プラスチック問題を意識する、ゴミを出さない暮らし
SDGs 先進国と言われるスウェーデン。なかでも南部に位置する都市マルメは、オーガニック食材やサーキュラーエコノミー、ゴミ問題に関する関心が高く、住民による活動が盛んなエリアでもあります。マルメのローカルから未来のありかたを学びましょう。今回は、ゴミを出さない生活につながるパッケージフリーのショップについて、お話を伺いました。
Package-Free Shop
プラスチックゴミを減らす
パッケージフリーショップ
環境問題にまつわる項目のなかでも一、二位を争う大きな課題といえるのが、プラスチックゴミ問題。一部の企業で合成樹脂製品を廃止する動きもあるが、打ち上げられたウミガメや鯨の腹から大量のプラスチックが出てくるなど痛ましいニュースも後を絶たない。世間がようやくこの問題に目を向け始めたなかで、いまできることは何か――。
2016年、イギリス人のローワン・デュルーリーが、スウェーデンで初めてのパッケージフリーショップ〈グラム〉をオープンさせた。もともとスウェーデンでマーケティング関係のコピーライターをしていた彼女が、ある日目にしたのはニューヨーク在住の女性、ローレン・シンガーがゴミを出さない生活を実行しているというブログ。そこで、ローレンのここ4年間のゴミは小さなガラス瓶に収まるだけの量、という記述を見て衝撃を受ける。
「以前からサステナビリティに興味を持っていたけれど、とくに何かをしたことはなかった。でもブログを読んで、ニューヨークのような大都市に住んでいる若い女性ができるなら、私にもできるのではと思って。まずは自分の暮らしのなかのゴミを減らすために、テイクアウェイのカップを使わないことを徹底したり、シャンプーもプラスチックボトルを使わず、石鹸に切り替えたりするなど、小さなことから実践してみました」
ゴミを出さない生活をしはじめると、スーパーで何でもパッケージングされていることが目につき、フラストレーションがたまった。同時にベルリンにパッケージフリーショップがあると知って見に行くと、自分がやりたかったことはこれだと確信したという。
そこからリサーチを重ね、ついにマルメにショップをオープン。2年が経ったいまでは、彼女の考えに賛同する常連客が増え、ボランティアスタッフも集まるようになった。
店に並ぶアイテムはおよそ250種類。ナッツなどの乾物をはじめ、調味料、茶葉、スパイス、ハーブ類、卵、野菜、牛乳など。そして洗剤や石鹸といったハウスホールドプロダクトも揃う。基本的にはすべて量り売りで、パッケージはない。持参した容器や販売しているガラスの瓶に詰めるスタイルだ。
ローワンが店に置く商品でこだわるのは、なるべくオーガニックであること。そしてローカルのものを優先する。運送の距離や時間を減らすことで、二酸化炭素排出量を少なくすることも意識している。
「私がやりたかったのは単なるグロサリーショップではなく、自分なりの政治的なステイトメントも兼ねたメッセージ性のある店。ここに集まった人たちがプラスチック問題について意識したり、話し合ったりできる、そんな場をつくりたいと思いました」
毎日使うものから、ムダになりそうなものを減らしてみる。身のまわりの日用品を見直すことからはじめてみる。世の中を変えるきっかけは、そんなささやかな積み重ねなのだと、この店は教えてくれる。
GRAM grammalmo.se
●情報は、FRaU2019年1月号発売時点のものです。
Photo:Norio Kidera Coordination:Akiko Frid Text & Edit:Chizuru Atsuta