Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

塩谷舞が祖父から譲り受けた漆塗りの文箱「メイク道具はここに入るだけに」
塩谷舞が祖父から譲り受けた漆塗りの文箱「メイク道具はここに入るだけに」
VOICE

塩谷舞が祖父から譲り受けた漆塗りの文箱「メイク道具はここに入るだけに」

「買い物は投票だ」という言葉を聞いたことがありますか? ものやサービスがあふれるいまだからこそ、環境に負荷を与えない選択をしたい。そんな思いで大切なアイテムを選びとった、文筆家・塩谷舞さんに、お話を伺いました。

SDGsトレンドの光と影。
冷静に考え、主体的に選びたい

「長く広告業界に身を置いてきたからでしょうか、SDGsという言葉が一気に浸透しつつあるのは喜ばしいことと思いつつも、トレンド化することで本質とズレた商品や広告が増えている状況にモヤモヤします」

塩谷舞さんはいつだって正直に時代の違和感を言葉にする。文筆家として活動するいまも、静かなエッセイのなかに社会に対する疑問をそっと挟み込む。そして、考え続ける。

「環境問題について考え始めた頃は、身近に存在しているありとあらゆる製品を否定してしまうこともありました。でも、そうやって常に臨戦態勢でいると暮らしが成り立たないし、近くにいる人も疲れさせてしまう。どうしたらこの矛盾を解消できるのか、しばらくの間ずっと考えていました」

〈文箱〉祖父が会社員時代に国から勲章を受け、記念品としてもらった漆塗りの文箱。祖父の死後、祖母が大切に保管していたものを譲り受けた。メイク道具はここに入るだけと決めて、本当に必要で好きなものを厳選している。汚れが目立つ漆塗りだからこそ、いつもキレイに保つよう気を配るようになった。ドレッサーの上に出しておいても美しく、気分が上がる

そんな頃、祖父の形見分けとして、古い漆塗りの文箱が手元にやってきた。

「以前から、長く愛用できる工芸品のような化粧道具をずっと探していたんです。子どもの頃、雛飾りの中にある漆塗りの小道具を見て、いつかそうした化粧道具を持ちたいなとあこがれていて。ただ実際は、長くつかうことを考慮してつくられた化粧道具はまれ。そんななか、祖父母の家でこの文箱を見つけて、まずは入れ物からと思ってメイク道具入れにすることにしました。中身がサステナブルだとは言い切れないのですが、せめてひとつの化粧品を最後までつかい切るようにしています」

漆の箱に整頓されたメイク道具。毎日、背筋を伸ばして鏡の前に座るようになった。

「何をつかって、何をつかわないのか。迷うことはまだまだありますが、その都度立ち止まって考えること、理論的な情報を冷静に分析することを続けていきたい。いい意味で疑いを持つというのは、大切なことだと思うから」

PROFILE

塩谷 舞 しおたに・まい
文筆家。1988年生まれ。京都市立芸術大学卒業。会社員としてウェブディレクターやPRの仕事を経験し、2015年に独立。2018年に渡米、ニューヨークを中心に活動し、現在は東京を拠点に執筆活動をおこなう。著書に『ここじゃない世界に行きたかった』(文藝春秋)。

●情報は、FRaU2023年1月号発売時点のものです。
Photo:Kazumasa Harada Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!