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ドイツのサステナブルをめぐる旅④ 鉄鋼王クルップが遺した迎賓館「ヴィラ・ヒューゲル」の威容
ドイツのサステナブルをめぐる旅④ 鉄鋼王クルップが遺した迎賓館「ヴィラ・ヒューゲル」の威容
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ドイツのサステナブルをめぐる旅④ 鉄鋼王クルップが遺した迎賓館「ヴィラ・ヒューゲル」の威容

環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2021でも世界6位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、そんなドイツのサステナブルを巡ってレポートします。第4回目のテーマは、19〜20世紀にかけてドイツ西部の街エッセンをルール工業地帯の中心都市として発展させ、ドイツの産業界に強大な影響力を持ったクルップ社。閉鎖された巨大な製鉄所や炭鉱、ガスタンクなどが博物館や芸術文化活動の拠点にコンバージョン(転換)され、観光と雇用の両面で地域再生に貢献するようすをリポートします。

市民のため田園都市「マルガレーテン・ヘーエ」をつくる

ドイツ最大の鉄鋼企業であり、現代でも巨大なコングロマリットを形成しているクルップ社。その創業一族が従業員のために建設した住宅地や、一族の住居兼迎賓館 「ヴィラ・ヒューゲル」は、いまも当時の姿のまま残されている。

クルップ社では、エッセン市内に多数の社宅(住宅街)を建設している。とくに有名なのが、3代目フリードリヒ・アルフレート・クルップの妻マルガレーテの名を冠した田園都市「マルガレーテン・ヘーエ」。1910〜1938年にかけて、1660戸が完成した。第二次世界大戦によって多くの建物が破壊されたが、その後、住民の自助によって当初の姿に再建され、いまは保存地区に指定されている。

マルガレーテン・ヘーエは娘の結婚を記念して、社宅ではなく公務員や市民のための住宅街としてつくられ、エッセン市に寄贈された。都市の真ん中にありながら緑豊かな閑静な住宅街で、どこか気品が漂っている。景観には統一感があるが、アーチ型の切妻や石膏、天然石の土台など、さまざまな素材やデザインを使用して、それぞれの家に個性を与えている。緑と渓谷に隣接する「人に優しい集落建設」の代表例とされ、建設から1世紀近くたったいまでも、人々につかい続けられている。

ルール川ほとりの大邸宅! ヴィラ・ヒューゲル

ルール地方の中心都市エッセンの南に位置する鉄鋼財閥クルップ社のお城のような壮麗な邸宅「ヴィラ・ヒューゲル」。1873年に建築された8100㎡の大邸宅で、1945年まで3代にわたって一族の住居として、その後は皇帝や国王、世界中の政治家、科学者や芸術家を招きもてなす迎賓館として使用されていた。東京ドーム6個分という広大な庭の真ん中に威風堂々、269室の客室を構える屋敷は、ドイツの工業化時代繁栄の象徴といわれ、一般公開もされている。

アルフレート・クルップは、父の小さな工房を受け継ぎ、ドイツ最大の鉄鋼製造企業を築き上げた。高性能の銃や大砲を軍に供給し、「大砲王」とも呼ばれた人物でもある。莫大な資産は病院の建設やインフラ整備などにも費やされ、エッセン市民の生活を豊かにした。

エントランスロビーには一族の大きな肖像画が飾られ、当時のまま残るオリジナルの調度品や見事なゴブラン織りのタペストリーで飾られた迎賓室など、クルップ家の繁栄ぶりが隅々までうかがえる。アーチ状のガラス屋根が目を惹く2階のホールでは、ゲストをもてなすための演劇が催されたという。

1953年に一般公開されてからは、クリスチャン・ディオールのファッションショーをはじめ、さまざまな展覧会やコンサートの場としても活用されるようになった。そんなヴィラ・ヒューゲルは2023年に150周年を迎える。歴史を保存・展示するだけでなく、新境地を開こうと、音楽やアート、パフォーマンスなどさまざまなジャンルに活用され、現代の人々に文化財に親しむ機会を供給、伝統文化のバトンを次世代へとつないでいる。

text:鈴木博美 協力:ドイツ観光局

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