若宮和男「ジェンダーギャップのあるイベントには登壇しません」
近年、ジェンダーやダイバーシティへの認識が急速に変わりつつあります。それは、これまで声を上げてきた人の存在があったから。起業家でアート思考キュレーターの若宮和男さんが、アクションを起こすようになったきっかけとは?
自分の振る舞いを変えるだけで
「違和感の再生産」は断ち切れる
「ジェンダーギャップのあるイベントの登壇をお断りすることにしました」。2020年7月、ITベンチャーuni’queの代表・若宮和男さんが書いた記事が話題になった。スタートアップ・ベンチャー業界でのジェンダーギャップを解消する事業などに取り組み、イベントでの登壇も多い若宮さん。ジェンダーバランスがとれていないイベントの登壇を断る理由とは?
「自分が登壇することで、女性1人分の席を奪う可能性があるからです。4人きょうだいのなかに男1人という女性マジョリティの家庭に育ったこともあり、理系大学での女性の異常な少なさや、企業での女性の不利な状況に違和感がありました。登壇者が男性ばかりのイベントへの違和感も強くなり、この宣言をしました」
そう話す若宮さんは、「いわゆる業界の常識に慣れ、ジェンダーギャップに加担してしまっていた」と振り返る。業界の常識を破ることへの懸念はなかったのか。
「男性主体の業界でジェンダーに関して声を上げることで、反感を買ったり仕事が減ったりする懸念もありましたが、娘2人をもつ父親として、未来にこの負債を残してはいけないと。自分には偏見がないと思い込んでいると、自分の中にある無意識の偏見に気づけないので、常に『自分にも偏見はある』と考えて、異なる価値観とも出合うようにしています。子どもと話す際にも男女でのバイアスを植えつけないように気を配り、ダイバーシティや性教育についても一緒に語ることを心がける。違和感を見過ごして加担し再生産するのか、自分の振る舞いを変えて連鎖を断ち切るのか。小さなアクションが未来を変えていくはずです」
PROFILE
若宮和男 わかみや・かずお
起業家、アート思考キュレーター。2017年、女性主体の事業をつくる「全員複業スタートアップ」としてuni’queを創業。2018年、東洋経済「すごいベンチャー100」選出。著書に『ぐんぐん正解がわからなくなる! アート思考ドリル』(実業之日本社)など。
●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Text & Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子