「これ以上、服は必要?」の疑問をクリアにするため、デザイナーがはじめたこと
地球環境のために、人々の権利のために、持続可能な未来のために、私たちにできることはなんだろう。すでにSDGsへのアクションを起こしている人たちに、いま取り組んでいることについて聞いてみました。今回は、デザイナーの石井瑛真さん、モデルのイシヅカユウさんに伺いました。
大人も子どもも、
必要なのは現状を知り学ぶこと
これ以上、服は必要なのか? ファッションデザイナーとして、常につきまとう疑問をクリアにするため、2021年に立ち上げた会社「for UNIVERSE」では、パーソナルオーダーをはじめます。ひとりのお客さまとじっくり向き合いながら丁寧につくる服は、人生に長く寄り添える宝物になるのでは、と。希望者には、製作過程が見られる工場見学も行う予定です。子どもたちに向け、自立力や選ぶ力を身につける学びの準備も進めています。
たとえば、いま着ているTシャツが誰の手でどのようにつくられているのか。私がこれまで出会ってきた生産者さんにものづくりと向き合う姿を見せてもらうことで、子どもたちにものの大切さを感じ取ってもらえたら。幼い頃は、目の前の世界しか見えず、好きなことや可能性に気づけないもの。「世界は広いんだよ」「人生にはいろんな選択肢があるんだよ」と、幼い頃の自分が知りたかった、教科書に載っていないことを教えてあげたい。私たち大人もそこから学ぶ必要があると思います。
PROFILE
石井瑛真 いしい・あけみ
エシカルファッションデザイナー。大量の服がつくられては捨てられるアパレル産業の仕組みを変えるべく、地球に優しい服づくりに打ち込む。2021年循環型のモノづくりを通して経済性と社会性を両立させた新しい資本主義の実現を目指す「for UNIVERSE」社を設立。
環境もジェンダーも。
できることからはじめてみる
幼い頃から海洋生物が好きだったので、生き物たちが暮らす環境について、自然と考えるようになりました。自分のできる範囲で、環境に配慮したアクションを心がけています。たとえば、コスメは容器をリサイクルしているものを使用したり、水筒でお水を持ち歩いたり、洗剤は環境に優しいものをなるべくつかったり。服は主にリサイクルのものや古着を着るなど、身近なところから。
また、私はトランスジェンダー当事者であることから、ジェンダー平等については、考えたくなくても考えざるを得ないことがよくあります。それがきっかけで差別や貧困、平和などについても考えるようになりました。当たり前のことですが、ジェンダーに関しては相手を決めつけないようにしています。私は専門家ではありませんが、当事者として声を上げ続けていきたい。すごくムリをしなくてはいけないとかではなく、自分の生活のなかの些細なところから、アクションしていくことが大事なのだと思います。
PROFILE
イシヅカユウ
ファッションモデル。ファッションショーやスチール、ムービー等の分野で活動中。最近では俳優としてテレビドラマや映画にも出演するなど、活躍の場を広げている。2021年に上映された短編映画『片袖の魚』ではトランスジェンダー役で主演を果たす。
●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Illustration:Shinco Uematsu Text:Nana Omori, Chihiro Kurimoto Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子