Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

モーゼル川沿いの小さなまち、ドイツ「トラーベン・トラーバッハ」のサステナブルなワインづくり
モーゼル川沿いの小さなまち、ドイツ「トラーベン・トラーバッハ」のサステナブルなワインづくり
TRAVEL

モーゼル川沿いの小さなまち、ドイツ「トラーベン・トラーバッハ」のサステナブルなワインづくり

穏やかな流れと、肥沃な土壌を育むことから「母なる川」と呼ばれているモーゼル川。沿岸のモーゼル地方はドイツ最古のワイン産地として知られており、渓谷の急斜面にブドウ畑が広がる美しい光景が見られます。そんな川沿いにひっそりと佇む小さなまちが、トラーベン・トラーバッハ。自然と人、ワインがつながり合っている地域です。

ドイツの隠れたワインの里、トラーベン・トラーバッハ

前話のトリーアから鉄道で約1時間20分。トラーベン・トラーバッハのワイン産業は、ローマ時代から中世まで約 2000 年にわたる歴史を持っている。19世紀から20世紀初頭にかけては、ボルドーに次ぐヨーロッパ第2位のワイン貿易の中心地として栄えた。その背景には、ライン川流域原産の白ブドウをつかったリースリングワインの高い需要と、イギリスをはじめとする海外への輸出量の多さがある。かつては100社以上ものワイン会社がこの地に集まり、おおいに繁栄した。

地下世界に広がるかつての貯蔵庫

それにともない、トラーベン・トラーバッハの地下にはワイン貯蔵庫網が築かれ、いまも100mを超える通路や、一部が2階建てになっている広大な地下空間が残っている。ワインとともに歩んだこのまちの歴史を、ひんやりした地下でも感じられるのだ。現在、この地下貯蔵庫は駐車場やイベントスペースとして活用されている。毎年12月には幻想的な「地下クリスマスマーケット」が開催され、冬のトラーベン・トラーバッハを彩る。

「ワイン商人たちが築いた富は、このまちの建築様式にも色濃く影響を与えています。その名残りはいまも随所に見られ、アール・ヌーヴォー様式の華やかな邸宅や広大なワイナリーが立ち並んでいます」とは、地元ガイドのペーター・ストークさん。

モーゼル川沿いに佇む、1903年創業の「ホテル ベルビュー」は、かつては伯爵や男爵などVIPの定宿だった。華やかな「ベル・エポック」時代の優雅な空気をいまに伝えている。

小さなまちながら、ワインバーやレストランがたくさんあるのもトラーベン・トラーバッハの魅力。1890年築のワイン商人の別荘を改装した「Die Mosel Vinothek & Winebar」は、リラックスした雰囲気のなか、日本、スペイン、ペルーなどの各国料理から着想を得たタパス料理が楽しめる。もちろんワインも自慢で、モーゼル産を中心に200種類以上がそろっている。テラス席に座ると、目の前に美しいモーゼル川が。ああ、ここに来てよかったとつくづく思う。

モーゼル川の右岸、トラーバッハの中心部から、両側にブドウ畑が広がる道を歩くこと約30分。まちを見下ろす高台に、グレーヴェンブルク城の廃墟がひっそり残されている。城は1350年に築かれ、何度も襲撃を受けながらまちを見守ってきた。ところが1735年、フランス軍によって爆破され、廃墟になってしまったのだ。いまは、かつての司令官邸宅の西側ファサードだけが姿をとどめている。だが、この高台は、モーゼル渓谷の雄大な斜面にブドウ畑が連なるさまを見下ろすには絶好の場所だ。

気候変動による気温上昇や水不足で、モーゼル地方のブドウ畑の環境も厳しくなりつつある。持続可能なブドウ栽培と生物多様性の保全は、この地でも重要なテーマとなっているのだ。そんななか、冷涼な気候と急斜面特有のテロワール(ブドウ畑の自然環境)が生む、モーゼルワインの適度な酸味と豊かな味わいを守ろうと、生産者たちは努力を続けている。自然の力を尊重し、介入を最小限に抑えつつも、有機農法やバイオダイナミック農法にも積極的に取り組み、この地のブドウとワインの味を次世代につないでいる。

取材協力:ドイツ観光局 Photo & Text:鈴木博美

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!