サウナやソロキャンプに次ぐ粋なポップカルチャー。都会での農的体験「アーバンファーミング」のはじめ方
ファッションから最新アイテムまで、サステナ視点なトレンド情報をお届けするサステnaviでは、若い世代が取り組んでいるサステナブルな活動にも注目。今回は、大学院1年生の井上寛人さんが、体験するだけでなく運営にも参加しているアーバンファーミングを紹介します。
少し窮屈な世の中になって2年ほど経ちましたが、みなさんはどうリフレッシュされていますか? 自然に触れる癒し体験や、新しい人とのつながりを求めるなら、アーバンファーミングを始めてみてはいかがでしょうか。
アーバンファーミングとは、ビルの屋上や、マンションのベランダ、遊休地など、都市空間の隙間を利用して野菜を育てるライフスタイルのことをいいます。
アーバンファーミングが人との交流を生みストレス解消に
コロナ以降に家庭菜園やガーデニングを始めた人は多く、植物とのふれあいがストレス軽減に役立つことも期待されています。私が運営に関わっているアーバンファームでは、利用者は社会人や子育てママだけでなく、大学生などの若い世代の新しい交流の場としても楽しまれています。アーバンファームは世代間交流が生まれる場所にもなり、心も体も疲れきった日常を癒してくれるかもしれません。
アーバンファームの選び方
探してみると実はたくさんあるアーバンファーム(都市農園)。始めるなら、農的体験を手軽に楽しみたいのか、本格的な野菜づくりにチャレンジしたいのかで選ぶのが良いと思います。
①農的体験を手軽に楽しみたいなら
農的体験を気軽に楽しみたい人には、アーバンファーミングのコミュニティへの参加がおすすめです。コミュニティが農園の空間全体をシェアしているため、仕事などが忙しい時期でも野菜のお手入れをみんなで分担でき、行きたいときに農的体験をすることができます。野菜づくりを通して、新しい人とのつながりが生まれ、収穫の喜びも分かち合えます。
コミュニティへの参加は、区画貸しに比べて利用料が安価なのも魅力です。例えば、野菜づくりをナビゲーションしてくれるスマホアプリと紐づいたシェアリング農園を展開する「grow FIELD」や、四季折々の野菜や果樹、田んぼでのお米つくりを始め、「ハーブ部」「ワイン部」「ビール部」などテーマごとにも活動に参加できるNPO「アーバンファーマーズクラブ」などがあります。
②本格的な野菜づくりにチャレンジしたいなら
本格的な野菜づくりにチャレンジしたい人には、区画貸しのレンタル農園がおすすめです。時間もお金もかかりますが、植える野菜も自由に選べて、年間を通して野菜栽培の初めから終わりまで、全て自分の手で体験することができます。専門家のサポートも充実しているサービスが多いので、初心者の方でも安心です。家族や親子で始める方も多く、野菜づくりを通して家族とのコミュニケーションも増え、絆が深まるかもしれません。例えば、新宿や荻窪などのショッピングモールの屋上に農園がある「ソラドファーム」や、住宅街に多く畑を構える「シェア畑」などのサービスがあります。
アーバンファーミングが気候変動の抑制に役立つ
そんな豊かな農的体験を味わえるアーバンファーミングは、気候変動の抑制にも効果があります。植物がCO2を吸収してくれることは有名ですが、実は土壌も有力な吸収源になるからです。また、野菜を都会で地産地消することによって、輸送時のCO2を削減することができます。さらに、アーバンファーミングを日常的に実践することによって、自分も自然の一部であることを実感し、環境に配慮したライフスタイルを行なう人が増えるかもしれません。
現在は、それぞれ個々で動いている都市農園ですが、ITを活用し、それらをネットワークとしてつなげ、参加可能な農園をWeb上でマッピングしたり、全体でのCO2吸収量や、栽培している野菜の総量や自給率を可視化したりする研究も始まっています。
サウナやソロキャンプの次は、気候変動解決とウェルビーイングにつながるアーバンファーミングが、粋なポップカルチャーとしてブームになるかもしれません。SDGsにますます関心が高まっているこの機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。
取材・文/井上寛人(いのうえ ひろと)
慶應義塾大学大学院SDM研究科 1年/Urban Famer/東京都環境局 DO!NUTS TOKYO 若者アンバサダー