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ニュージーランドの湖畔で自給自足ライフ! ミリオンヒット連発のプロデューサーが環境保護アンバサダーになった理由【前編】
ニュージーランドの湖畔で自給自足ライフ! ミリオンヒット連発のプロデューサーが環境保護アンバサダーになった理由【前編】
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ニュージーランドの湖畔で自給自足ライフ! ミリオンヒット連発のプロデューサーが環境保護アンバサダーになった理由【前編】

ニュージーランドの森の湖畔で執筆活動をおこないながら、サステナブルな自給自足ライフを送っている四角大輔さん。ロングセラーとなった『超ミニマル主義』の続編『超ミニマルライフ』が発売と同時に大きな話題となり、そのライフスタイルやサステナブルな生き方が注目の的です。四角さんは移住前、ケミストリーや絢香などのトップアーティストをプロデュースし、ミリオンセラーを何作も世に生み出しています。プロデューサーとしての全盛期にニュージーランドに移住した理由や、現在の暮らし、そして私たちに伝えたいことなどを伺いました。【前編】

マスが釣れる豊かな環境を求めて、環境先進国ニュージーランドへ

大阪府のはじっこ、緑豊かな土地で生まれ育ったという四角さん。屋内にいるよりも自然のなかに身を置くことが好きで、幼少期からキャンプや釣り、登山を楽しんでいたそう。大学時代は車で寝泊まりしながら日本中を回り、川や湖で魚を釣ってはさばいて食べ、農家の畑仕事や肉体労働を手伝いながら過ごした。卒業後は大手レコード会社に就職、数々のヒット作を生み出す名プロデューサーとなる。やりがいのある仕事に地位、名誉なども手にした四角さんだが、2010年にすべてを手放してニュージーランドに移住。しかも、人里離れた湖のほとりで、家族とともに超ミニマルな生活を送っている。

「もともと、10年働いたらニュージーランドの自然豊かな場所に移住しようと決めていたんです。実際は15年かかってしまいましたが……。移住先にニュージーランドを選んだ理由は、美しいマスが釣れる素晴らしい湖があったから。ボクはイギリス発祥のフライフィッシングが趣味なんですが、数ある魚のなかでも大きなマスを釣るのが一番好きなんです。コイやフナ、スズキ、クロダイなどの魚は環境の変化に強いんですが、マスはきれいな環境でないと生息できない。マスが住んでいる湖の周辺は、豊かな自然が残されているわけです」

世界65ヵ国を訪れた四角さん。最初から、ニュージーランドの森で暮らすことを決めていたわけではないという。マスの住む美しい湖に魅せられ、いろいろ調べてみたところ、同国が「国土の3割が自然保護区」という豊かな土地であるとわかったのだ。

「“水の妖精”ともいわれる美しいマスを追い求めていったら、豊かな場所に出合えた。世界中の川や湖では、マスだけでなく、ヤマメやイワナ、イトウといったきれいな環境を好む魚たちが減っているんです。けれどもボクが住んでいる湖では、マスは逆に増えている。ニュージーランドには、人の手が入っていない豊かな原生林が多く残り、山や川、水を守ろうという環境保全への意識が高いんです」

四角さんが超ミニマルライフを実践するニュージーランドの美しい湖畔。朝、船を出してマスを釣り上げるたびに、涙が出るほど感動するという

ニュージーランドの森で暮らしていると、現代人がいかに環境に負荷をかけながら生きているかを痛感する。

「たとえば日本では、夜11時はおろか12時過ぎまで起きている人がいっぱいいるじゃないですか。その分、電気をムダづかいしているんですよね。ニュージーランドでは9時を過ぎると街は閑散として、『11時まで起きていた』というと、『うっそ!』とビックリされます。早寝早起きで朝型の人も多く、つかうエネルギーへの意識も非常に高い。早寝早起きは頭がすっきりして生産性も創造性もパフォーマンスもアップするし、環境や心身への負荷が減らせます。いいことばかりですよね」

2018年時点で、再生可能エネルギーによる発電が約84%という高い数字を達成したニュージーランド。環境への意識だけでなく、思想もかなりリベラルだそう。

「調べれば調べるほど、平等主義が古くから根づいていることがわかりました。1893年に世界で初めて女性の参政権が認められ、2022年には女性の議員数が男性を上回っています。1987年に世界一厳格と言われる非核法を制定して、核装備船や原潜の入港などを禁止。さらに2006年には手話が世界初で公用語化され、2013年にはアジア・太平洋の国として初めて同性婚を認めました。マイノリティや社会的弱者にやさしく、LGBTQを公言して受け入れられている人々も多数います」

「贅沢やムダを省いて超効率化し、夢に投資する」ための戦略をつづった四角さんによる指南書。自ら実践してきたノウハウが詰まっている。『超ミニマル・ライフ』(ダイヤモンド社)

リベラルな思想をもち、「環境保全先進国」であるニュージーランド。ではなぜ、同国は高い環境意識を共有できているのだろう。

「理由はシンプルで、人と自然との距離が近いこと。北島と南島かならる海に囲まれた島国であり、最大の都市であるオークランドの港の海も、小学生が大きな鯛を釣るほど豊か。都心から15分ほど車を走らせれば、きれいな青い海と自然豊かな森が広がります。サーフィンやキャンプ、トレッキングに釣りなどのアウトドア活動も盛んで、自然の中で遊ぶ機会が多いため自然破壊に市民が敏感です。ですから環境問題に対して、当事者意識がとても高いんですよ」

ようやく変わりつつある日本人の環境意識

国連によってSDGsが採択されてから意識が徐々に変わってきた日本。けれどもニュージーランドでは、SDGsというワードを聞くことはほとんどないという。

「もともと、そういう概念が当たり前にあるからなんでしょうね。ボクは学生時代から、ずっと環境問題について声を上げてきたんですが、当時は『反体制派』なんて呼ばれていましたから(笑)。けれどいまでは、みんながボクの話を聞いてくれる。ニュージーランドに移住した2010年当時は、『自給自足で暮らす? 世捨て人とかヒッピーみたいな感じ?』などと言われていたのに、ここ数年は『サステナブルな暮らし? 自給自足? 詳しく教えてほしい!』といろんな人が身を乗り出すようになったんです」

2021年、第一子誕生をきっかけにミニマルライフをさらに加速させた四角さん。現在は週に3日、午前中のみ働くというライフスタイルを実践している

戦後の焼け野原から立ち上がり、高度成長を遂げながら走り続けてきた日本。何もなくなったところからモノを生み出し、所有することが幸せや豊かさに直結してきた。

「これ以上便利になる必要はないのに、いつの間にかそのリミッターを越えて拡大・成長を続けてしまったんでしょうね。その結果、消費依存、商品依存が進んでしまった。食べモノや着るモノ、水ですら商品として買う時代になり、タダなのは空気くらいのものになってしまっています。モノを買うために働くのが当たり前で、しかも基本的に、仕事とは苦しくてガマンしなくてはならないものになっている。ですから食料を自分で調達し、壊れたものは自分で直すといった自給自足の生活を話しても、長らく理解されませんでした」

長年、環境問題にかかわってきた四角さん。ただ自然破壊も環境への負荷も、誰かがそうしたくてやったわけではない、と語る。

「経済を成長させようとしたら、結果として自然を削ったり環境に負荷がかかったりしてしまった。だから環境破壊に対して、誰も責めたくないんです。ただ、軍事産業と違い、環境活動は平和活動と同じで利潤を生み出さないから、産業にはならない。私たち市民が連携して進めていくしかないんですよね」

――次回は、日本で生きる私たちが心地よく暮らすためのヒントを伺いますーー

四角大輔■1970年大阪府生まれ、執筆家。環境保護アンバサダー。大学卒業後にソニーミュージックに入社、10回のミリオンヒットを記録する名プロデューサーとして活躍する。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住、ポスト資本主義ともいえる自給自足ライフをスタートさせる。公式サイト(daisukeyosumi.com)

photo:横江淳、text:萩原はるな

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