知的障害のある作家のアートが叶える、ハッピーステイ
並木通りに位置する「ハイアット セントリック 銀座 東京」に、知的障害がある作家たちのアートが配されたコンセプトルームが登場。身を置くことで、いつの間にかハッピーな気分になれる不思議な空間が広がっています。コンセプトルームのデザインを担当した乃村工藝社の吉村峰人さんに、アートと福祉の出合いが提案するライフスタイルについて伺いました。
アーティスト13名によるカラフルな18作品が
名だたるハイブランドが立ち並ぶ銀座の並木通りに、しっくりとなじむ「ハイアット セントリック 銀座 東京」。その街の個性や文化への強い好奇心を持つアクティブトラベラーをターゲットに、アートを取り入れた斬新なインテリアが特徴のホテルだ。
そんなあこがれホテルに、2022年7月31日までの期間限定で、知的障害のある作家によるアートに彩られた客室(スタンダードとスイートの2タイプ)が登場したと聞き、さっそく訪れてみた。重厚なスイートルームのドアを開ける。と、まず目に飛び込んできたのは、さまざまな色が弾けるハッピーなアート作品たちだ。
「これらは、知的障害のある作家たちを世に紹介している福祉実験ユニット『ヘラルボニー』の契約アーティストたちの作品です」とは、コンセプトルームのデザインを担当した吉村峰人さん。
「コンセプトルーム2部屋に配されているのは、13名のアーティストによる18作品です。彼らの作品の多くは、多彩な色を使って、根気よく書かれた連続性のあるものが多いんですよね。使っている色も繰り返されるパターンもさまざまなのに、どれを組み合わせてもしっくりなじむのが不思議です」(吉村さん、以下同)。
室内には、カラフルなアート作品が、そこここにちりばめられている。それらは不思議な統一感で、居心地のよい空間を作り出しているのだ。
ハッピーなアートで、ライフスタイルにも変化を
「カラフルな色彩と連続した形が、キャンバスから飛び出して広がり続けていくような感じ。床に配したラグがそのまま壁につながっていくデザインにしたのは、そんなアートのなかに入りこんだような、豊かな時間を体感していただきたかったからです」。
今回のコンセプトルームには、ホテルステイの体験にとどまらず、アートを生活に取りこんでいくヒントをちりばめているという。「たとえばカラフルなハンガーにいつもの服をかけてみるだけで、『この服、じつはこんな色とも合うんだ』なんていう発見が生まれます。意識が変わることで、服の整え方も変わってくるでしょう」。リビングエリアのソファには、色鮮やかなスカーフがあしらわれており、空間を華やかに演出。たしかにこれなら、生活空間にも取り入れられそうだ。
にぎやかな色彩のなかに数字が隠れていたり、空想の家の間取り図のような絵が潜んでいたり。「へラルボニーの契約アーティストたちの作品は、とても表情豊かです。そんなアートに囲まれていると、なんだか楽しくなってしまいますよね」。
「サステナブルな素材を使ったプロダクトです、というものは多いと思うのですが、それだけではなく、知的障害のあるアーティストの作品を身をもって体感することで、ライフスタイルにちょっとした変化が現れる。ホテルが、彼らの“異彩”のアートと人々をつなぐハブになれれば理想的です」。
text:萩原はるな