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「旅する料理人」三上奈緒の焚き火料理ワークショップ@黒﨑海水浴場に参加してみた!【後編】
「旅する料理人」三上奈緒の焚き火料理ワークショップ@黒﨑海水浴場に参加してみた!【後編】
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「旅する料理人」三上奈緒の焚き火料理ワークショップ@黒﨑海水浴場に参加してみた!【後編】

野菜、ハーブ、魚、肉、卵……、「おいしい」をかたちにするのは、使い手の腕前と素材の力があってこそ。持続可能な方法で育てられ、大切に扱われている素材に未来を見出し料理で表現する、そんな食のプロたちを追いました。「旅する料理人」こと三上奈緒さんは、お金を出せばなんでも買えるいまだからこそ、自然の食卓を表現しようとしています。今回は、三上さんのレシピも紹介します。

▼前編はこちら

あるもので料理する
“足るを知る”ということ

ワークショップの参加者がしめて解体した鶏は、ガラも余すことなく、大切につかう。焚き火でじっくり煮出した鶏出汁はメインディッシュのパエリアにする

翌日、ワークショップの参加者たちがやってきた。まずは慎一郎さんの養鶏場を見学し、卵を収穫。さらに生きた鶏をしめる体験もする。血を抜いた鶏を釜で茹で、羽毛をむしる。その後は亜也さん指導のもと、解体にも挑戦した。

「ここは手羽、もも、ささみ」と部位を説明しながら解体する亜也さん。最初は無意識に眉間にシワが寄っていた参加者たちも、「これが心臓、これがレバー、ほら、この卵管の中に殻ができる前の卵があるでしょう?」と、解体が進むうち、乗り出して亜也さんの手元を覗き込むようになった。それは「食材」ではなく、「生き物」を見る眼差しだった。

ビーチにある流木を集めて、手早く3つの焚き火を起こす三上さん。調理法に合わせて火加減を調節し、次々に料理を仕上げていく

地元の農家や漁師から届く食材が揃ったら、ビーチに移動して焚き火をおこす。海水を汲み、じゃがいもを茹でる。焚き火の上に置いた網の上では、慎一郎さんが海で突いた石鯛が焼ける。メインディッシュのパエリアには解体した鶏のガラでとった出汁を加え、野菜や魚、鶏肉などを入れて炊く。食材はもちろん、水も火も、すべてがこの土地からの恵みだ。

日本海に太陽が沈み、焚き火を囲みながらみんなで食事をした。参加者からは「身近にあるもので、こんな豊かな食卓ができるなんて」と声が上がった。

「僕にとってはこれが当たり前だから、サステナブルという言葉はつかったことはないなぁ」と慎一郎さん。

慎一郎さんが素潜りで突いた石鯛。野生のキッチンではまな板も不要!

「そこに海があって、土があって、食べられる資源がある。それをとって栄養にするのは人間が大昔からしてきたこと。都会に住んでいるとどうしても生産者との距離が遠くなってしまうけど、なるべく近い場所のものを選んで食べることはできるんじゃないかな。だから僕は、卵を買って帰りたいという申し出はお断りしているんです。割れちゃうっていう心配もあるけど(笑)、僕の卵がおいしいと感じてもらえたら、ぜひ自分の住んでいる地域でも、同じくらいおいしいものを探してほしいなって思うんです」

その言葉に大きく頷いた三上さん。

「Farm to Tableって、すごくいい考え方だけど、たまにFarmとTableの距離がものすごく遠いなと感じることがあるんです。それって本末転倒というか、やっぱり自然じゃない。たとえば今回、海水でじゃがいもを茹でてポテトサラダをつくったら、本当においしかった。そのアイデアも、この土地でとれたじゃがいもをここでどう調理しようかと考えたとき、そこに海があるんだから海水で茹でてみようっていうシンプルな発想から生まれたんです。こんな料理をつくりたいからこの材料を揃える、というのとは逆で、いまここにこれがあるから、こんな料理をつくろうという発想。いろいろな土地で料理をするなかで、足るを知るということを教えてもらったんです」

堂下夫妻が営む海の家「入のや」にて。じつは料理人になりたかったという慎一郎さん。「おいしいものを届けたい」という気持ちはいまも変わらず、毎シーズン、さまざまなジャンルの料理人を招いてキッチンに立ってもらっている

こんな会話のなかで三上さんと慎一郎さんから出たのが「身土不二(しんどふじ)」という言葉。人間の身体と土地は一体であるという考え方で、「自分が暮らす土地で、その季節にとれたものを食べるのが人間の自然なあり方である」ということだ。

「便利な生活のなかにいると、これって自然じゃないな……という違和感にすら気づけなくなってくる」と三上さん。

「それは私も同じです。だからこそ、こうして生産者に会って、彼らがつくったものをその土地で料理して、食べることが必要なんです。その体験を持って東京に戻ると、何が大切で、何が必要ないのか、自分は何がいいと思ったのかを相対化できる。それを繰り返すことで、食べるってどういうことなのか、それがわかってくるんです」

夏野菜と豆アジ、石鯛のパエリア<レシピ>

パエリアにはトマト、赤玉ねぎ、ピーマン、イタリアンパセリを刻み、ビネガーと塩で和えたサルサと、目玉焼きを添えた。食材は「山ん中たまご園」「家族野菜tsugutsugu」、地元の釣り人の陽一さんからのもの。

◎材料(15人分)

夏野菜(万願寺とうがらし、ピーマン、パプリカ、玉ねぎ、にんにく、ズッキーニ、オクラ、ナス)…適量
豆アジ…40尾ほど
石鯛(内臓と鱗は除く)…1尾
鶏肉(好みの部位で)…適量
米…10合
鶏ガラスープ…2~2.5L
オリーブオイル、塩、胡椒、ターメリック、ローズマリー、タイム…各適量

◎つくり方

❶熱したパエリアパンににんにくを入れて香りを移す。カットした野菜を炒め、鶏肉を加えてさらに炒める。軽く塩、胡椒をする。
❷①に米を入れ、ターメリック、鶏ガラスープと豆アジを加える。軽く塩をして煮立て、水分が減ってきたら火力を弱めてふつふつとした状態に。
❸石鯛は腹にハーブを入れて表面にオリーブオイルを塗り、腹の中、表面に塩をして、熾火にした焚き火の網の上で両面を焼いておく。
❹②に石鯛をのせる。水分が見えなくなったらアルミホイルでフタをする。パリパリという音がしてきたら火から下ろし、余熱で火を入れる。米が炊けて石鯛がふっくらとしたら完成。

PROFILE

三上奈緒 みかみ・なお
栄養士として小学校に勤務後、渡仏、渡米。国内外のレストランで研修する。現在は「旅する料理人」として各地の自然に寄り添う生産者を訪ね、料理を通して生産者と食べる人をつなぐ活動を続けている。https://www.naomikami.com/

●情報は、『FRaU SDGs MOOK FOOD』発売時点のものです(2021年10月)。
Photo:Norio Kidera Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

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