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鈴木優香が旅する、太平洋の“東京島” vol.3【式根島】
鈴木優香が旅する、太平洋の“東京島” vol.3【式根島】
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鈴木優香が旅する、太平洋の“東京島” vol.3【式根島】

海を変えるためにできること。身近な海について知ることもそのひとつ。ビルに囲まれた東京の海。でもその少しだけ先に、青く澄み渡り、イルカが遊ぶ海があることを知っていますか? 自分が暮らす街とつながっている「私たちの海」に直接触れたくて、デザイナーで山岳収集家の鈴木優香さんが伊豆諸島の島々を旅しました。

伊豆諸島は太平洋に位置する東京都の島嶼部(とうしょぶ)で、無人島を含めるとその数は100以上。人が定住しているのは大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島の9島。東海汽船のフェリーを乗り継いで旅ができる5島を紹介します。今回は式根島へ!

▼前回の「利島」はこちら

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海から湧く名湯
式根島はシー温泉パラダイス!

海と一体になったような感覚になる足付温泉。満潮時以外は湯温が高めなので、ときを見計らって。混浴のため水着着用

伊豆諸島の旅で、鈴木さんがとりわけ楽しみにしていたのが式根島。この島は海辺に何ヵ所か天然の温泉が湧いていて、潮の干満を頭に入れて、湯量と湯加減を見極めないといけないというワイルドな温泉もある。24時間、いつでも最高の湯加減をキープしてくれる屋内の温泉とはワケが違うのだ。

港に着くや、鈴木さんが一番気になっていたという足付温泉へ。満潮時は波しぶきが上がるような波打ち際にある温泉で、潮溜まりなのか温泉なのか、なかなか見分けがつかないほど(このときは運よく先客のお兄さんがいて助かった!)。

この旅で一番食べたのがパッションフルーツ。各島で見つけるたびに買い、常にポケットにしのばせていた

大きな岩でフチどられた天然の浴槽。湯に触れてみると「あっつい!」と声が出てしまうほどの高温で、鈴木さんも一瞬ひるんだけれど、先客のお兄さんいわく「場所によってまったく湯温が違うんですよ。海水が流れ込んでるこのあたりは、いい湯加減」と場所を譲ってくれた。たしかに、いい湯だな。

「湯に浸かると目線がちょうど海面くらいになって、海に入ってるみたい」と鈴木さん。湯を舐めてみるとしょっぱくて、なんだか不思議な気分になる。

次は少し歩いて、島のなかでもワイルドといわれる地鉈温泉をはしご。源泉が80℃の超高温温泉で、満潮前後の数時間しか熱くて入浴できないとか。玄人向けの温泉に挑んだ素人(鈴木さん)は、やはり時間を誤り、熱湯風呂に涙することになったのだった。トホホ……。

地鉈温泉の湯加減を蒸気の温度で見極められる「湯加減の穴」

帰り道、温泉に続く道路の石壁にローマの真実の口みたいな穴を見つけたのだけれど、実はこれ、地鉈温泉の湯温を確認するための「湯加減の穴」。手を入れれば、温泉から伝わる蒸気の熱さを確認できるそうで、玄人たちは「あ~、いまはダメだねえ……」なんて手を出し入れしている。

池村商店の揚げパンは運よく揚げたてだった。海水浴のおやつにしようと思っていたのに、ガマンできなくてすぐ食べてしまった……

潮の満ち引きや、湧き出る湯の加減を、こんなふうに体で感じて毎日を過ごしている人々がいる。しかも、ここは東京なんだよなと思うと、都会での暮らしがどこか味気ないもののように思えてしまう。便利さはときに、暮らしにある楽しみや自然との距離感をぼんやりさせてしまうのかもしれない。

扇形の泊海水浴場は白砂が特長
ビーチに並ぶレトロなパラソル。昭和生まれにはたまらない

午後は体を冷ましに海へ。式根島には島のあちこちに海水浴場があって、伊豆諸島でも穏やかで遊びやすいとのこと。なかでも水がキレイという北部の泊海水浴場は、白砂にエメラルドグリーンの海、カラフルなビーチパラソル並ぶ「ザ・夏休み」的なビーチで、高台からその光景を見たときには歓声を上げてしまった。

泊海水浴場で思い切り泳いだ後は、夏の間だけ開店する海の家「POPEYE」でかき氷や焼きそばなどを。パラソルや浮き輪のレンタルもあるので、手ぶらでふらっと出かけられるのがいい

地元の子どもたちに混じって海水浴をしていると、もう夕方。こんなにヘトヘトになるまで海で遊んだのは、いつぶりだろう。潮まみれになって民宿に帰ると「今日はいいアジが釣れたよ」とご主人がクーラーボックスを見せてくれた。海のある夏休みを、いつから忘れてしまったのだろうと思う。幼い頃は身近にあったはずなのに。都心の海でもこんなすてきな夏休みを過ごせるなら、もっと東京という街を好きになれるような気がした。

式根島を出発する朝。港に地元の子どもたちが集まって、太鼓と笛の演奏で見送ってくれた

SHIKINEJIMA memo

船/東京・竹芝客船ターミナルから大型客船で約9時間、ジェット船で約2時間20分 航空便はなし レンタカー/外周約12km。島を一周するには車が必要。「式根島モータース」など数社あり レンタサイクル/坂が多いのでぜひ電動を選んで! 多くの宿で自転車の貸し出しがあるほか、レンタサイクル会社もあり
宿泊施設/民宿のほか、洋風の愛らしいホテル「プチホテル ラ・メール SHIKINE」やグランピング施設「凪グランピング」なども グルメ/惣菜各種が揃う「池村商店」は焼きたてパンがおいしい。こんがりふわふわの揚げパンが最高 ショッピング/「式根島おさかなサービス」では島産の魚介の加工品が揃う
式根島観光協会☎04992-7-0170

▼次回は「新島」へ!

PROFILE

鈴木優香/Yuka Suzuki
デザイナー。山岳収集家。1986年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。アウトドアブランドの商品企画部勤務を経て、デザイナーとして独立。現在は山で撮影した風景をハンカチに仕立てていくプロジェクト「MOUNTAIN COLLECTOR」を手がける。

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
※掲載の内容が変更になる場合がありますので、おでかけ前にご確認ください。伊豆諸島へ向かう大型客船、ジェット船は季節や天候などによってかかる時間が変わりますが、ここでは夏季の一般的な所要時間を掲載しています。詳しい運航状況や時間については東海汽船のHPなどをご覧ください。
Photo:Mina Soma Text & Edit:Yuriko Kobayashi Model:Yuka Suzuki(MOUNTAIN COLLECTOR)
Composition:林愛子

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