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ANTCICADA篠原祐太「ジビエ、食べてますか? 昆虫食は、まだですか?」
ANTCICADA篠原祐太「ジビエ、食べてますか? 昆虫食は、まだですか?」
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ANTCICADA篠原祐太「ジビエ、食べてますか? 昆虫食は、まだですか?」

食べることは、生きる基本。未来の食を考えるには、現状を知ることが大切。知っておきたい食の課題と、解決に向けた取り組みを学びましょう。今回、注目するのは、世界で巻き起こっているフードテックの波。おいしくて環境にもやさしい、これからの食材とは? 昆虫食歴23年の篠原祐太さんにお話を伺いました。

昆虫は貴重なタンパク源。
地球の恵みを五感で味わう

ウズラを北京ダック風に仕上げたひと皿

2020年6月4日「ムシ(6・4)の日」に“地球料理”レストラン「ANTCICADA」をオープンした篠原祐太さんにとって、昆虫は決して特別な食材ではないという。

店内には昆虫やハーブを使った自家製シロップなどもずらり

「僕たちにとって昆虫は、肉や魚や野菜と同じ、地球の食材の一部。だからANTCICADAで目指すのは『地球料理』」。その言葉通り、店では昆虫や野菜、野山で採れる山菜、野生の鳥獣をハントしたジビエなど、すべての食材をフラットにとらえ、10品ほどのコース料理として提供。上写真の麗しいひと皿は、清流に棲むザザムシをソースに使った一品。またメインでは、ウズラを丸ごとじっくりローストして、カイコを発酵させた醤油のソースと食べるワイルドかつ滋味深い皿も。

「ウズラは採卵した後の親鳥を、カイコは絹糸を吐き終えて役目を果たしたサナギを養蚕農家から譲っていただいています。食材としてはあまり陽の目を見ないものたちを組み合わせ、おいしくつかい切りたいという思いを込めた自信作です」

2015年にラーメン凪との共同開発でリリースされ一躍脚光を浴びた「コオロギラーメン」

コースで使う昆虫は、本職の昆虫ハンターから仕入れたり、自分たちで採りに行ったり、契約農家などから譲ってもらっているそう。そしてもうひとつ、ANTCICADAのシグネチャーといえるのが「コオロギラーメン」。2種類の国産コオロギでとったスープと、世界初の「コオロギ醤油」を使ったタレに、特製「コオロギ油」、コオロギの粉末を練りこんだ「コオロギ練り込み麺」と、コオロギ尽くしの一杯だ。

コオロギ100%で出汁をとるスープ

近年世界的に昆虫食が注目されるきっかけとなったのが、2013年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した『食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書』だ。これによると、「ヒトは1990種類を超える昆虫類を食して」おり、「昆虫類の多くはタンパク質及び良質の脂肪を多く含み、カルシウム、鉄分及び亜鉛の量が豊富」だという。人口増加によるタンパク質不足が叫ばれるなか、食糧危機の解決に栄養価が高い昆虫類の活用を推奨するという内容。採集や飼育の産業化により新たな雇用や収入を生み、牛などの家畜より飼料が少なくて済み、温室効果ガスの排出量の削減にもつながるという。数多い昆虫のなかでコオロギが脚光を浴びる理由を、篠原さんに聞いてみた。

コオロギを原料にしたクラフトビールも大人気

「コオロギは雑食なので味が奥深く、エサや育て方によって風味も変わるので食材としてポテンシャルが高い。クセも少ないので、オールマイティに活かせる扱いやすさもあります。ANTCICADAではコオロギ研究で最前線を走る徳島大学発のベンチャー企業「グリラス」や「太陽グリーンエナジー」と連携して、おいしいコオロギを育て、さまざまな食材に加工して提供しています」

環境への負荷が少なく物理的な育てやすさもあり、国内でもコオロギ養殖ファームは増加傾向にある。篠原さんが続ける。

昆虫の佃煮や、新商品の「いなごらー油」「かいこXO醤」など調味料の開発販売も

「すべてのタンパク源を昆虫に替えるというのは、まだ現実的ではないと思います。そのための生産体制を整えたり、昆虫食への理解を深めたりと、僕らがやるべきことはたくさんあります。でも、食材としての魅力は十分。自分たちで昆虫を採って、おいしく料理して食べることは、実はジビエより身近な自然体験です。足りないものを補うひとつの選択肢として、昆虫がより身近な存在になるとうれしいですね」

CHECK!

食用コオロギの養殖環境……
1kgのタンパク質を生産するために必要な飼料_牛の約0.17 %
体重を1kg増加させるのに必要な水の量_牛の約0.0018 %
体重あたりの温室効果ガスの排出量_牛の約0.035 %

ハーブたっぷり夏野菜と、
ザザムシのソース

清流に棲むザザムシをソースに使い、ザリガニを包んだワンタンと夏野菜をあしらったひと皿。白ワインと生クリームで仕上げたソースに苔の風味が香る。ちなみにザザムシとはカワゲラ、トビケラなどの水生昆虫の幼虫の総称で、長野県伊那地方や天竜川上流域では古くから貴重なタンパク源として食す習慣がある。

PROFILE

篠原祐太 しのはら・ゆうた
幼少期より地球を愛し、野生の恵みを味わう。狩猟免許や森林ガイドの資格も持つ。昆虫食歴23年。「ラーメン凪」や「四谷 うえ村」で修業し、2020年に念願の昆虫レストランを開業。昆虫料理の探求、ワークショップ、執筆、講演など幅広く活動。

ANTCICADA
東京都中央区日本橋馬喰町2-4-6 ☎03-6881-0412 https://antcicada.com

参考資料:東京大学生産技術研究所沖研究室、UNFCCC「Greenhouse Gas Inventory Data 2015」
●情報は、『FRaU SDGs MOOK FOOD』発売時点のものです(2021年10月)。
Photo:Kiyoko Eto ,Kiichi Fukuda Text & Edit:Chisa Nishinoiri ,Yuka Uchida
Composition:林愛子

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