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トラウデン直美「意識が高いからじゃない、自分のために」始めたアクション
トラウデン直美「意識が高いからじゃない、自分のために」始めたアクション
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トラウデン直美「意識が高いからじゃない、自分のために」始めたアクション

気候危機という大きな困難を前にしても、立ち尽くすのではなく、一人ひとりが小さなアクションを積み重ねることで道は拓けるはずです。自ら積極的に学びながら、あるいは自然の最前線に身を置きながら、地球環境に目を向け、未来に向かって動き始めるトラウデン直美さんに話を聞きました。

環境を考えるのは、“意識高い”?
逆風をバネに歩んできた道

知人に農家を紹介してもらい、昨年から有機野菜づくりにも挑戦中。野菜づくりの大変さを知ったことで、そのありがたみを実感しているところ。農業の体験を通して気温や雨など気象の変化にも敏感になった

ファッションモデルとして活躍しながら、報道番組のキャスターとして環境や社会問題についての情報を発信し続けるトラウデン直美さん。2020年には首相官邸で開催された「2050年カーボン・ニュートラル・全国フォーラム」に出席するなど、若い世代の声を届ける活動に力を入れてきた。

「私の父はドイツ人なのですが、とにかく歩くのが好きで。幼い頃はキャンプや登山、川遊びなど、自然豊かな場所で遊ばせてくれました。SDGsや環境問題を意識する前から、自然が好き、大切だという思いを持っていたのは、その体験があったからだと思います」

環境問題や持続可能な社会のあり方を意識して考えるようになったのは高校時代。

「通っていた高校で、毎週2時間ほど任意で環境にまつわる授業を受けられたんです。課外授業としてドイツとオーストリアでフィールドワークを行い、そこで車をつかわないカーフリーな街づくりや、森林保全の取り組みを見学したり、実物のマイクロプラスチックを顕微鏡で見たり、当時の日本では考えられないような先進的な取り組みを目の当たりにして驚きましたし、何よりすごく面白そうって、ワクワクしたんです」

カーディガン(カーサフライン)、キャミソール(アンダーソン アンダーソン)、デニムパンツ(ミースロエ)、ピアス(ミ・ルーナ)、イヤーカフ(コルフ バイ ヨンドシー)

トラウデンさんが高校に入学したのは2015年。その年の9月に国連サミットでSDGsが採択されたが、日本での認知度はなかなか上がらなかった。そんななかで見聞きした海外でのアクションは、「私たちも何かしなくては」という強い思いを生んだ。慶應義塾大学で政治を学んだのは、「法律やシステムを変えていかなければ変革は起こせない」と考えたから。大学に入ると報道番組のコメンテーターやキャスターを務め、積極的にSDGs関連の情報を発信した。が、当時の風当たりは少々きつかった。

「私の言い方が“上から目線”に聞こえたのかもしれませんが、『モデルの小娘が何をエラそうに』とか、『意識高い系の人』とか言われましたね。傷つくこともありましたが、それをきっかけに環境のことに関心を持ってくれたらいいやと思っていました」

いっぽうで勇気づけられることもあった。当時、まだ主流ではなかったマイボトルやマイバッグを持ち歩くトラウデンさんを見て、「いいね」と、ごく自然にライフスタイルに取り入れてくれる人が現れたのだ。

暮らしと社会を変えていく
使命感ではなく、自分のため

「地球を守るためにやらなくちゃというより、『なんかそれ、いいじゃん』っていう感じで。義務じゃなくて、楽しみとして捉えて、それが広がっていく感覚がうれしかったんです。思えば幼稚園や小学校の頃は、多くの人が水筒を持ち歩いていましたよね。それって別に“意識が高いから”じゃなくて、いろいろな面で理にかなっていたからだと思うんです。でも大人になるとやめてしまうでしょう? そんななかで誰かがマイボトルを持っているのを見て“いいな”が広がっていけば、自然と暮らしに取り入れられるのかなって」

トラウデンさんが愛用している日用品。100%天然由来原料のDavidsの歯磨き粉と竹歯ブラシ、洗って繰り返し使えるオーガニック素材のコットン、蜜蝋から作られたエコラップもつかい捨てしない

マイクロプラスチックの流出を防ぐ洗濯ネットや竹の歯ブラシ、植物性の洗剤など、環境に配慮した日用品を愛用するトラウデンさん。そうした選択を声高に「地球のためだから」と言うことはしない。

「しいて言うなら自分のため。洗って繰り返しつかうコットンとか、環境に配慮した商品は、つかい捨てのものに比べて少し手間がかかりますが、その分、じっくりと自分の肌と向き合える。そんな時間が豊かだなと感じるからそれを選択しているし、いまや欠かせないものです。そして何より、私は自分が愛する自然や美しい街並みをこの先もずっと見ていたいし、子どもや孫にも見せてあげたい。だから気候変動も止めたいし、環境も守りたい。ある意味、すごく利己的な動機なんです」

義務感や使命感だけでは、長く続けることが難しくなるというのも頷ける。

「まずは、やってみたいな、いいな、と思えることを暮らしに取り入れていく。同時に、政治のあり方や現行の制度でおかしいと思っていることに対して声を上げることも、勇気を持ってしていきたいですね。個人と社会、どちらかいっぽうのアクションではいまの流れは変えられないと思うから。『システムを変える』なんて言うと、また『意識高い系』とか思われちゃいそうですけど、つまりそれは、自分が気持ちよく暮らせる社会を提案し、つくっていく努力をするということ。結局は“自分のため”というのが出発点。それが結果的に環境や社会をよりよくすることにつながればいいなと思っているんです」

PROFILE

トラウデン直美 とらうでん・なおみ
京都府出身。ドイツ人の父と日本人の母を持つ。慶應義塾大学卒業。「2013ミス・ティーン・ジャパン」でグランプリ受賞。13歳で雑誌『CanCam』の史上最年少専属モデルとしてデビュー。21年9月号にて同紙の専属モデル史上最長記録を更新。雑誌やファッションショーのほか「日経ニュース プラス9」「ひるおび」「めざまし8」など報道や情報番組でも活躍。21年1月より「環境省サステナビリティ広報大使」を務める。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
Photo:Yu Inohara Styling:Akane Kitsunai Hair & Make-Up:Rumiko Koike Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

Official SNS

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