間室道子が選ぶ「お金と時間の関係を考えさせられる3冊」
自分だけが心地よくなるためのお金から、社会や環境、その先にある未来をも豊かにするお金へ。お金のつかい方やその流れを変えることは、世界のさまざまな課題解決を後押しする大きな力になると多くの人が気づきはじめています。今回は、お金の本当の姿を知れる本を、書店員の間室道子さんに選んでいただきました。
「お金で買えない代表といえば愛、平和、命ですが、時間もそのひとつ。時間について思いを巡らせると『本当に買えないのか?』『買えないのになぜ人はじたばたするのか?』というスリリングな問いが生まれ、思考をさらに深めてくれます。お金と時間の間で揺れる文豪、女性たち、若い夫婦。彼らが織りなす、どこか滑稽でせつない読み味の本をご紹介(間室道子)」
『〆切本』
左右社編集部/編
作家たちの〆切をめぐるアンソロジー。言い訳を繰り返し、仮病や居留守を使い、編集者の催促から逃げる彼らに「そんな弁解が通るものか!」と驚き、あきれ、笑いたくなります。吉川英治先生のエピソードは必読。(左右社)
『占』
木内昇/著
男の心を知ろうと占い師をハシゴする女性。彼女が得たかったのは「彼の本心を言い当てる言葉」以上に、愛の時間はムダではなかったという保証のようなもの……。占いがテーマの、どれもせつない七編です。(新潮社)
『賢者の贈りもの-O・ヘンリー傑作選Ⅰ-』
O・ヘンリー/著 小川高義/訳
クリスマスプレゼントが買えない貧しい若夫婦。彼らは相手に内緒で、大切なものを売ってお金をつくろうと決意。感動的なのは、生きてきたすべてともいえる「時間」をお金に替えるから。夫婦の深い愛を感じます。(新潮社)
PROFILE
間室道子 まむろ・みちこ
書店員。代官山 蔦屋書店文学担当。書店員キャリア30年以上。「元祖カリスマ書店員」として知られ、さまざまなメディアで本を紹介する。雑誌「婦人画報」など連載多数。
●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Text:Marie Takada Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子
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