西オーストラリア「ロットネスト島」で“世界一幸せな動物”クオッカと戯れ、テントリゾートに眠る
雄大な自然を気軽に満喫できる西オーストラリア州。なかでも、州都パースの沖合の島「ロットネスト島」は、訪れる人々を魅了してやまない人気スポットです。この島の青く透き通った海と白い砂浜、ダイナミックな海岸線、そして“世界一幸せな動物”クオッカをはじめとする野生生物たちが、あなたを迎えてくれます──。
車乗り入れ禁止の島でサイクリング&トレッキングを

ロットネスト島は先住民ヌガー族の言葉で「ワジュマップ」。「水の向こうの精霊の宿る場所」という意味だそうだ
ロットネスト島は、パースの沖合約19kmに位置する美しい島。先住民ヌガー族の聖地でもある。19世紀の植民地化以降は、アボリジナルの少年や男性を収容する刑務所、強制労働キャンプとしてつかわれていた悲しい歴史を持つ。人気の観光地となったいまも、その歴史を伝え、ヌガー族の文化と尊厳を守る取り組みを展開。旅行客も、敬意と理解とともにこの島と向き合うよう求められる。

サイクリングで大自然を満喫できるルートも、いくつも整備されている
島全体がA級自然保護区の国立公園に指定され、一般車両の乗り入れは禁止されている。島内の移動は自転車、周回バスが基本。トレッキングルートが何本も整備されており、自分のペースで歩きながら自然を満喫できる。ハイキングツアーやガイドつきトレッキングに参加すれば、島の歴史や自然について、より深く学べるだろう。

最も人気の観光スポット、ピンキービーチとバサースト灯台
63ヵ所のビーチと20ヵ所の入り江をもつロットネスト島は、ビーチ好きにとってはパラダイス。どこまでも透明な海水。白砂の浜が広がり、シュノーケリングやダイビング、カヤックなど多彩なマリンアクティビティが楽しめる。この美しい海を守るため「マリーンサンクチュアリーゾーン(海洋保護区)」が設けられており、サンゴ礁や群生する海草、魚類、ウミガメ、イルカなど、多様な海洋生物が安全に暮らせる環境が保たれている。持続可能な観光と自然保護の両立を目指し、訪れる人々にも保護区のルール遵守が呼びかけられている。
クオッカに、たちまち心を奪われた!

島のアイドルのクオッカ。日中はレストラン周辺に多く集まっている
ロットネスト島の一番の人気者といえば、小さな有袋動物、クオッカ。常に笑っているような上がった口角が特徴で、「世界一幸せな動物」と称される。島のあちこちで見られ、人なつっこく警戒心が薄いため、どんどん人に近づいてくる。その姿を一度見たら、愛らしい表情と仕草に、すっかり心を奪われてしまうはずだ。クオッカと自撮りする観光客は多いが、あくまで彼らは野生動物。食べ物を与えたり、体に触ったりすることは禁じられている。やさしい距離感で見守るのがルールだ。

83棟のエコテントを備える「ディスカバリーリゾート」
ピンキービーチの目の前にある「ディスカバリーリゾート」は、環境への負荷を最小限に抑えたエコリゾート。天然木とキャンバス地からなるテントのホテルで、エアコンはなく、ゲストは皆、自然の風を楽しむ。冬場はけっこう冷えるが、電気毛布と電気ストーブが用意されるから快適だ。テントにはベッドのほか、トイレやシャワーもある。リゾート内にはレストランやバー、プール、食材を持ち込んで料理できるBBQエリアも整っている。
夜になると、夜行性のクオッカたちが活発に動きはじめ、ふとした瞬間にひょっこり顔を見せてくれる。日中もたくさんのクオッカに出会えるが、夜のロットネスト島はまさに“クオッカ天国”。世俗を離れ、クオッカと一緒に満天の星と波の音に包まれる──そんな贅沢なひとときが過ごせるのだ。

動物たちに食べられないよう保護されている苗木
島の生態系を守るため、ロットネスト島は常に4万本以上の在来種の苗木を育てている。この取り組みを支えているのが、年間を通じて活動するボランティアチームだ。彼らの尽力によって、島の豊かな景観が守られているのだ。
この島は、早くから再生可能エネルギーの導入や資源の自給自足にも取り組んできた。海岸でボーリングされた塩水は、逆浸透膜でろ過され、飲料水(真水)に変換される。この水は、島固有の動植物保護施設はじめ、観光客の宿泊施設やビーチのトイレ、シャワーといった観光インフラにも供給され、島の暮らしを支えている。
最近は太陽光発電に加えて風力タービンの活用も進めており、島をあげてCO₂排出量を大幅に削減しようとしている。年間平均約1600トンものCO₂排出量を削減中とのデータもあり、これはおよそ350台の自動車が道路から消えるのと同じCO₂削減効果だ。

ロットネスト島は、ただの楽園ではない。そこにあるのは、持続可能な島のよきサンプルだ。クオッカらとともに過ごしながら、日本の、世界の未来について思いをはせてみるのも悪くない。
Text:鈴木博美 協力:西オーストラリア州政府観光局、全日本空輸
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