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自分で食べるものが生まれる現場に行って見えてくるのは……?
自分で食べるものが生まれる現場に行って見えてくるのは……?
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自分で食べるものが生まれる現場に行って見えてくるのは……?

私たちのふだんの行動軸をベースに、未来を変えるアクションを集めました。毎日の暮らしのなかでできることから新たな世界での体験まで、できそうなこと、やりたいことから探してみましょう。今回は、「学ぶ」アクションの一例として、スタイリストの竹内万貴さんが「食べものができる現場」を訪ねました。

なにげなく食べたハムが
生き方のヒントをくれた

山のハム工房 ゴーバル」で見た
誰もが朗らかな職場

以前はひとりで工房を訪れた竹内さん。今回は取材のため特別に豚舎も見せてもらい感激。「“おいしい!”の先をたどったら、想像以上の発見や学びがありました」

お取り寄せが手軽になったいま、生産者の顔が見える食べものを選んでいるという人も多いだろう。では、もう一歩踏み込んで食べものがつくられる現場を見に行ってみるのはどうだろう?

スタイリストの竹内万貴さんは、そのアクションを通じて考えが大きく変わった人。ある日、故郷の岐阜県恵那市でつくられたハムを食べ、おいしさに感激。生産現場を見てみたいと、山の中にあるハム工房を訪れた。

工房があるのは静かな山の中。近くを流れる沢水を濾過して使っている

「実家は恵那市で仏具店を営んでいます。両親を手伝うため、東京の仕事をセーブして、恵那との二拠点生活を始めようと決めたものの、フリーランスの身だし、東京での仕事が減るんじゃないか、そんな不安を抱えていました。そんな時期に、ハム工房を訪れたのです」(竹内さん、以下同)

だるまストーブで炭をおこし、長時間熟成した肉を乾燥・加熱・燻製する。添加物を使う製造方法に比べてずっと時間と手間がかかる

恵那市街から車で1時間ほど。「山のハム工房 ゴーバル」は標高600mの山の中にある。自分たちで豚を育て、解体し、昔ながらのだるまストーブに、スタッフみんなで薪割りした桜の生木と炭を入れて燻製する。市場に流通するほとんどの加工肉に添加される化学調味料や発色剤、保存料は使用しない。その代わり、長い時間をかけて肉を熟成させ、自然の旨みを引き出す。

水曜日は肉の解体の日。体力仕事だが作業場はいつも明るい

「工房では女性も男性も、若い人も年配の人も外国の人も、みなさん朗らかに作業をしていました。仕事をするというより、自分のペースで自分の役割に向かっているという感じ。こういう環境からあの味が生まれるんだなと思ったら、自分も焦ったり、すぐに答えを求めたりしないで、腹をくくって背筋をのばして、コツコツ積み重ねていけばいいんだって思えたんです」

母豚と仔豚ごとに飼育スペースを分けて飼育するのが一般的だが、ゴーバルではみんな一緒の「共同哺乳」。お母さん豚たちが一緒に子育てする。広々とした空間で仔豚たちが走り回る。「出荷される日まで、できるだけ豚らしく、楽しく過ごしてほしいから」とは、豚を育てている石原弦さん

ゴーバルの始まりは1980年のこと。ネパールを旅したことで「本当に美しく、豊かな暮らし」に感銘を受けた桝本進さんが、「アジアの人と交流し、ともに学ぶ場所をつくりたい」と、代表の石原潔さんらとともに「アジア生活農場ゴーバル」を設立。Living is sharingという理念のもと、牛や羊を飼い、毛刈り体験や子どもたちの林間学校を行うなど、さまざまな活動を通して「分かち合う生き方」を模索してきた。次第に手づくりの無添加ハムやソーセージの人気が高まり、「山のハム工房 ゴーバル」となった。

昼食はまかない当番がつくったものをみんなで食べる。洗いもの担当はジャンケンで決める

スタッフは地元の人に加え、高校卒業後、「自分のやりたいことを探したい」とやってきた10代の若者も多い。コロナ以前は海外から研修にやってくる人もいて、工房はいつも賑やかだ。

「多様な人たちと一緒に、自分の得意な面を出し合って働くことで、誰かを育て、自分も育てられる。会社の同僚と家族の中間のような関係性が理想」というスタッフの言葉に、竹内さんも大きく頷く。

ハムやソーセージなど50種類以上を手づくりして販売

「ひとりひとりがきちんと役割を果たしていながらも、誰もむつかしい顔をしていないの。そんな働き方、生き方ができるんだ、自分が決めたことに自信を持っていいんだ! ゴーバルのみなさんに教えてもらった気がします」

山のハム工房 ゴーバル

豚の生産から加工、販売までをおこなう。工房内に直売所あり。ネット通販可能。岐阜県恵那市串原3777 gobar.shop-pro.jp

PROFILE

竹内万貴 たけうち・まき
新聞社勤務を経て、器のギャラリーにて販売や仕入れに携わったのち、料理まわりのスタイリストとして独立、活動する。

●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Photo:Kasane Nogawa Text & Edit:Yuriko Kobayashi

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