伐倒アクティビティに商品開発…村の存続をかけたユニークな取り組み
適切に手を入れることで、健やかな森林を保とうとする持続可能な森づくり。日本でも、自分が暮らす地域の森を元気にするための取り組みが各地で始まっています。建築やデザイン、食やレジャー、教育など、そのアクションはじつにバラエティ豊かでユニーク。その根底には、森と共生することで自然も自分たちの暮らしも豊かにしたいという思いがありました。今回は、岡山県西粟倉村(にしあわくらそん)の「百年の森林構想」を紹介します。
村の存続をかけて、山林の価値最大化に取り組む
岡山県の西粟倉村は山林が面積の約95%を占める。村の最大の資源であるはずが、このまま林業の衰退傾向が続く場合、経済的なダメージだけでなく、村の治山治水に対する危険性も懸念されていた。

蜂蜜ブランド〈リムルベーン〉では、百森蜜やグラノーラの収益の一部を多様性の豊かな森づくりに投資
そこで村全体で取りかかったのが、適切に管理された美しい森林に囲まれた地域をつくろうという「百年の森林づくり事業」。「50年生の森を100年生にしよう」をコンセプトに、まずは山林の個人山主を探して連絡・交渉し、10年間の長期施業管理委託契約を結んだ。

参加者が一から伐倒を行うアクティビティ「チェーンソーLOGGINGツアー」も
作業道の設計や間伐などの施業の発注、FSC認証の取得、補助金申請まで一括管理しているのは、村から委託された企業、百森だ。10年が経ち、さらに山林の多様な価値を最大限発揮するための取り組み「森林のRe Design」も展開中。

百森は山林を利用したい人をつなぐ「山林窓口」も担当。条件に合う山林を案内し、利用者の安全管理まで行う。こちらは森の色をテーマにした講座
同時に「定住しなくてもいい」というキャッチコピーで地域内ベンチャーの起業を促進してきたことで、移住者が人口の約15%にまで増加。森林や間伐材を活用した商品開発やマーケティングも進んでいる。

そのうちの一社で、間伐材を使った床材を製作・販売していたエーゼログループは、「人間の活動によって劣化した生態系を再構築する事業にしたい」という思いから、「森のうなぎ(鰻)」をはじめ、ジビエや「百森蜜(蜂蜜)」などの商品を開発。

エーゼログループでは木材工場で発生する樹皮やおが粉を培土にするイチゴ栽培も行う
見捨てられていたものに新しい価値を見出す事業からも、山林の新たな可能性が広がっている。

獣害として駆除されたシカを森からの恵みと考え、猟師と連携しながら鮮度を保つ処理を行い、「森のジビエ」として販売
●情報は、FRaU2024年8月号発売時点のものです。
Text:Shiori Fujii Edit:Yuriko Kobayashi Composition:林愛子
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