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“ごみ清掃芸人”滝沢秀一の野望「世界中のごみを減らしたい!」
“ごみ清掃芸人”滝沢秀一の野望「世界中のごみを減らしたい!」
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“ごみ清掃芸人”滝沢秀一の野望「世界中のごみを減らしたい!」

お笑いコンビ「マシンガンズ」としてM-1グランプリで2度、準決勝に進出し、「ザ・セカンド」でも大活躍中の滝沢秀一さん(45歳)は、10年前からごみ清掃員としても活躍しています。前回のインタビューでは、ごみを減らす方法を教えてくれた滝沢さん。最終回では、世界が抱えるごみ問題に、どう立ち向かえばいいのかを教えていただきました。【後編

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ペットボトルの“放置”は罪深い

日々、ごみ清掃員として、ごみに向き合ううち、さまざまな危機感を感じてきたと語る滝沢さん。とくに最近は、あまりにも大量の洋服が捨てられていることに心を痛めているという。

「気になりはじめたのは、コロナ禍より前ですね。やはり、ファストファッションが流行り出したころからかな。『ワンシーズンでいいや』と、簡単に服を捨ててしまう人が増えたのでしょう。『本当に着たの?』と二度見してしまうようなキレイなアウターが、無造作に捨ててあったりする。清掃員がそれを拝借することは、もちろん禁止されているんですが、思わず持って帰りたくなります」

ファストファッションの洋服が安易に捨てられる原因は、つくり手の顔が見えないからではないか、と滝沢さんは考えている。

「食べものと同じように、その洋服がどこからきたのかわからないから捨てやすいんじゃないかと。安い洋服はたくさんありますが、原材料が安くなったわけでもなければ、物価が下がっているせいでもない。人件費が下がっているんですよね。

キレイな洋服がたくさん捨てられているのを見ると、『よくないわ〜』と思ってしまいます。まだまだつかえるソファや棚などの粗大ごみも同じ。ごみ問題は一人ひとりが意識を変えるしかないんです。みんなが本気になれば、確実に減らせるんですよ」

「ペットボトルのキャップがつけられたまま捨てられていると、ごみ収集車に入れて圧縮した瞬間、ものすごい勢いでごみ投入口からキャップが飛び出してくるんです。もはや弾丸、凶器。それで血まみれになった同僚もいます」。

洋服と並んで、滝沢さんが問題だと思っているのがペットボトル。コロナ禍では、目を疑うほどの量のペットボトルが、ゴミとして連日多くの家庭から出たという。

「日本で1年間に消費されるペットボトルの量は、232億本以上といわれています。でも、ひとりが一日1本分減らせば、一年で365本減らせます。家族や友人など10人が協力すれば、一年で3650本も減らせる。

僕は、なるべくペットボトルをつかわないように、仕事場にはマイボトルを持参しています。それを忘れたときは、ビンや缶のドリンクを買うようにしています。ビンに限定すると、僕の好みの飲みものが売ってなかったりして、すごく悩むんですけど。

とはいえ、232億本のペットボトルのうち90%ほどは『資源ごみ』として回収されているんですよね。キチンとラベルを剥がしてキャップをとって、ゆすいで出していただければ、リサイクル処理できるからいいんです」

問題は、ちゃんと資源ごみとして出されない「放置ペットボトル」だそう。

「集積所からあふれ出していたり、自動販売機の横にある回収ボックスの上などに放置されていたりするペットボトルが大問題。たとえば、みなさんも道路で、車に踏みつぶされてペシャンコになったペットボトルや、風に吹かれて転がっているペットボトルを目にしたことがあるでしょう。あの大部分は排水溝や川などに落下して、最終的には海に流れていってしまうんです」

清掃員としての想いや日々の作業を綴った『ゴミ清掃員の日常』(講談社)。滝沢さんの妻・友紀さんがマンガを描いた。一人ひとりがラベルを剥がし、キャップを外して資源ごみとして出せば、清掃員たちの負担は大きく減るはずだ。

「みんなが本気になれば、洋服もペットボトルのごみも、かなり減ると思います」と滝沢さん。そうして自分が出すごみに意識を向けると、いろいろなところに変化が現れるという。

「ちゃんとした人間になるというか、他人のことを気づかえるようになるんです。『これを処理する人は、大変なんだろうな』などと、見えないことにも気を配れる。そういう意味では、結果的に自分にいい影響を与えると思います。

興味がないといえば、私も清掃人になるまで、『ごみの最終処分場の寿命は、あと20年』といわれていることを知らなかったんですよ。そういう事実を、みなさんにはぜひ知ってもらいたいです」

滝沢さんは、自身の世代よりも、若い世代や子どもたちのほうが、はるかにSDGsに関する意識が高いと感じている。

「われわれ昭和生まれは、スーパーやコンビニで生鮮食品を買うとき、ついつい陳列棚の奥の賞味期限までまだ余裕のある商品を手に取ってしまうじゃないですか。親世代からも『長持ちする奥の商品から取れ』といわれて育っていますし(笑)。けれどもいまの子どもたちは、『フードロスを防ぐために手前の商品から取る』と教えられている。『社会の役に立っている会社に就職したい』という学生に出会ったときには、ゴトリと音を立てて時代が変わったのを感じましたね」

ごみ削減の意識が生活を豊かにする

滝沢さんの野望は、日本のごみのみならず、世界中のごみを減らすこと。さらには、環境問題にもつながっている途上国のごみ山「ダンプサイト」をなくしたいと考えている。

「行政がダンプサイトを撤去しようとしたところ、ごみを拾って、それを売って生活している人たちから猛反発を食らったといいます。だから、雇用問題を解決しないと根本的な解決にはつながらないんですよね。

『ごみを減らしたい』というと、『ごみがなくなったら、お前の仕事もなくなっちゃうじゃん』といわれることがあります。でも、そのときはリサイクルの仕事に就けばいい。清掃員の仕事にこだわっているわけではなく、社会に貢献できる仕事なら何だっていいと思っているので」

リサイクルは処理に手間がかかることから、最近ではリユースに注目が集まっている、と滝沢さん。

「さらに今後は、ごみ自体を減らすリデュースが盛り上がっていくと思います。レンタルやシェアを活用して、ゴミを出さないようにする意識が、さらに高まっていくんじゃないかな。

ごみは生活の縮図であると同時に、本当に『その人次第』なんですよ。テレビ番組のロケで、いわゆるごみ屋敷を訪ねたことがあるのですが、そこの住人は『ここにあるものは、ぜんぶ大切なもので、ごみではない』というんです。反対に、どんな素敵なものでも、捨てればごみになってしまう。できればみなさんには、買うときに『捨てること』も考えてみてほしいですね」

地球にやさしいことをしようとすると、手間がかかって面倒くさい。けれどもていねいに生きることにつながり、毎日が充実するのだとか。

「つかい捨てのほうが便利だし、ずっと楽ではあるんですよ。でも、便利なものをつかうことは、それだけ他人に負担をかけていることになる。そもそも『誰かが捨てるだろう』『分別するだろう』という考え方って、傲慢(ごうまん)だしカッコ悪いですよね」

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滝沢秀一■1976年、東京都足立区生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年より清掃員として、ごみ清掃会社に勤務。現在は「社会世相」「食品ロス問題」「環境問題」等についてSNSや執筆、講演会などで発信している。マンガ『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、『このゴミは収集できません』(白夜書房)など著書多数。

Photo:横江淳 Text:萩原はるな

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