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保護した猫は30匹以上! ミキ亜生が「ナニワの猫救世主」になったワケ
保護した猫は30匹以上! ミキ亜生が「ナニワの猫救世主」になったワケ
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保護した猫は30匹以上! ミキ亜生が「ナニワの猫救世主」になったワケ

ここ数年でSDGsの認知度はぐっと高まり、アクションを起こしている著名人もたくさんいます。彼らはどのような社会課題について問題意識をもっているのでしょうか。今回は、お笑いコンビ・ミキの亜生さんに話を聞きました。

猫たちが教えてくれた
手を差し伸べることの意味

お笑い界きっての猫好きで知られるミキの亜生さん。これまで30匹以上の身寄りのない猫たちを保護してきたが、もともとは猫が苦手だったというから驚く。

「大学生のとき、遊園地の観覧車スタッフのバイトをしてて、雨やのにポツンと座っている猫を見つけたんです。気になって見に行ったら足を引きずりながらついてきて、結局、スタッフ用のヒーターの前で5時間くらい寝てもうて。『看板猫に、とかどうすか?』て遊園地に提案したんですけど、猫嫌いなボスが『イヤや、そんなん!』って(笑)。それで仕方なく、その猫をジャンパーの中に入れて、原付で家に持ち帰ったんです」

友人が里親になってくれ、猫との生活は数ヵ月で終わった。寂しいというよりホッとしたのが本音だった。猫への愛が芽生えたのは次に出会った助六の存在が大きい。

「家の近くの塀の間に子猫が挟まってて。生後数日で目も耳も開いてないし、これはあかんってことで一緒に暮らし始めたんです。ミルクもトイレも2時間おきで、ネタ合わせの途中で家に帰って、またすぐチケットの手売りに行ったりして、めちゃくちゃ忙しかったですね。死んでたらどうしよう……って、家に帰るのが怖かったなあ」

必死の育児で無事に育った助六。たまに預ける実家の家族にもなつかない人見知りの猫だったが、亜生さんにだけには違った。

「実家に迎えにいくと、『この子、1回も触らしてくれへんかったわ』と家族が言うんですけど、言い終わる前に助六はもう僕に乗っかってるんです。うわ~、何? このかわいい生き物!? って(笑)。一気にメロメロになってしまったんです」

家の猫を愛おしく思うほど、外にいる猫たちのことも気になるようになった。

「仕事から帰って家でテレビを見てるでしょ。ああ、いまこの瞬間にもひとりでピーピー鳴いてる子がいるんやって考えたら、いてもたってもいられんようになって。ためしにTwitterで『大阪』『難波』『猫』で調べてみたら、『駅前で子猫が鳴いてます!』とかリアルタイムの情報がけっこうあったんです。それで毎日仕事終わりの夜10時くらいから街を歩いて猫を探すようになって」

頭にライトをつけ、夜中に繁華街の路地をうろつく男は相当怪しかっただろう。

「職務質問は日常茶飯事。でも一番イヤやったんは後輩に声かけられること。『亜生さん、何やってるんですか!?』って。『えっと、これはな、違うねん、違うねん!』って、よけい怪しいですよね(笑)」

現在、そうして保護した猫のうち5匹と一緒に暮らす亜生さん。時間的にも経済的にも大変なことは多いけれど、猫の保護活動から得たものはもっと大きいという。

「僕ね、以前はめっちゃ冷たい人間やって言われてたんです。仕事仲間とかお兄ちゃんにも。人のことに興味がなかったし、人の痛みとかもよくわからない人間やったと思います。でも猫のことを始めてからは『お前、変わったなあ』ってよう言われるんです」

先日も、こんなことがあった。

「すごい雨の日に車を運転してたら、ビッショビショのおばあちゃんが歩いてたんです。とっさにUターンして『おばあちゃん、どうしたん!? ビショビショやん!』って声かけて、家まで車で送ってあげたんです」

「面倒には巻き込まれたくない」という無関心な空気が漂う昨今、なぜ亜生さんは迷いなく手を差し伸べられるのだろう。

「もちろん僕もスルーしたくなる時はあります。たとえば電車で座ってる前に年配の方が立ったとして、自分も疲れてるし、一瞬寝たフリしたくなるんですよね。でも絶対後悔っていうか、あとでモヤモヤするんです。何で声かけへんかったんやろうって、自分がイヤになる。自己嫌悪に陥るくらいならちょっと恥ずかしかろうが、相手に断られようが、やったほうがいいんです。それは自分のためなんです、僕にとっては」

最近は「ナニワの猫救世主」として知られる亜生さん。毎日のようにSNSを通して「ここに猫がいます」「保護してください!」などのメッセージが届くそう。

「いやいや、いまそこにいるのは君やし、助けられるのは君しかいないやん、このバカタレ!って思うことも正直あります。厄介ごとはご免っていう気持ちもわかるけど、やっぱりその瞬間は手を差し伸べてあげてほしいと思います。そのあとは誰かに助けを求めてもいいわけやし。僕だって大それたことは何もできないけど、それでも手助けできることってたくさんあると思うんです。とにかく目の前で困っている存在をスルーしない。その気持ちを持って行動するだけで、世の中も自分もちょっとずつよく変わるって、信じたいじゃないですか」

PROFILE

亜生 あせい
1988年、京都府生まれ。2012年に兄の昴生(こうせい)とともにお笑いコンビ・ミキを結成。16年に第46回NHK上方漫才コンテストで優勝。17年から2年連続で「M-1グランプリ」決勝進出を果たす。近年は俳優としても活躍。現在、TBSテレビ『王様のブランチ』や文化放送『ミキの深夜でんぱ!』などテレビやラジオのレギュラー出演も多数。『MIKI OFFICIAL BOOK ミキ、兄弟、東京』(ヨシモトブックス)が発売中。

●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Photo:Norio Kidera Hair & Make-Up:Rumiko Koike Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

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