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立ち退きを迫られた定食屋がクラファンで危機を脱出!
立ち退きを迫られた定食屋がクラファンで危機を脱出!
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立ち退きを迫られた定食屋がクラファンで危機を脱出!

東京・桜新町で43年続いていた「きさらぎ亭」。しかし5年前に、建物の老朽化で、突然の移転を迫られることに……。街の定食屋さんの選択は?

▼クラウドファンディングの基礎知識はこちら

創業した両親の思いを娘が……
わずか1週間で目標達成

エビクリームフライ定食。このボリュームで950円。近くの大学の学生にもファンが多い

「できるはずがない。家族みんな最初はそう思っていました」と振り返る、店主の横山茜さん。東京・桜新町の定食屋「きさらぎ亭」がクラウドファンディングへの挑戦を決意したのは2017年9月末。老朽化による立ち退きが決まったその日だった。

「私の主人が『やってみよう』と言い出したんです。でも両親は反対。私も資金が集まるとは思えず、不安しかありませんでした。それでも他に方法はないし、一か八かプロジェクトを立ち上げてみることにしたんです」(茜さん、以下同)

以前のきさらぎ亭

同店の創業は1977年。横山さんの両親が二人三脚で営んできた店だ。長いカウンターとお座敷。壁には手書きのメニューが貼られ、厨房からはフライを揚げる音やキャベツを刻む音。デミグラスソースの香りも漂ってくる。

開店当初の写真には、横山さんのご両親の若き日の姿が

誰もが気軽に立ち寄れる街の定食屋。昼食を食べに来るサラリーマンや近くの大学に通う学生さん。みんな、お気に入りの定食を注文しては、おいしそうに食べて、ごちそうさま! と帰っていく。

「お顔を見ればよく来てくださる方だとわかるけれど、名前は知らないし、話したこともない。クラウドファンディングをはじめても誰にどう伝えたらいいのか……という感じでした」

カレーからハンバーグ、フライ、天ぷらに刺身まで種類豊富

クラウドファンディングのプラットフォーム「READYFOR」の担当者と考えたのは、立ち退くまでの期間を最大限に活用すること。通常1ヵ月近くかける事前準備を2週間で終わらせ、資金集めをスタート。その時点で営業日はあと1週間。突然の閉店が決まったこと、そして移転資金を集めるためにクラウドファンディングをはじめたことを、店頭に貼り紙をして常連さんに知らせることにした。

お客さんとの間に生まれた
今までにないコミュニケーション

支援者に配られたオリジナル千社札

「インターネットで広めるのがクラウドファンディングなのに、その告知がアナログで(笑)。でも、それがキッカケになって、お会計時に『クラファンに参加しました』とか『移転したらまた食べに来ます』と声をかけてもらったり。はじめて話す常連さんもいて、うれしかったですね」

移転先は前の店から徒歩3分

横山さん家族の想像を超え、またたく間に広まった、きさらぎ亭のクラウドファンディング。同時に立ち上げたツイッターとフェイスブックを、店で働く学生や元アルバイトのスタッフが積極的に拡散してくれたのも大きかった。その甲斐あって目標金額の80万円を閉店日の10月25日に達成! わずか7日間でこれだけの資金が集まったこと、支援者から届く温かなメッセージに驚いたという。

「両親の店はこんなに愛されていたんだな、と。新しい店は娘の私が継ぐことにしたのですが、この声に応えないと、と身が引き締まりました」

移転後の店を切り盛りする横山茜さん。先代である両親の味を守り、“変わらないこと”を大切に営業。「変わらぬ味を届ける。それが私たちにできるお礼です」

プロジェクト終了までに集まった額は190万円近く。長年店に通う近所の輸入車販売店の石川利一さんも、店が残ってよかったと喜ぶひとりだ。

「茜ちゃんが小さな頃から通っていたし、この店の味がやっぱり好き。自分にもできることがあったのがうれしい」

栄養バランスを考えて、どの定食にも必ずミカンがつく

支援する側も笑顔になるのがクラウドファンディングの面白さ。ひとつのプロジェクトをみんなでやり遂げたという達成感が広がっていく。移転後の店には、参加者へリターンとして配った食券を持ってくる人も多いという。とくに会話を交わすことはないが、うれしいと横山さん。

「お客さんの思いがこもったお金だったからこそ、私たちも移転を乗り切ることができた。受け取ったのはお金であり、責任。変わらぬ味を届けていくのが恩返しだと思っています」

きさらぎ亭
CROWDFUNDING DATA

支援総額 1,967,000円
支援者数 189人
達成率 245%

【2017年】
9.30 老朽化による立ち退き決定
10.1 クラウドファンディング申し込み
10.15  twitter、facebook 開設
10.18 クラウドファンディング公開
10.25 閉店日に目標金額達成!
11.30 クラウドファンディング終了

【2018年】
2.8 新店舗にて営業再開

新店舗は窓から光が射す明るい雰囲気。定食は20種近く。
東京都世田谷区桜新町1-40-10 ☎03-3426-1482
営業時間:11:00~16:00、17:00~22:00 定休日:日・祝

●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Photo:Fumito Kato Text & Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子

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