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映画監督・枝優花「小さなアクションは、無限の可能性の始まり」
映画監督・枝優花「小さなアクションは、無限の可能性の始まり」
VOICE

映画監督・枝優花「小さなアクションは、無限の可能性の始まり」

近年、ジェンダーやダイバーシティへの認識が急速に変わりつつあります。それは、これまで声を上げてきた人の存在があったから。映画監督・写真家の枝優花さんが、アクションを起こすようになったきっかけとは?

「自分の生きている世界に
無関心でいたくないから
素敵な世界だけを描くのをやめた」

photo:Yuuka Eda

予備校で出会った男子3人が繰り広げるグルメドラマ『スイーツ食って何が悪い!』(TOKYO MX)や、夫婦関係の多様化を描いた『彼らを見ればわかること』(WOWOWプライム)など、映像作品を通じて、これまでのジェンダーロールについて問題を提起する、映画監督の枝優花さん。社会に対しての疑問や怒りから着想を得て、映像作品に落とし込むことが多いという。

「仕事で表に出ることが増えたとき、生まれながらにして変えようのない性別や年齢、特徴に対し、偏見を持たれたり、心ない言葉を言われることがあり、ものすごく衝撃を受けました。自分がもともと人に興味がないタイプなので余計に……。でも、見渡してみると、そういうことで傷ついている人たちが周囲にたくさんいて、世界的に見ても、偏見の歴史は根強く残っています。こうした、身近に起こった出来事が作品にも影響しています」

社会や政治について発言すると、日本では少なからず批判の対象にされやすいのが現状だ。作品づくりにおいても同様だというが、発信することへの怖さはなかったのだろうか。

「もちろん怖さもありました。知らんぷりして、素敵な世界だけを描くこともできる。でも、海外の映画祭で監督やお客さんと話したときに、自分の生きている世界にどうして無関心でいられるのかと自身に疑問を持ったんです。同時に恥ずかしくもなり、以前より意識するようになりました」

photo:Yuuka Eda

映像作品というエンタメを通して、「互いを個人として認めるまなざしを持てる社会」をつくる後押しをしたいという。

「ひと口にLGBTQ+や多様性という言葉にまとめてしまうのではなく、個人として人間を見つめること。そこには一人ひとりの知識や理解が必要です。私が日常で心掛けているのは、会うまで相手の情報を限りなく入れないようにすること。会って、ただその人を見ることを徹底するんです。そして常識に対して、いつも疑問を持つようにしています。『アクションを起こす』というと何か大きなデモや発信を想像してしまうと思いますが、そうではなくて、自分の隣にいる人やこれから出会うかもしれない人たちに対し、向き合い方や想いを少しずつ変えていくだけで十分。ひとりの力で世界は変えられないかもしれないけど、小さなアクションがゆくゆくは世界を変えていくと思うので。小さなところから動いてみることは、大きな意味があって、無限の可能性の始まりだと思います」

PROFILE

枝優花 えだ・ゆうか
映画監督、写真家。2017年初長編作品『少女邂逅』を監督。主演に穂志もえかとモトーラ世理奈を迎え『MOOSIC LAB 2017』では観客賞を受賞、劇場公開し高い評価を得る。香港国際映画祭、上海国際映画祭正式招待、バルセロナ・アジア映画祭にて最優秀監督賞を受賞。

●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Text & Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子

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