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紛争予防の専門家・瀬谷ルミ子「祈るだけでは平和は維持できない」【前編】
紛争予防の専門家・瀬谷ルミ子「祈るだけでは平和は維持できない」【前編】
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紛争予防の専門家・瀬谷ルミ子「祈るだけでは平和は維持できない」【前編】

紛争地に平和を取り戻す武装解除、紛争予防の専門家として世界各地で活動する瀬谷ルミ子さん。失われてしまった、あるいは失われようとする平和を、現地の人たちと築く活動を続けています。祈るだけではない、自らの手で“平和をつくる”とはどういうことなのかを伺いました。

“平和をつくる”とは!?

瀬谷さん(中央)は、認定NPO法人REALs(Reach Alternatives)の理事長を務めつつ、各国に赴いて民族共存、争い防止のための仕組みづくりをおこなっている

FRaU 瀬谷さんは「平和は祈るだけでは維持できない。コツコツつくるものだ」と提唱されています。ズバリの質問ですが、そもそもまず、平和とはどういうことなのでしょう。

瀬谷 平和について考えるにあたって、まず紛争とは何かについて考えてみましょう。広い意味でいうと人間が2人いて、そこに意見や価値観の相違が生じた時点で、それは紛争と呼べます。職場のいざこざや家族や友人との意見の食い違いもそうです。でもすべての紛争が悪いというわけではなく、そこには「建設的な紛争」と「破壊的な紛争」があります。前者はたとえ意見の相違があったとしても対話を通して相手と合意形成できる場合のこと。話し合いで解決できれば、そこからより多様なものの見方を取り入れたり、新しい関係性の築き方を見出したりできます。一方で「破壊的な紛争」は、意見の相違を武力や暴力によって決着をつけようとするケースのことです。

FRaU 職場や家庭でも日々紛争が勃発しますが、なんとか「建設的な紛争」で止めようと努力している気がします(笑)。

瀬谷 同時に平和にも「消極的平和」と「積極的平和」の2種類があります。「消極的平和」とは単に戦争が起きていない状況。最低限の平和ともいえます。かたや「積極的平和」は、戦争が起きていないことはもちろん、特定の人種への抑圧や差別、女性への暴力、マイノリティに対する迫害などがないこと、メディアや個人における表現の自由が保たれていることなど、あらゆる人の権利や自由が保たれている状態。より成熟した平和といっていいでしょう。

FRaU だとしたら、ほとんどの国が「消極的平和」に留まっているのかもしれません。

瀬谷 大切なのはいずれの平和も、それが他国など外から押しつけられたものだと破綻しやすいということです。イラクへのアメリカの介入などはそのわかりやすい例ですね。当事国の老若男女、あらゆる世代の人たちが、自分たちにとって望ましい平和とはどういうものなのかを考えて話し合い、自分たちで見出して築いていくこと。そのプロセスが欠かせません。自分たちの手で自分たちの社会のあるべき姿をつくっていけること、武力や暴力によらず対立に折り合いをつけていけること。その力がその社会に備わっていて、自分たちの力で恒常的にブラッシュアップしていけること。それを次の世代にも受け継いでいけること。こうしたことができている状態が、本当の意味での平和だと私は思っています。

FRaU 日本は平和だと思っていましたが、本当の意味では違うのかも……。

▼後編につづく

PROFILE

瀬谷ルミ子 せや・るみこ

1977年群馬県生まれ。認定NPO法人REALs(Reach Alternatives)理事長。中央大学総合政策学部卒業後、イギリス・ブラッドフォード大学紛争解決学修士号修了。紛争地の争いやテロの予防、復興、武装解除、問題解決の担い手として女性を育成する活動などをおこなう。著書に『職業は武装解除』(朝日新聞出版)。https://reals.org/

●情報は、FRaU2023年8月号発売時点のものです。

Text & Edit:小林百合子 Composition:林愛子

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