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[from São Paulo】とことん直して使います、ブラジルの修理事情【後編】by Katsura ishihara
[from São Paulo】とことん直して使います、ブラジルの修理事情【後編】by Katsura ishihara
COLUMN

[from São Paulo】とことん直して使います、ブラジルの修理事情【後編】by Katsura ishihara

世界のサステナブルを紹介するfrom the WORLD。今回は前編に引き続き、ブラジルからサンパウロ在住の石原桂さんが、とことん直して使うブラジル人の修理事情についてリポートします。

前編はこちら

身近にある家電修理屋さん

電化製品への輸入課税が世界でもトップレベルに高いブラジルでは、必然的に修理屋さんが街に2、3軒あり、大体なんでも直してくれます。修理屋さんはテレビ、冷蔵庫、洗濯機、オーディオなどかなり専門化されていて、例えば掃除機を持っていけば、ここじゃない、あの店だと親切に紹介してくれたりします。家電は高級品なので、壊れたから、新しい機能が便利そうだから買い替えよう、という発想はなかなか生まれません。気軽に近所から出張修理に来てもらい、それでまだまだ稼働するのならじゅうぶんと考える人が多いのです。

ずらりと並ぶ中古リフォーム部品

下の写真をご覧ください、これら全て廃棄品ではなく商品なんです。古い建物を取り壊さず直しながら暮らしていく習慣は、ヨーロッパ移民から受け継がれたものなのかもしれません。ブラジルには扉、サッシ、棚、厨房機器など、古い家屋や店舗のリフォームや修理に必要な中古部品を扱う店が数多くあり、こういうものが欲しいと言えば、この山のなかから的確に商品を出してくれます。これらの店が、直して使えるものはとっておく、古いものを大切にするといったサステナブルな暮らしを支えているのです。

ブラジルのタイヤ再生技術

なんと、ツルツルになったタイヤを捨てずに溝を再生する技術があるんです。鉄道より自動車輸送が発達しているブラジルでは、巨大で大量の消耗品である大型トラックのタイヤの廃棄が問題になっているため、この技術が登場したわけです。タイヤの溝模様がついたアルミ型をセットした窯に、新品ゴムと中古タイヤを入れ高熱で数十分間圧をかけると、新品同様の溝が刻まれたタイヤに生まれ変わるという仕組みです。さすがに駆動輪には使わないようですが、いくつも連なる大型トラックのタイヤにはもってこいの修理技術です。

過剰な生産や大量消費の舞台裏

ブラジルは主に大豆やトウモロコシ、コーヒーなどの農産物のほかに、鉄鉱石や原油など工業原料を輸出して国際貿易をおこなっていますが、ここ数年たて続けに工業原料の採掘による環境破壊や健康被害が出ています。2015年と2019年にはミナス・ジェライス州で鉄鉱石を採掘する際に出る汚泥貯水ダムが決壊し、従業員や周辺住民、家屋や村全体の自然までもが金属汚染された泥水に流される事態となりました。またアマゾンのマデイラ川では違法な金の採掘が横行しており、金と泥を分ける際に使う水銀が混入した汚水をそのまま川に流し、住民の健康を脅かしています。

たしかにこれらの事故や違法行為は国や企業の問題で、遠い国の悲惨な出来事のひとつでしかないかもしれません。けれども、同じような惨事を繰り返してでも止めようとしない、人々をこれらの行為に駆り立てる理由は何なのか、また、大量に、環境に配慮なく資源を採掘し、生産消費する社会構造と私たちはほんとうに無関係なのか、早急に考えてみる必要はあると思います。そして、いま消費しようとしているもののひとつひとつが、そういった構造のなかにないかを一人ひとりがちょっとだけ意識することで、少しずつでもよりよく変わっていくことにつながりそうです。

石原桂

ブラジル・サンパウロ郊外在住。日本移民100周年のお祝いムードに沸く2008年に渡伯。翻訳業の傍ら、コーヒー、スパイス、アマゾンハーブ、ヴィンテージ食器、キッチン用品などの品々を扱い、日本へ発信中。

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