」を現実に―

次にご紹介するのは、綿花産業の実態を知ったことをきっかけに、環境課題やフェアトレードなど、若者を巻き込んだアクションをおこなっている、現役大学生の山崎諒太さんです。

――今どんなことをやっていますか?

よりよい綿花産業の在り方を模索し、大学では「人間の安全保障アプローチ」をはじめとした国際関係論を中心に学び、さらにアウトドアブランドの「パタゴニア」という所でアルバイトをしています。パタゴニアは「リジェネラティブオーガニック農業」の実践をはじめ、環境に対して野心的に活動しているブランドであることから、本来の業務である販売スタッフだけでなく、自治体への環境的アプローチや地域の人々を巻き込む「選挙カフェ」などの活動もしています。他にも、気候若者会議への参加、「ゼロエミッションを実現する会」での政治的アプローチなど「若者の声を確実に届けながら学んでいく」ことを学生生活のテーマにして日々過ごしています。

――なぜその活動をしているのですか?

「ファッションを楽しみたい」

この言葉が私自身を突き動かす全てです。大学1、2年生の時にファストファッション系の店でアルバイトをしていました。そのときに製品の生産地などに関する疑問が生まれ、アパレル産業の問題点を知ってから接客が億劫になっていきました。とりわけサプライチェーンの一番下に属している綿花農家の劣悪な環境の現状を知り、自分自身で服を購入すること自体が悪であると考えていた時期もありました。

そこで、ヒントを得るためにデンマークに留学し、社会を本質的に変えるためにはシステムチェンジが必要であることを実感しました。さらに地域の人々との交流のなかでヒュッゲ文化など幸せの本質に触れ、環境への関心も高まりました。そんなとき学校の授業で企業の利益と環境の活動を達成している企業としてパタゴニアが紹介されていて、パタゴニアで働きたいと思いました。

帰国後は、「気候変動は待ってくれない」という意識のもと、インプットだけでは駄目だと思い、微力ながらも常に声を上げていくことを忘れずに活動しています。また、その中で繋がる仲間がさらに私を加速させてくれるので非常によい環境にいると実感しています。

大学の卒業論文では、綿花産業の改善について執筆しました。綿花の歴史を遡ってみると、まさに資本主義の歴史に沿っていることがわかります。児童労働や農家の貧困問題、ほかにも不透明なサプライチェーンによって解決が困難になっている問題があるという事実など、私たちが何気なく着用しているTシャツひとつをとっても、製品になって届くまでに実はたくさんのストーリーがあることを、今はまず一人でも多くの人に知ってほしい。そして将来的には、さまざまな問題が解決され、Tシャツをはじめとした綿製品がすべて環境的にも社会的にもより良いものになり、特に意識しなくても誰もがより良い製品を購入できているような世界にするという野心を持って活動しています。

――今後はどんな活動をしていきますか?

4月から愛媛にある綿花の商社兼メーカーに勤める予定です。オーガニックコットン100%を必ず使用する会社というよりも、現代のシステムの中でビジネスと両立させながらより良いコットンを扱うために、行動している会社です。GOTs(Global Organic Textile Standard )というオーガニック認証も獲得しています。また、この会社で実際にインドやアメリカなどの生産地に赴き商品調達をおこなうこと、そして現状や課題点を肌で感じることこそが綿花産業の変革に必要であると考えています。また新天地となる愛媛の地域貢献も積極的におこないたいと考えています。まさに「Think globally Act locally」を体現していきたいです。

そして残り2か月となった学生生活では、現在模索している、地域での気候変動における若者コミュニティ設立の基盤づくりをおこなっていく予定です。

プロフィール
山崎諒太。1998年生まれ。創価大学文学部人間学科4年。
パタゴニア吉祥寺ストアで学生アルバイトとして勤務。

5歳から現在までおこなっている空手をはじめ、小中高野球部、スキーなど幼い頃からスポーツに力を注いできた。その経験から現在では、登山、クライミング、マウンテンバイク、サーフィンなど様々なアウトドアスポーツに挑戦中。大学進学後は、ミャンマー奥地での教育系ボランティア、1年間のデンマーク留学を経験した。帰国後は、省庁などに政策提言をおこなった気候若者会議への参加、市長に向けての要望書提出など若者ができるアクションを実行中。他に、大学における留学生と日本人をつなげるCPP(Conversation Partner Program)運営、フェアトレードサークル、大学祭実行委員、コットン農家でのボランティアなど

今回は学生時代から今のファッション業界のあり方に疑問を持ち、活動するお二人をご紹介しました。

一次産業の生産者の方々と衣類を作る職人に、品物を卸し販売する人が介入し、私たちの手元に届く頃には、その過程で、素材の成り立ちや、作り手のこだわりなどは見えにくくなり、使い捨ての「ファッション」として消費されるモノに変わっていってしまいます。

衣類は私たちにとって生きていくために欠かせない大切なもの、かつては自然界の恵みから手に入れられるものであり、その素材を使って織物にする職人の手間や技術に対しても敬意を払い、それらを縫って出来上がった衣類を大切に扱っていました。着物は大切に扱えば、母の代、祖母の代の品物でも着ることができました。それは現代に生きる私たちが失いかけてしまった、かつての日本人にとっては当たり前の循環、当たり前の営みだったのです。

不自然な循環を自然な循環へと戻す行動が、若い世代の気づきによってスタートしています。今の若者たちのアクションに今後も注目していきたいと思います。

守岡実里子(もりおか まりこ)

サステナブルフードジャパン代表
日本食文化研究料理家/
ローカルフードプロデューサー

大学時代にマクロビオティックで両親の病気を克服した事がきっかけで、日本の伝統的な食文化に興味を持ち食の世界へ。地方創生、農畜水産業の6次産業化支援を専門とするコンサル会社にてフードコンサルタントとして勤務し、2013年に独立。全国の地域の食のブランディングや商品開発、飲食店、旅館のプロデュースなど、地方の生産者支援に携わる。マクロビオティックや日本の食養生、江戸料理を専門に学び「和食から美と健康、サステナブルな社会を叶える」を生涯のミッションに、心と身体、地球に優しい日本の食習慣術を伝えている。日本酒好きが高じて唎酒師の資格を取得。

公式サイト
公式ブログ
Instagram

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!