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「カワイイから」着たくなるTシャツで、チャリティを身近に【前編】
「カワイイから」着たくなるTシャツで、チャリティを身近に【前編】
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「カワイイから」着たくなるTシャツで、チャリティを身近に【前編】

「チャリティTシャツ」というと、ふだん着るには抵抗のある、ちょっとダサいイメージがありませんか? ところが、おしゃれなデザインにMADE IN JAPANクオリティで、いつでも身につけたくなる服を手がけるチャリティブランドが、京都にありました。「チャリティをもっと身近に」を合い言葉とする、同ブランドの活動を紹介します。

チャリティとは気づかれない、おしゃれなアイテム

毎週毎週、新しいデザインのチャリティアイテムを展開している京都のファッションブランド「JAMMIN(ジャミン)」。「チャリティだから」ではなく、「カッコいいから」「ものがいいから」手に取ってもらうことを目指しているというオンラインショップには、チャリティだと言われなければ気づかない、おしゃれなデザインのTシャツや雑貨が並ぶ。

JAMMINのオンラインショップ。Tシャツを中心に、エコバッグなどのアイテムが並ぶ

チャリティの仕組みはいたってシンプル。Tシャツを買うと、1点につき700円がさまざまな社会活動をおこなう団体に寄付される。寄付先は1週間ごとに変わり、環境保護団体から難病支援グループまでと幅広い。それに合わせてTシャツのデザインも変わるのだ。

たとえば4月の第1週は、DV被害を受けた女性にシェルターを提供するNPOへの寄付がおこなわれた。Tシャツには、JAMMINのデザイナーによって描き起こされた、オリジナルのイラストがプリントされる。この週は、シェルターへの避難者が新天地を見つけられるようにとの願いが、「ノアの方舟」の物語になぞらえ、オリーブの枝を加えたハトのイラストで表現されていた。一般的なチャリティTシャツと違って、団体名やロゴなどがプリントされることはない。

寄付先の取り組みからインスパイアされた、オリジナルのイラストとメッセージがデザインされる

「団体名が入ってしまうと、その団体の関係者以外は着にくいですよね。私たちが意識しているのは、一般の方々に『カワイイ』『おしゃれ』って言ってもらえるような、ふだんづかいできるデザインであること。実際に手にしてから、『実はチャリティやったんや』とか、『こんな社会問題があるんや』と知ってもらえるキッカケをつくることなんです」(JAMMINディレクター・山本めぐみさん)

おしゃれなチャリティTシャツというアイデアは、どこから生まれたのだろう。

「『ふだんの暮らしのなかでチャリティーに紐づけられるものはないか』と考えたときに、もっとも可能性を感じたのがアパレルでした。飲食も身近ですけど、たとえば社会問題を表現したハンバーガーといわれても、いまひとつイメージがわかないですよね(笑)」

JAMMINを創業した西田さん(右から2人目)、ディレクターの山本さん(同4人目)らJAMMINのメンバー

こう語るのは、JAMMIN創業者の西田太一さんだ。大学時代に発展途上国を訪れた経験から、社会問題に関わるビジネスをやりたいと思っていた西田さんだが、

「自分自身がNPOを立ち上げて活動するにはノウハウが必要で、なかなかすぐには形にならない。それより、すでに活動している団体を支援したほうが早いと考えました。以来、いろいろな人が気軽に参加できる、ハードルの低いチャリティのかたちを模索して、結果、『Tシャツなら毎日身につけられるし、個性を発揮できるアイテムでもある。みんな楽しんで参加してくれるのでは』と、この企画にたどり着いたんです」(西田さん)

Tシャツは、寄付先の団体と打ち合わせを重ね、活動内容や団体の魅力、主張を織り込みつつ、誰が見てもカッコいいと感じるようなデザインに落とし込む。

「正直、『Tシャツで社会問題を解決するぞ!』みたいな気負いはありません(笑)。それで、団体さんが希望される世界観と、一般的に好まれそうなデザインとのバランスが、うまく取れているのかもしれません」(山本さん)

イラストのラフ画はすべて手描き。表現したいコンセプトに合わせ、きめ細やかにタッチやテイストを変えている

団体側のこだわりが、高評価につながった例もある。飼育鳥の保護団体とコラボしたケースでは、団体側から「ヨウム(鳥の一種)の爪の曲がり方が違う」などの細かい指摘を受け、何度もデザインを修正した。

「その結果、愛鳥家さんたちからの評判がとてもいいデザインになりました。鳥をモチーフにしたグッズは世間にたくさん出回っていますが、詳しい方が見ると、たとえば『顔はインコでも、脚とか爪、尾羽の形がインコではない』というものも少なくないそうで……。コラボデザインは、専門的な知識を持った方がデザインにもしっかりアドバイスをくださって、違和感や間違いのないデザインをつくりあげています」(山本さん)

メイドインジャパンのクオリティと「透明性」

JAMMINのチャリティTシャツの特徴はデザインのほかにもうひとつある。生地を編む、染める、縫製する、プリントする──これらの工程をすべて日本国内でおこなっていることだ。

「創業当初は、ツテを頼って中国の工場に発注していましたが、送られてくるものの2割がB品、いわゆる不良品でした。それだったら僕らの目の届くところで、じっくりコミュニケーションをとりながらつくろうと思いました。そうしながら製造過程の『透明性』を確保しようと」(西田さん)

チャリティ活動には、寄付金の行き先やつかい途に、高い透明性が求められる。

「ならばチャリティTシャツも、どこでどんなふうにつくられているのかがわからないと。いまはできる限り、JAMMINのある関西エリアやその近くの工場に製造をお願いしています。『あのおばちゃんが縫うてくれるんやな』とわかる関係性を大切にしたいんです」(西田さん)

だが、国内製造にこだわればコストは高くなる。JAMMINのベーシックなTシャツは3500円(税込み)。ここから700円が寄付される現在のシステムで、企業として持続可能でいられるのだろうか。

「Tシャツの原価は、大手ブランドの倍以上になってしまっています。それでも利益を出して会社運営ができているのは、廃棄ロスを出さない仕組みにあります」(西田さん) 実はJAMMINのTシャツは、注文があった分だけを、オフィス内にあるプリントスタジオでスタッフが一枚ずつ手刷りしている。コストが抑えられるばかりか、余剰在庫を抱えることもない。

京都のJAMMINスタジオで、国産の無地Tシャツに、1枚ずつ手作業でプリントする

近年、アパレル業界で大量に衣料が廃棄される「ファッションロス」が問題になっている。西田さんは言う。

「僕らは、自分らが損したくない、ものを捨てたくないと思って、知恵を絞ってやれることをやってきただけなんです」

JAMMINのビジネスは、ファッションロス解決の道筋も、われわれに見せてくれているようだ。

――後編に続きますーー

text:櫛田理子

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