Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

既存のアートより自由で独創的!「アウトサイダー・アート」
既存のアートより自由で独創的!「アウトサイダー・アート」
TOPIC

既存のアートより自由で独創的!「アウトサイダー・アート」

いわゆる「美術」の外にいて、創作し続ける人がいます。ときに断絶された世界で、誰かの、何かのためでなく、沸き立つ表現。魂があふれ出るような心を揺さぶる作品と、つくり手たちを訪ねました。今回のスポットは「みずのき美術館」です。

アウトサイダー・アートって?

既存のアートに対し「アウトサイド」とされ、美術教育を受けていない人による、独自の芸術活動のこと。障がいや生きづらさを抱える人の作品でも知られるが、身近な日常で、刑務所で、あるいはどこかで人知れず、さまざまな表現が生まれている。

二井貞信

戦時中、出征した際の精神的なショックと、マラリアの感染症が重なり、40代後半で脳に障がいを抱えて入所。穏やかな日常生活を送るなかで絵画活動と出合うと、独自の才能を発揮していく。描きはじめた当初の弱々しかった線は、色とりどりの華やかな画面へと変わっていった。画用紙いっぱいにクレヨンを塗りつぶして描かれた木は、枝や葉や幹の色を変えて塗り分けられている。

身近にある木や石を色彩分割した作品が多いのは、施設の絵画教室で色の組み合わせを練習した影響のようだ。部分を描いた木は、当時のアトリエの2階の窓から見える風景を切り取ったのではないかと推測される。1978年没。スイスのアール・ブリュット・コレクションに作品5点が収蔵されている。

小笹逸男

「みずのき絵画教室」がはじまった当初から作品を描いていた。施設で飼う犬の世話を率先して引き受けるほどの生き物好きで絵でも主なモチーフとするが、尖ったアゴと細い目をした動物の顔は、本人にもそっくりだとか。

蛙が四方から顔を出したり、狐が画面の下からのぞいたり、猫のお尻だけが端から出ていたり、かたちや構図、空間の取り方もユニーク。自身にも芸術家としての認識があったのか、絵画教室の講師をマネてベレー帽を被っていたという。

晩年に筆をおいてからは、抽象的な文字のようなものを描いてみせたり、味のある振る舞いを最期まで失うことなく画材を器用に使い分け、小作から巨大なキャンバスに描いたものまで1700の作品を残している。2012年没。

みずのき美術館

2012年に開館。障害者支援施設みずのきで1964年に始まった「みずのき絵画教室」で制作された2万点を超える作品を所蔵、企画展などを開催している。2000年までは、日本画家の西垣籌一が絵画を指導していた。所蔵作品の保存・研究・公開、アール・ブリュットの考察、アートプロジェクトの実践を3本の柱に運営している。京都府亀岡市北町18 www.mizunoki-museum.org

●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Text & Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!