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世界各国からの難民が「日本一のラーメン」に舌鼓!【前編】
世界各国からの難民が「日本一のラーメン」に舌鼓!【前編】
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世界各国からの難民が「日本一のラーメン」に舌鼓!【前編】

「大変な思いをして日本に避難してきた難民の方々を、ラーメンで、もてなしたい」。湯河原の“日本一”の人気店「らぁ麺 飯田商店」の店主が一念発起し、鎌倉にある「NPO法人アルペなんみんセンター」で、ウクライナからの避難民やセンターで暮らす難民にアツアツのラーメンを振る舞いました。近隣のボランティアたちも訪れ、“日本一の味”に皆、笑顔! イベントの趣旨や難民の現状について、アルぺなんみんセンター事務局長の有川憲治さんに伺いました(前編)。

ーー後編はこちらーー

10ヵ国、18人が暮らす難民シェルター

11月のよく晴れた日、神奈川県鎌倉市の「アルぺなんみんセンター」には、世界各国の人々が集っていた。お目当ては、同県湯河原の「らぁ麺 飯田商店」飯田将太店主による、特製しょうゆラーメン。ウクライナからの避難民だけでなく、センターで暮らすミャンマー、スリランカ、コンゴなどからの難民や、彼らのサポートをするボランティア、近隣の住民なども招待されていた。

「アルぺなんみんセンターは、2020年4月に開設した、難民の方々のためのシェルターです。これまで、18カ国40名を受け入れてきました。いまは10カ国、18名がここで暮らしています。鎌倉など湘南地区は昔から住んでいる方が多く、保守的な土地柄であることから、当初は受け入れてもらえるかどうか心配でした。しかし心配には当たらず、近隣のみなさんが非常にあたたかく迎えてくました。一緒に畑仕事をしたり、コーラスを楽しんだりと、国際交流を楽しんでいただいています」

そう語るのは、同センター事務局長の有川憲治さん。1995年から外国人の支援をおこない、日本における、難民に対する風当たりの強さを実感してきたという。

「2000年頃から日本にも多くの難民がやってくるようになりました。しかし、それに対応する体制や法律が整っていないのが現状。欧米では、空港で難民申請をすると、すぐに保護されることが多いのですが、日本では追い返されるか、入管施設に入れられてしまう。なんとか入管施設を出られても、難民認定申請が通らないため仕事に就けず、経済的に困窮してしまう人が大半です」(有川さん、以下同)

ラーメン職人の鮮やかな手さばきを、興味津々に見つめるウクライナの人々。箸をつかって長い麺を食べることに苦労していた
 

アルぺなんみんセンターで暮らす人々の多くは、難民支援団体や弁護士など、有川さんのネットワークからの紹介で入所してきた人びとだ。ウクライナのように戦争から逃れてくる人たちのほか、国籍や人種、宗教の違いや性的嗜好によって迫害を受けたり、政治的な理由で逮捕されたりなど、祖国を離れた理由はさまざまだ。

「難民はまず、ハウジングファースト。つまり、住む場所を確保するのが先決です。それが確保できて、みなさん落ち着くと、たいていは『自分で働いて生活したい』と希望されますね。ただし、難民申請期間中は原則、就労ができないため、働いて自立することは難しい。難民認定されるのはわずか1%以下、日本で保護されず、迫害が待つ母国にも帰ることができず、困難な状況に置かれています」

こうした日本の対応は諸外国から批判を浴びており、国際機関などからも勧告を受けているという。

「イギリスのチャリティー団体『Charity Aid Foundation』による国際的な世論調査で、外国人や見知らぬ人を助けたか、慈善団体に寄付をしたか、組織的なボランティアに時間を割いたかを尋ねたところ、日本は調査対象144ヵ国のうち最下位でした。難民を受け入れるということは、『彼女、彼らの母国で守られなかった人権を、国際社会で保護しよう』と同義です。ただ、こうした基本的な人権の考え方を日本社会で学ぶ機会はとても少ない。『よその国の困っている人を助ける』と考える文化も、その余裕も育っていないと感じます」

アルぺなんみんセンターは、鎌倉市街にほど近い丘の上にある。施設は元「イエズス会 日本殉教者修道院」で、聖堂もある
南向きの居室。修道院だけにきわめてシンプルだが、実用的で頑丈な家具がしつらえてある

「母国に帰りたくても帰れない

ロシアのウクライナ侵攻によって、「難民」という言葉が広く認知されはじめたと、有川さん。

「私たちのところにも、『難民のために何かできることはないか』と、問い合わせが入るようになりました。多くの日本人にとって、難民問題は遠い世界のこと。難民がショップ店員やタクシー運転手としてふつうに働く欧米と違って、身近に感じることが難しい現状があります。でも、身近にいる人を大切にするという意味では、難民でなくても、どんな人を対象にしても、すぐにはじめられるはず。みんながそう心がけることで、困っている人を受け入れる心の余裕が育つのだと思っています」

有川さん(前列中央)とセンタースタッフたち。「飯田商店」の飯田店主(後列右から3番目)とその弟子で、瞬く間に大人気行列店となった「Ramen FeeL」の渡邊大介店主(同2番目)によるラーメンを堪能した
 

「身近にいる外国にルーツをもつ方々と、実際に交流してみることも大切。現在日本には、約300万人の外国人が住んでいます。そういう方々と『何かをしてあげる』とか『やってもらう』関係を築くのではなく、まずは友人として受け入れてはいかがでしょうか。みなさん、友だちが困っていたら、自然に手を差し伸べるでしょう。それと同じように、難民をサポートする精神が育っていけばいいと思っています」

今回、センターの近所に住む方々と難民が一緒にラーメンを食べ、幸せな時間を共有したことには、大きな意味があるのだろう。

「国に帰りたくても帰れない方々に居場所を提供し、地域に受け入れられるところまで進めば理想的。アフターコロナのインバウンド需要に向けた観光ガイド、後継者不足に悩む職人さんの後継者など、受け入れ先はたくさんあるはずなんです。今後も地域の方々と意見交換しながら、支援を続けていきたいです」

―――後編では、「飯田商店」の飯田将太さんに話を伺いますーーー

photo:横江淳 text:萩原はるな

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