Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

橋本愛「私のセリフによって考え方や人生が変わる“たったひとり”に向けて」
橋本愛「私のセリフによって考え方や人生が変わる“たったひとり”に向けて」
VOICE

橋本愛「私のセリフによって考え方や人生が変わる“たったひとり”に向けて」

働き方は、生き方です。人それぞれ人生が違うように、働くスタイルも多種多様、正解はありません。会社やまわりの力を借りながらも、最終的に、どのように働くかは自分の意志で改革していくしかありません。誰のためでもなく、自分自身のために、新しい働き方を探してみませんか?

10代から俳優として活躍し、輝きを増し続ける橋本愛さん。最近はずっと夢だったという歌にも挑戦するなど、活躍の場を広げています。

遊ぶこと、食べること、寝ること。
ぜんぶ仕事につながる

ブラウス、スカート、シューズ/すべてトリコ・コムデ ギャルソン(コム デ ギャルソン) ソックス/スタイリスト私物

「じつはお仕事に主体的に取り組めるようになったのはここ数年なんです。はじめたばかりの頃は仕事という意識はなくて、漠然と25歳くらいでやめるだろうな……と。家族がオーディションに応募したことではじめた仕事で、自分で選んだ道じゃなかったし、なんとなく流れに乗って仕事を続けていたような部分もありました」

25歳になって、考えは大きく変わった。

「いまはこの仕事をおばあちゃんになるまで続けたいと思っています。大きな転機になったのは、数年前から専属のアクティングコーチに師事して、あらためて演技を学びはじめたこと。それまではほぼ独学で演じていたせいか、いくら周囲に評価されても自分では成長を実感できなくて。前にも上にも進んでいる感覚がなくて、もしかしたら後退しているかもしれないって思ったり。でも学びはじめてからは、つかみ切れていなかった部分がロジカルに理解できるようになりましたし、そのうえで場数を踏んで体験を体にすり込んでいくうちに自信もついて、やっと自分が前に進んでいるんだっていう実感を得られたんです」

10年以上のキャリアを積んだ身。「演技を学びたい」と申し出るのは勇気がいることだった。

「教えてもらうなんて、楽しようとしてるんじゃないかって思ってしまって。結構長い間言い出せませんでした。でも2020年に公開された『グッドバイ』という映画に出演したとき、成島出監督がはっきりと『ヘタだね』って言ってくださって、それで吹っ切れたんです。そうだよね、学ばないとダメだよねって(笑)」

以来、演技は180度変わった。

「感情を演じるのではなくて、行動を演じるというのが演技の基礎だと教わったんです。たとえば涙を流すようなシーンの場合、それまで私はずっと悲しい、悲しいって思って演じていたんです。でも大切なのは、なぜ悲しいのか? という部分。感情を演じるのではなくて、その人が何を求めていて、何が手に入らないのか、その部分を行動として表現すれば、自然と感情は湧き出てくるんだと。それを実践してみたら、うわ、本当だ!って」

演じることの根本が変わった体験だった。

「尊敬している先輩方はみなさん役を『生きて』いて、その姿にあこがれつつも、自分はただ『演じる』だけで『生き』られない。最近、少しずつそこに近づけているような気がして、演じることがすごく楽しい。いまはこれ以上面白みを感じられる仕事はないと思っています」

2021年、NHK大河ドラマ『青天を衝け』に出演した橋本さん。日本近代資本主義の父と言われる渋沢栄一の妻を演じた。実業家として成功する裏で、女性の教育や社会福祉にも尽力した氏は、橋本さんにはどう映っているのだろう。

「渋沢さんは、ビジネスはお金を稼ぐためにあるのではなく、人を助けるためにあるという考えを持ち続けた人。ビジネスマンのイメージが強いですが、じつは農家の生まれで、江戸に遊学したのちは討幕を企てたりもしているんです。攘夷であれビジネスであれ、その根っこにあるのは、いまの社会ではダメだという危機感や、国を変えて人々を幸せにしたいという強い思い。貧富の差や身分制度など、生まれたときから当たり前にあるものに対して疑問を抱けるというのは、教養はもちろん、情熱や心根の優しさがあったからこそだと思います」

ブラウス/ト リコ・コム デ ギャルソン(コム デ ギャルソン)

実業家と俳優。まったく違う職業だが、働くという点で強く共感する部分があるという。

「自分もこの仕事をお金のためだけにやっていないし、じゃあ何のためかと考えると、いま生きている人たちのためだと思うんです。私自身、映画や音楽、文学といった芸術に生かされてきた人間なので、ひと言のセリフが誰かの考え方や人生を変えてしまう、そのことがよくわかるんです。だからこそ表現するときにはその先にいるたったひとりのことを考えるし、そうじゃないとやる意味がない。渋沢さんは、どうしてもお金や経済と切り離せないビジネスという分野で、それでもその先にいる人々の生活や心、環境をも見通して仕事をしていた。そういう人がいたということは、すごく心強いですね」

自分の表現すべてが誰かに影響を与える。だからこそ、日々触れるもの、感じること、あらゆるものが仕事とは切っても切り離せない。

「プライベートで何か体験することも、食べることも、寝ることすら俳優の仕事につながると思っています。生きることのすべてが仕事で、それが生きがいでもある。働くこと=人生だし、命だし、私だし。仕事をするというより、本当に楽しんで生きてるって感じです。でも、だからこそきちんと休んで、常に心と体を健康に保っていようと思える。俳優であるからには、休むことさえ使命だって思っているんです」

ドレス/シモーン ロシャ(ファーフェッチカスタマーサービス) シューズ&タイツ/ともにスタイリスト私物

最近、新たに取り組む歌の表現も、働き方に新しい風を吹き込んでくれたもののひとつだ。

「夢見ていた歌う機会に恵まれてから、比例してお芝居がすごくやりやすくなったんです。以前はプレッシャーのあまり緊張しすぎていました。結果ではなく目の前のことに集中する精神状態が一番いいパフォーマンスができると知りながら、その境地にたどり着けずにいて。でもいまは一番好きなことをやれている幸福感と、お芝居と歌、ふたつの表現が還元し合う感覚がとても心地よくて、肩の力を抜けるようになりました。今後は踊りもやりたい。いろんな表現に挑戦して、それぞれを高めていきたいです」

PROFILE

橋本愛 はしもと・あい
俳優。1996年、熊本県生まれ。2021年3月発売のトリビュートアルバム『筒美京平SONG BOOK』に歌手として参加し、『木綿のハンカチーフ』をカバー。

●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Photo:Tetsuo Kashiwada Styling:Natsuko Kaneko Hair & Make-Up:Hiroko Ishikawa Edit & Text:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

【こんな記事も読まれています】

ジビエ料理は、地域課題解決の救世主!

家具の端材(おがくず)でつくる「丸かじり野菜」がクラファンの舞台へ!

捨てる神あれば拾う神あり!新しいリサイクルのカタチ

「大好きなものを長くつかう」が、私たちの「Money Voting」

脱プラスチックに舵を取れ!ビーチサンダル号

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!