Eテレ『バリバラ』は、みんなのためのバリアフリー・バラエティ
近年、ジェンダーやダイバーシティへの認識が急速に変わりつつあります。それは、これまで声を上げてきた人の存在があったから。プロデューサーの森下光泰さんが、アクションを起こすようになったきっかけとは?
いわゆる“バラエティ番組”じゃなくて、
いろんな人たちが出てくる“バラエティ”
NHK Eテレの番組『バリバラ』は、「障害者情報バラエティ」として2012年に放送開始。2015年から制作に携わり、チーフ・プロデューサーを引き継いだ森下光泰さんは、「『生きづらさを抱えるすべてのマイノリティ』にとっての“バリア”をなくす、みんなのためのバリアフリー・バラエティ」とテーマを広げた。
「いろんな人たちと出会えた学生時代や、人権にかかわるさまざまな番組を制作するなかで、マイノリティの人たちが、理不尽な社会の壁にぶつかる場面に何度も立ち会ってきました。“バリア”とは、たとえば“身体が不自由なこと”ではなく、“社会に根づいている価値観”だと感じます。障がいのある人だけでなく、外国にルーツのある人やLGBTQなど、マイノリティであるがゆえに社会から見えにくかった人たちがいる」
番組ではマイノリティの人たちが漫才やコントをすることもあり、「笑っていいのかわからない」と言われることがあるというが、「なかなか聞けない本音を話してくれているので、耳を傾けて楽しんで見てほしい」と森下さん。それは、社会から見えなくなっている人たちの存在を正しく認知することにつながる。ダイバーシティ実現のためには、何が必要だろうか。
「ダイバーシティは誰かが実現してくれるものではなく、“自分自身の問題かも”と考えること。理不尽な社会の壁は、自分の中にあるステレオタイプかもしれないから。みんなでみんなのことを考えられるような社会が、真のダイバーシティなのだと思います」
PROFILE
森下光泰 もりした・みつひろ
NHK大阪拠点放送局コンテンツセンター第3部チーフ・プロデューサー。1971年生まれ、京都府出身。1997年NHK入局。『その時歴史が動いた』『歴史秘話ヒストリア』『ETV特集』、そのほか福祉番組などで、「人権」をテーマにしたテレビ番組を多数制作。
●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Text & Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子
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