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子どものため、だけじゃない!NPO法人「むすびえ」が描く「こども食堂」の未来
子どものため、だけじゃない!NPO法人「むすびえ」が描く「こども食堂」の未来
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子どものため、だけじゃない!NPO法人「むすびえ」が描く「こども食堂」の未来

食べることは、生きる基本。知っておきたい食の課題と、解決に向けた取り組みを学びましょう。今回は「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」理事長の湯浅誠さんにお話を伺いました。

子どもと食が中心にある
地域の多世代交流の場

「えまいまキッズカフェ」に集まる地域の人々

「わーい! カレーだ!」。漂うおいしそうな香りに、笑顔になる子どもたち。手を引く家族の表情も穏やかだ。ある母親は「休日にお昼をつくらなくていいんですから(笑)。その時間のぶん、子どもとも遊べますし、いろいろな面でありがたいですね」と話す。

事前予約した人に鯛ハンバーグ入りカレーを無料配布

東京・亀有にある「えまいまキッズカフェ」が月に一度、週末に開くこども食堂では、家族分の昼ごはんを無料配布している。この日は、葛飾の老舗「旭カレールウ」のカレー粉でつくったカレーに、愛媛県宇和島産の鯛ハンバーグをトッピング。どちらも無償で届けてもらったものだ。

キッチンカーから手渡し。準備した160食は夕方になくなった

カレーを受け取った子どもたちは、駄菓子のつかみ取りコーナーへ直行! その隣にはポケモンシールラリーのブースもあって、キラキラとした目でシールをもらっている。子どものうれしそうな顔を見て、大人たちにも笑みが。にぎやかな空気は、地域のバザーや町内会の夏祭りに似ている。

こども食堂は親にとっても助かる存在。食事の準備をしないことで、家族の時間にゆとりが

「こども食堂ってこんな場所なんです。決して、お腹を空かせた子どもが集まる福祉施設ではない。そのことをまず知ってもらいたいですね」

活動を支えるのは地域のボランティア

そう話すのは「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」の理事長・湯浅誠さん。NPO法人の立場から、日本各地のこども食堂を支援している。

開催の目印はキッチンカー。古着などを無料配布することも

この風景を見ると、こども食堂とは? と疑問が湧く人も多いだろう。学童保育と似ているが、学童は行政、こども食堂は民間。だから、活動ルールはない。自宅を開放してこども食堂としている人もいるし、週2回の開催もあれば、月1回の開催もある。共通しているのは、公園のように誰もが自由に立ち寄れること。所得や年齢の制限はない。

親が安らげることも大切

「つかみどころがないように感じるかもしれませんが、喫茶店や書店と同じだと思ってもらえたら。名称は同じでも、営業スタイルは店主によって違いますよね。民間の活動はバリエーションがあるほうがいいし、ルールがないからこそ『やってみよう』と手を挙げる人も出てくる。2021年10月現在、日本全国のこども食堂は4960ヵ所。4年間で16倍になっているんです」

看板を描くのは現役デザイナーのお父さんだ

コロナ禍の期間中は活動内容を食事の配布のみに留めているところが多かったが、それ以前は大勢でワイワイ食事をしたり、そのまま遊びが始まったり。年上の子どもが、幼い子の宿題の面倒を見ることもあった。地域のお年寄りが訪れて子どもの話し相手になることも。食事に関しては、子どもは無料、大人は数百円と設定しているところが多く、ともに食卓を囲めば高齢者の孤食も防げる。

企業から届いた支援グッズ。落書き帳や鉛筆などが寄付されることもある

「つまり、多世代交流の場なんです。地方では過疎化が急速に進んでいますが、そこに人々の交流を生み出す役割もある」

気軽に立ち寄れる空気は、貧困の子どもを救うためにも重要だと湯浅さん。

えまいまキッズカフェの前には無料で遊べるゲーム機が置かれている。お菓子がもらえて、ゲームができる場所、と思っている子も多い。子どもが安心して訪れられる場所があることで、より子育てしやすい地域になる

「夕食をひとりで食べている子ども。家で手づくりの料理を食べたことがない子ども。外からはわかりづらい、そうした黄色信号の子どもをサポートするには、入りやすい空気が大切。困った人が行くところとなった時点で、子どもは寄り付きませんから。自然と遊びに来てくれたときの、ふとした会話で家庭の事情に気づく。すると、寄り添えることもある。週に数回の活動では、子どもの貧困の積極的な解決にはなりませんが、おせっかいの延長として関わることが、空腹だけでなく精神面でも支えになる。それが子どもを救うことにつながると思っています」

PROFILE

湯浅誠 ゆあさ・まこと
NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。1990年代よりホームレス支援に従事。2009年から足掛け3年、内閣府参与を務める。民官協働を掲げ、社会活動を続ける。

NPO法人全国こども食堂 支援センター・むすびえ
全国のこども食堂を応援するNPO法人。子ども食堂の立ち上げ支援や、企業や団体との協議、集まった寄付の配布、子どもを取り巻く状況の調査も行う。musubie.org

●情報は、『FRaU SDGs MOOK FOOD』発売時点のものです(2021年10月)。
Photo:Kiyoko Eto , musubie Text & Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子

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