実は古い物件のほうがオススメ? 知っておきたい古民家再生Q&A
私たちのふだんの行動軸をベースに、未来を変えるアクションを始めてみませんか? 毎日の暮らしの中でできることから新たな世界での体験まで、できそうなこと、やりたいことから探してみましょう。今回は、古民家再生について、建築家の富樫雅行さんにお話を伺いました。
Q.物件探しのポイントは?
A.お金では買えない価値がどれだけあるか
リノベーションするだけが古民家再生の目的ではありません。だからこそ、お金では買えない部分でいかに価値を見出せるか、その建物で豊かに暮らせるイメージができるかどうかが大事。例えば「自分好みの街並みのなかにある」「近所に素敵なお店がある」といった立地条件や、「歴史を感じる建物」「プロポーションが好き」など、新築にはない魅力に注目してみましょう。
Q.築年数は気にしたほうがいい?
A.気にしなくてOK。むしろ古ければ古いほど良い!
中途半端に新しい建物より、戦前に建てられたような古い建物がおすすめ。古い建物は木や土などの自然素材が使われているので、解体が楽で再利用もしやすいからです。1970年代以降に登場したアスベストやサイディング、石膏ボードなどの新建材は、解体したときに再利用できません。割高な築浅物件をリノベーションするくらいなら、いっそ新築を検討しましょう。
Q.耐震性や耐火性、断熱性を上げることはできる?
A.予算次第で機能性を高めることはできる
耐震性、耐火性、断熱性を高めることはもちろんできます。ただし、古民家のよさを残しながらリノベーションするためには、新しい断熱層の内側に古い建具を入れ込む必要があるので、費用も手間もかかります。長く過ごす居間や寝室を重点的に高断熱にするなど、1回ですべて直さずに、メンテナンスしながら変えていくのもいいかもしれません。
Q.自分でどこまでできる?
A.初心者なら仕上げやペンキ、クロス貼りがおすすめ
最近はDIY情報の発信サイトやYouTube動画などもあるので、ある程度勉強すれば、屋根や構造体、電気や給排水や暖房工事以外であれば自分でもできます。ただし、必ず建築士や工務店、大工さんなど、家の構造がわかる専門家の意見を聞いてから行ってください。ペンキを塗る、表面にクロスを貼るといった仕上げの作業なら、初心者でもやりやすいでしょう。
Q.間取りはどれくらい変えられる?
A.木造の場合、思いのほか自由に変えられる
構造種別によりますが、木造の場合は比較的自由に変えられます。構造上、外すと耐震性が下がってしまう壁や柱もあり、どうしても外したい場合は、他の場所を補強する必要があります。鉄骨や鉄筋コンクリートの場合は柱の位置を変えられないため自由度は低いですが、はずしても問題ない壁もあります。図面を見て判断しなくてはならないので、専門家に相談しましょう。
Q.古民家の雰囲気を保つためのアイデアは?
A.建具の部材やパーツを再利用する
古民家でも、修繕で姿が変わっている場合があります。元の姿を想像し、こうあってほしいというイメージを大切にしながら、足し算や引き算していくといいでしょう。
解体していくうちに出てくる板材や金物、照明、建具など、同じ時を過ごしてきた部材やパーツはなるべくきれいに外して再利用したり、自分の好きなものを掛け合わせたりすると面白くなります。
DIYの古材を探すなら…
RE:MACHI&CO
北海道函館市の〈富樫雅行建築設計事務所〉が、2020年に古民家を借り受けて開いた、チャレンジショップ併設の町工場。解体される古民家から引き取った古材に新たな価値を見出し、その物語と共に地域で循環し引き継いでいく仕組みを目指す。現在はチャレンジショップとして〈街角クレープ〉に店先を提供し、古材は委託販売にて対応。
北海道函館市豊川町9-24 ☎なし 営業時間:11:00~17:00(クレープが売り切れ次第終了) 定休日:月・火 remachico.wixsite.com/remachico
ReBuilding Center JAPAN
リビルディングセンター、通称「リビセン」は、建築建材の古材や古道具を販売する、長野県諏訪市のリサイクルショップ。1階では床材や1枚板などの古材の販売を行うほか、カフェ〈live in sense〉を併設。2階では古道具や家具、3階ではイスや建具などを販売しており、DIYのワークショップも行う。建物の解体現場へ行って古材や古道具を引き取る「レスキュー」も、車で片道1時間圏内のエリアを中心に実施。オンラインストアでは製材済みの床材や家具、雑貨の購入も可能だ。
長野県諏訪市小和田3-8 ☎0266-78-8967 営業時間:11:00~18:00 定休日:水・木 rebuildingcenter.jp
PAAK STOCK
宮崎県日南市の建築設計事務所〈PAAK DESIGN〉が運営する古材ショップ。リノベーションなどで関わった物件から出た建築資材を集める。300点以上の建具、板材を倉庫で管理していたが、月に一度、毎月第2土曜のみ店としてオープンすることに。車で運べる200km圏内のエリアにて、引き取りにも対応する。オンラインショップ〈PAAK Supply〉では、古材を活用したフォトフレームやコースターなどのインテリア小物のほか、オリジナルアイテムを充実させていく予定。
宮崎県日南市飫肥2-5-36 ☎0987-55-0088 営業時間:毎月第2土曜のみ営業 paaksupply.thebase.in(オンラインショップ)
PROFILE
富樫雅行 とがし・まさゆき
北海道函館市在住の建築家。2011年古民家リノベーションを記録したブログ『拝啓 常盤坂の家を買いました。』を開設。〈港の庵〉〈日和坂の家〉〈大三坂ビルヂング〉で函館市都市景観賞を受賞。古民家を再生する町工場〈RE:MACHI&CO〉や複合施設〈街角NEW CULTURE〉など、数々のリノベーションとプロジェクトを手がける。
●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Text:Chihiro Kurimoto Edit:Shiori Fujii
Composition:林愛子
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