和食の知恵が地球を救う?サステナブルな和の食習慣
日本文化の温故知新から学び、日本人のサステナブルな生き方の知恵を、現代のライフスタイルに取りいれるコラム『NIPPON温故知新』。7回目はサステナブルな和の食習慣をテーマにお届けいたします。
伝統的な和食は世界に誇るサステナブルな食事
近年「SDGs」や「サステナブル」という言葉を一般的に耳にするようになりました。
「世界中で課題になっている環境問題や社会問題を解決し、持続可能な未来を目指しましょう」と聞くととても大きな事のように感じますが、実は私達が日々のライフスタイルで変えていける事がたくさんあります。その一つが「食べる事」です。
皆さんは私達日本人の伝統的な和食が地球環境に優しい食事であるのをご存じでしょうか? 「和食はヘルシーな食事」であることは世界中でも認知されていますが、実は地球にも優しいサステナブルな食事でもあるのです。私達日本人が「和食を食べる」という、とてもシンプルで簡単なアクションから自分たちの心と身体、そして地球を健康にしていく事が出来るのです。
和食は「プラントベースフード」
国連は地球の総人口が2050年には97億人に達すると発表しました。
これから直面するであろう食糧危機に備えて、近年では昆虫食や代替肉などの新しい分野の食料が注目を浴びています。最近耳にするようになった「プラントベースの食事」もその一つです。
プラントベースの食事はヴィーガンやベジタリアンとは異なり、動物性食品を排除する食事ではない緩やかな菜食中心の考え方が特徴です。
プラントベースの食事が広まることは、将来食肉の供給不足による「たんぱく質危機」を回避だけでなく、畜肉の増産による穀物や水資源への負荷や森林破壊のリスクを軽減したり、CO2の排出量を減らすことが出来るなど、環境負荷がかからないサステナブルな食事として期待されています。
実は江戸時代まで肉食を禁忌とした歴史をもつ日本の伝統的な食生活は元々プラントベースに近い食事内容だと言えます。その頃までは、私たち日本人の食生活は米(雑穀)、大豆を中心とした豆類、野菜、海藻、そして魚が中心でした。
畑のお肉とよばれる「大豆」は私達日本人にとって昔から重要なタンパク源であり、現代でも私達は豆腐、納豆、味噌などを日常的に食べていますが、豆そのものだけでなく豆を加工して上手に取り入れてきたのが和食文化です。
「地産地消」「旬」を大切にする文化は環境に負荷が少ない
食料の生産地から食卓までの距離が長いほど、輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が多くなるため、フードマイレージの高い国ほど、食料の消費が環境に対して大きな負荷を与えていることになります。
日本は海に囲まれた南北に長い列島で、その土地土地に多彩な食材や食文化があり、地産地消を実践しやすい国と言えます。
近年ではハウス栽培など季節に関係なく食べ物を手にする事が出来ますが、季節を無視して生産することもまた、エネルギーに負荷がかかっています。
四季のある日本では旬を大切にする文化がありますが、旬の食材は生産に必要なエネルギーが少ないうえ栄養価も高く、自然の生態系とのバランスをとってくれるため、私達の心と身体に優しい食材でもあります。
旬の時期にその土地の旬のものを食べる事は新鮮で美味しいだけでなく、環境と私達の身体にも優しい食べ方なのです。
ぜひ、ご近所に道の駅などの農産物直売所がある方は利用してみましょう。
発酵食文化・保存食文化でフードロスを減らす
達日本人の食事は味噌や醤油などの調味料やお漬物に至るまで、発酵の力に支えられています。また、出汁に使われる鰹節や昆布、煮干し、干し椎茸、切り干し大根、高野豆腐、海苔やわかめなどの乾物類などの保存食品も和食には欠かせない食材です。
発酵食品や保存食品には栄養価や美味しさを増す働きがあるだけでなく、食材を無駄なく美味しく活用して食べる技術があります。
旬に採れた食材を廃棄する事なく、発酵食品や保存食品にして形を変えることで一年を通して上手に食事を組み立ててきました。和食は食料廃棄を減らしフードロスにも役立つ食べ方だと言えます。
食べることから叶える持続可能な未来~今日から始めるサステナブルな和の食習慣~
現代日本は先進諸国の中でも食料廃棄率が世界トップレベルです。
日々たくさんの日本で生産された食料が廃棄され、多くの食品を海外からの輸入に頼っています。欧米化が進み世界中のあらゆるグルメが楽しめるようになった日本では、深刻な和食離れが進み、自然の生態系に逆らった食べ方が生活習慣病の大きな原因にもなっています。
都会に暮らしている現代人は特に、自然と切り離された生活を送っていて自然を感じにくくなっていますが、私たちが何気なく触れている和食や食文化に地球をよくしていく知恵が残されています。
私達の伝統的な食習慣を見直す事は、日本人の健康、自然の生態系を元気にしてくれます。和食の料理法にこだわらなくても、日本の生態系に合った食材をバランスよく食べる事だけでも大丈夫。
サステナブルな和食の知恵を見直し、食べることから私達の心と身体、そして地球にとって持続可能な未来を叶えていきましょう!
今日からできるサステナブルな和の食習慣
● 日本の生態系に合った食事をする
お米を食べる
旬の野菜を食べる
お肉より魚を食べる
豆や大豆製品を積極的に食べる
海藻を食べる
●発酵食品や乾物を取り入れる
● 1日1杯の味噌汁を飲む
●道の駅や直売所で買い物をしてみる
●旬の食材を食べる
守岡実里子(もりおか まりこ)
サステナブルフードジャパン代表
日本食文化研究料理家/
ローカルフードプロデューサー
大学時代にマクロビオティックで両親の病気を克服した事がきっかけで、日本の伝統的な食文化に興味を持ち食の世界へ。地方創生、農畜水産業の6次産業化支援を専門とするコンサル会社にてフードコンサルタントとして勤務し、2013年に独立。全国の地域の食のブランディングや商品開発、飲食店、旅館のプロデュースなど、地方の生産者支援に携わる。マクロビオティックや日本の食養生、江戸料理を専門に学び「和食から美と健康、サステナブルな社会を叶える」を生涯のミッションに、心と身体、地球に優しい日本の食習慣術を伝えている。日本酒好きが高じて唎酒師の資格を取得。
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