荻上チキが選ぶ「社会と数字のカラクリがわかる経済学の3冊」
自分だけが心地よくなるためのお金ではなく、社会や環境、その先にある未来をも豊かにするお金へ。お金のつかい方やその流れを変えることは、世界のさまざまな課題解決を後押しする大きな力になると多くの人が気づき始めています。今回は、お金の本当の姿がわかる本を、評論家の荻上チキさんに選んでいただきました。
「経済と聞いて何を連想するか。お金儲けとか、株の話とか、はたまた国家予算とか? 経済は人のやる気や幸福度だけでなく、なかなか解消されない貧困や自殺率の問題とも深く関わってきます。そうした社会と数字のカラクリを読み解くセンスを身につけることが、環境改善、ひいてはSDGsにつながる。そのために役立つ本をセレクトしました(荻上チキ)」
『21世紀の資本』
トマ・ピケティ/著 山形浩生・他/訳
世界の格差は解消されず、富の自然分配も起きない。そんな実態をデータから実証し、大胆な政策提言まで行う一冊。「未来をよくするために経済学をつかうのだ」という、強いパッションが感じられて、好き。(みすず書房)
『行動経済学の使い方』
大竹文雄/著
社会心理学と経済学とが交差する行動経済学。「Aとは何か」「Aとは善か」という問いではなく、「人をAという状態に誘導するには何が効くか」という問いを立て、実験と証明を重ねていく、発展著しい分野。(岩波新書)
『クルーグマン教授の経済入門』
ポール・クルーグマン/著 山形浩生/訳
「高校生でもわかる○○」的な本は多々あれど、結局は優れた教科書に敵わない。「新しい資本主義だ」とかいう議論に喜んでいた大学時代に読み、「その前に近代科学を知らなくてはな」と反省しました。(ちくま学芸文庫)
PROFILE
荻上チキ おぎうえ・ちき
評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、カルチャーまで幅広く論じる。著書に『ウェブ炎上』(筑摩書房)など多数。TBSラジオ「荻上チキ・ Session」に出演中。
●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Text:Marie Takada Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子
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