水質汚染問題を内部告発した女性社員3人の痛快ストーリー『サムジンカンパニー1995』
1995年の韓国。高い実務能力があるのにお茶くみや補助的な仕事しか得られない高卒の女性3人が、自社の不祥事を知って立ち上がる。環境だけでなく雇用、平等の問題まで扱った本作は、1991年に韓国で実際に起きた水質汚染事件をモデルしたストーリーに、「それぞれの人のなかに眠る“ファイト”を描きたかった」という監督の想いを込めた、熱くて楽しいエンターテインメント作品だ。
会社が隠蔽していた不法汚水排出の事実を知リ、真相の解明に乗り出すジャヨン役に『グエムル-漢江の怪物-』(2006)、『スノー・ピアサー』(2013)などポン・ジュノ作品への出演も多いコ・アソン。優れた企画力があっても高卒を理由に雑用係に甘んじているユナ役には、この作品で2021年青龍映画賞助演女優賞を受賞したイ・ソム。数学オリンピックの優勝者なのにやはり高卒ということで末端の経理OLとして働いているボラム役には、人気オーディション番組出身のパク・ヘスが好演。徹底的にリサーチして作られた、1995年を見事に再現したオフィスの風景や、当時の流行を取り入れた衣装とヘアメイクも必見だ。
優秀でも進学できない人がいる現実を理解できていなかったり、女性が補助的な仕事をしているのはすべて能力の問題だと誤解していたりする人が(男性だけでなく女性自身も)現代よりずっと多かった90年代。一方で、ジャヨンをちゃんと先輩と呼んで尊重する後輩や、ボラムに才能を活かす生き方を勧める上司など、理解ある男性も多くはないが存在している。勇気をもって立ち上がったヒロインたちと同世代の女性だけでなく、老若男女すべての人に観てもらいたい一本である。(水谷美紀)
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7月9日(金)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
配給:ツイン
脚色/監督 イ・ジョンピル
出演:コ・アソン、イ・ソム、パク・ヘス、デヴィッド・マクイニス、キム・ウォネ、チョ・ヒョンチョル、ぺ・へソン、キム・ジョンス、ペク・ヒョンジン、パク・クニョン、イ・ソンオク、イ・ボンリョン、タイラー・ラッシュ
脚本:ホン・スヨン ソン・ミ
2020年/韓国/カラー/110分
原題:삼진그룹 영어토익반 (SAMJIN COMPANY ENGLISH CLASS)