毎回「何か」に詳しいお笑い芸人をゲストに迎えて開催されている、『マシンガンズ』滝沢秀一さん主催のイベント。第3回はお片づけ芸人として活動中の『六六三六』柴田賢祐さんを迎え、「ごみ屋敷とその社会のあり方」をテーマにトークが繰り広げられました。ごみ屋敷とひと口に言っても、そこには多彩なバリエーションがあり、さまざまな社会問題が隠れているようです。

20世帯のうち､ひとつは必ず｢ごみ屋敷｣!?

お笑い芸人として活動を続けるかたわら、ごみ収集会社に所属する滝沢さん。月に一度開催される「滝沢ごみクラブ」の定期イベントでは、防災芸人やきのこ芸人など、専門ジャンルをもった芸人たちを招き、ごみやそれにまつわる社会課題について考えている。このイベントを、滝沢さんは愛情を込めて「ごみ芸人のリサイクル工場」と命名。今回登場した柴田さんは、生前＆遺品整理、空き家やごみ屋敷の片づけをおこなっている「お片づけ芸人」だ。

滝沢　柴田くんはもともと、ごみ屋敷に興味があるというか、好きだったの？　ごみ屋敷にあこがれがあったとか？

柴田　いやいや、そんなわけないじゃないですか。今日も、オススメごみ屋敷物件をもってきたわけじゃないんですよ！　アルバイトでごみ屋敷を片づける機会がけっこうあるんですが、そこで感じたことや「なんでこうなっちゃったんだろう」といった疑問や考察を、ボクなりにまとめてきたんです。

滝沢　たしかに町を歩いていると、ごみにまみれてスゴイことになっている家に出くわすよね。

柴田　そもそもボクたちが「ごみ」と思っていても、本人にとってはごみでも何でもなく「宝物」だったりする。どんなにちらかっていても、まったく気にならない人もいるわけですよ。

滝沢　わかる、わかる！　ボクも一度、ごみ屋敷にロケに行ったことがあるんだけど、「ここに、ごみなんか１個もない！　帰れ！」と怒鳴られてビックリしたよ。

柴田　まずは各自治体が定めている、いわゆる「ごみ屋敷条例」を見てみましょう。これによると、ごみ屋敷の定義は「病害虫の発生や悪臭など、すでに社会的な問題となっていたり、周辺住民から何らかの苦情が寄せられているものなど」だそうです。

滝沢　つまり、まわりに住む方々の迷惑になっているか否かがポイントなんだね。

柴田　そうなんです。ただ逆にいうと、まわりの迷惑になるというほどではないけれども、その実態は明らかにごみ屋敷である、というレベルの家がたくさんあるっていうことなんです。

滝沢　柴田くんは空き家整理や生前整理なんかをやっているけれど、いろんな仕事のうち、ごみ屋敷を片づける割合ってどのくらいなの？

柴田　会社全体で月100軒ほどの案件があるなかの、２〜３軒というところです。ボクの経験上、40世帯くらいが住んでいる団地があるとしたら、２世帯以上は確実に、ごみ屋敷ですね。そういう家に派遣されると、まずは、ごみを分別していくんですが、ホントごみ屋敷って十人十色（じゅうにんといろ）なんですよ。けれども作業していくうちに、「これって、前にも片づけたことがあるタイプのごみ屋敷だな」と気づくことが増えてきたんです。

滝沢　それって、ごみ収集とまったく同じだよ。以前とは別の場所でごみを集めてるんだけど、「なんかこのごみ、前も回収したことあるなあ」っていうデジャブ感、結構あるんだよね。それで柴田くんは、ごみ屋敷をカテゴリー分けしたんだって？　分けたところで、誰の役に立つんだ、という話だけど（笑）、すごく興味あるなあ。

恐怖の｢生屋敷｣｢尿ペ屋敷｣って何だ!?

柴田　私の分析では、ごみ屋敷は７タイプに分類できます。「生屋敷」「弁当がら屋敷」「紙屋敷」「尿ペ屋敷」「犬猫屋敷」「エロ屋敷」、そして「物屋敷」の７つです。ウチの会社では、「あ〜！　オレ明日、生屋敷入っちゃったよ！」「マジ？　オレは先週、犬猫屋敷に行ったよ」など、社員同士の日常会話のなかでつかわれています。

滝沢　なるほど。生屋敷って「生ごみ屋敷」のことだろ？　これ、とくに夏場は絶対に入りたくないなあ。個人的には一番イヤかも。

柴田　いままでで一番印象に残っている生屋敷は、「キッチンだけ片づけてください」との依頼を受けて派遣された家です。なんと、胸の高さにまで生ごみだけが積み重なっていて……。野菜とか、カラカラに乾いた明太子なんかが何層にも重なってる。しかも驚いたことに、最下層はすでに土に還りかけているんですよ！　それをスコップですくっては庭にまく、という作業を繰り返しました。

滝沢　ウソでしょ！　マジで？　下のほうは、すでに堆肥化しちゃってんの!?

柴田　マジです。それを小バエが舞う悪臭のなか、ボクたちが分別するわけですよ。「弁当がら屋敷」は、「自炊せずに一人暮らしを続けていたら、必ず出るであろうごみ」が溜まりに溜まったごみ屋敷です。でも、これは比較的、作業としてはラクなほうなんですよ。臭いやウジ虫問題は多少ありますが（笑）、カップラーメンとかの汁モノは、基本的に飲み干してくれていることが多いんですよね。

滝沢　エ〜ッ！　それでラクなの？　かなり臭いはすると思うんだけど。柴田くん、感覚が完全にマヒしちゃってるよ。

柴田　ラクといえば、本や資料なんかが積み上がっている「紙屋敷」もいいですね。住人が学者さん、漫画家さんの場合に多いタイプで、私たちに対して、「これは形状的にどこに捨てるつもりですか？」など、小難しいことを聞いてくる印象があります。

滝沢　これはボク、心当たりがあるなあ。以前番組の収録で、断捨離の先生に「紙は全部捨てましょう」と言われたことがあってビックリしたよ。ついつい、読まないのに本を買ってきては、家のなかに積んじゃうんだよね。

柴田　“積ん読”タイプの方は、完全に紙屋敷予備軍ですね。そうなる前に、ボクの会社に連絡ください！　片づけに行きますよ！　

続いては、多頭飼育などで飼育が困難になり、人もペットも住めなくなった「犬猫屋敷」。７匹くらいの多頭飼いをしていた家なんか、中に入ると、床から紫色の煙、というか毒ガスか何かが吹き出てるんじゃないかっていうくらい、暗くて薄〜くモヤがかかっている感じで、臭いもかなり強烈！　とにかく不気味で異様な感じでした。

でも、臭いといえば、やっぱり「尿ペ屋敷」！　そう、尿が入ったペットボトルがやたらと放置されている家です。尿入りペットボトル、略して「尿ペ」は、１本発見すると、必ずあと100本は出てくるといわれていて……。ボクたちはそれを１本１本、トイレに流すんです。トイレはごみでいっぱいになっているワケじゃないのに、なぜ尿ペ屋敷の住人がトイレをつかわないのか!?  この謎は、いまだに解明できていません。

滝沢　ごみ集積所にも、ミネラルウォーターのペットボトルになぜか黄色い物体が入ったまま捨てられていることがあるよ。皆さんも、ごみ拾いをするときには、液体入りのモノは拾わないほうがいいよ！　何が入っているか、わかったもんじゃないからね。

柴田　そのほか、いわゆるエロ本などであふれた「エロ屋敷」、ごみではなく、単に物があふれかえっている「物屋敷」があります。物屋敷は、高齢のご夫婦が住まわれているケースが多い印象ですね。あらゆる場所に、ギュウギュウに物が入っていて、あふれちゃってるんですよ。

滝沢　なるほど。どれも強烈だねえ。

柴田　会社のみんなに、「結局、どのごみ屋敷が一番やっかいか」というアンケートをとったんです。そしたら、３位・生屋敷、２位・尿ペ屋敷、堂々の１位が犬猫屋敷、という結果になりました！　どのごみ屋敷も大変だしイヤなんですが、犬猫屋敷はダニやノミがウジャウジャいて、われわれに実害が出ちゃう。尿ペもかなりイヤですけど、捨てちゃえば終わりってところがありますからね。

滝沢　その感覚、スゴイな！　もはや悟りの境地だよ。

　

——後編は、「ごみ屋敷と社会問題」です——

text:萩原はるな