「高知のモーニング」で満腹後は“仁淀ブルー”に酔いしれ、土佐和紙を漉き、「牧野植物園」でつかの間の避暑を
近年、人気の旅行先としてアツイ注目を集めている高知県。昨年から、「極上の田舎、高知。」をコンセプトに、土地の魅力をアピールするキャンペーンが展開されています。その一環としてつくられたのが、高知の魅力満載の「高知かるた」。46枚の札には、高知の名所や名物のほか、さまざまな高知“あるある”が凝縮されています。キュートなイラストが描かれた「高知かるた」をガイドに、高知の魅力を探りに出かけました。第3回は、土佐っ子が誇る高知式のモーニングや土佐和紙の紙すきなど、他地域にはない高知カルチャーをご紹介します。
トリプル炭水化物のパワフルモーニング
NHKの連続テレビ小説「あんぱん」の舞台として、がぜん注目が集まっている高知県。カツオのタタキなどのグルメ、ユズなどの特産品に桂浜と坂本龍馬像、高知城、四万十川などの名所があり、その魅力にハマる人が続出しているという。前述の「高知かるた」には、地元の人びとや高知ファンによるディープな情報が満載。たとえば「わ」の札には、「和洋中 さながら皿鉢の モーニング」とある。ちなみに皿鉢(さわち)とは、大皿に高知の山海の恵みを盛り合わせた豪快かつ豪華な“ハレの日”のごちそうだ。
人口1000人あたりの喫茶店数が全国1位という高知県では、朝、コーヒーや紅茶などを喫茶で注文するだけで、食事などあれこれついてくる「モーニングセット」文化が盛んらしい。さっそく、かるたにある和洋中モーニングを味わいに、観光名所はりまや橋近くにある老舗「喫茶デポー 京町店」を訪ねた。

高知市の中心地にある喫茶デポー。1980(昭和55)年の開店以来、市民に愛され続けている
もともと高知は漁業や農業に携わる人が多く、朝早くから身体を動かす習慣があった。さらに共働き夫婦も多かったため、朝ごはん=外食の文化が根づいたという。そこで50年ほど前に「朝から炭水化物をしっかり摂ろう!」とばかりに、おむすびとパンにおかずを合わせたデポーのモーニングが誕生。当初は「和洋モーニング」と呼んでいたが、十数年前に「高知のモーニング」と名をあらため、地域の名物となった。モーニングに味噌汁をつけるスタイルも、このデポーが先がけだったとか。
運ばれてきた「高知のモーニングPart4」は、トーストとふりかけご飯、ナポリタンとトリプル炭水化物!サラダに味噌汁、オムレツにゆで卵(卵もダブル!)、小鉢などもつくゴージャスな内容だ。昭和テイストの喫茶店で、地元の人たちに混じっていただく高知モーニング。心も身体もすっかり満足し、かるた「る」の札に導かれて高知市から西に向かう。

仁淀川(によどがわ)は愛媛県と高知県を流れる一級河川。吉野川、四万十川につぐ四国第3の河川だ
「水質がもっとも良好な河川」に選ばれている仁淀川は、高知かるたに「る 瑠璃・空・紺 異なる表情 仁淀ブルー」と詠まれている。日高村と、いの町の境を流れる仁淀川中流域に架けられた「名越屋沈下橋(なごや・ちんかばし)」は、大量の降雨で川が増水すると水中に沈んでしまう沈下橋のひとつ。沈んだときに漂流物や水圧で破損しないよう、欄干がないのが特徴だ。仁淀川の澄んだ水面を見ながら、ゆったり散策……と思いきや、手すりがなく幅も狭い橋を歩いて渡るのはなかなかスリリング。清流を優雅に泳ぐ鯉たちと対照的に、おっかなびっくり渡りきった。
続いて、仁淀川のほとりにある「土佐和紙工芸村くらうど」(いの町)内のレストランでランチタイム。柚子をつかったドリンクに高知県産の食材を使ったコース料理など、洗練されたフレンチに大満足!
「くらうど」は宿泊もできる道の駅で、紙すきや草木染め、はた織り体験、里山散策などのアクティビティが楽しめる。なかでも人気なのが、1000年以上の歴史をもつ土佐和紙がつくれる紙漉(す)き体験。「す 透きとおる 清流のごとき 土佐の和紙」と、高知かるたでもしっかりフォローされている。

紙すき体験では、名刺やハガキ、色紙用など好きなサイズを選んで和紙がつくれる
紙を漉く方法は「流し漉き」と「溜め漉き」の2種類があり、日本で発展したのは「流し漉き」。土佐和紙もこの方法でつくられ、1000年単位でもつ(保存できる)という、丈夫で分厚い紙ができあがる。簀桁(すけた)という道具をつかって、紙の原料が入った液をすくって持ち上げ、水を切ればOK。あっという間に和紙の原型ができ、感動してしまった。

季節の草花や飾りを配置して乾かせば、世界に一枚しかない色紙が完成
朝ドラファン必訪の植物園
放送中の連続テレビ小説「あんぱん」のモデルとなった、「アンパンマン」の作者やなせたかしとその妻・暢(のぶ)の出身地、高知県。同じ連続テレビ小説でも2023年には、高知県出身の植物学者、牧野富太郎をモデルにした「らんまん」が放送された。高知市中心部から車で約20分のところにある「高知県立牧野植物園」は、日本の植物分類学の父といわれる牧野博士の功績をたたえ、世界に広めるためにできた植物園。3000種類以上が育つ、植物ファン、朝ドラファン、どちらも必訪のスポットだ。

牧野博士像とその業績を称える高知かるた。広大な園内の散策は最高のリフレッシュになる

牧野博士ゆかりの野生植物が育つ牧野植物園では、博士が愛したバイカオウレンも見られる。1月下旬をピークに、白く可憐な群落が広がるという
五台山の起伏を活かしてつくられた牧野植物園は、植物が実際に自然のなかで生育している環境を再現。美しく整えられた状態ではなく、本来の姿を“生きた標本”として提示する。牧野博士が亡くなった翌年(1958年)に開園、個人の名前がついた公的植物園は国内ではここだけだという。無料区間の「土佐の植物生態園」には、標高1000m以上の山地から、丘陵地、人里、海岸にいたるまでの土佐の植生を再現。詳しい解説が添えられており、見応え十分だ。

植物園から市街地と太平洋を一望。里山を散策しながら植物について学べる、気持ちのよいスポットだ
山の稜線になじむように建てられた「牧野富太郎記念館」の展示館では、博士の生涯や遺品などを展示。博士が描いた精巧な植物図がたくさん見られるほか、中庭には博士ゆかりの約250種類が植栽されており、「らんまん」ファンは感慨深いだろう。南園では、カラカサタケというキノコを手にした牧野像がお出迎え。南国の花が咲き乱れる温室もあり、ワビサビを感じる高知の花々とは対象的な、華やかな植物が観賞できる。
高知かるたには、「ま まちなかで 出会う自然は 牧野ワールド」とある。この植物園を訪れてから高知を旅すれば、「あ、あの花は牧野博士が新種として発表したビロードムラサキだ!」などと、うれしい発見ができるかもしれない。
──次回は、高知の“暮らし”にフォーカスします──
Photo & Text:萩原はるな
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