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昆虫の洋服や絵本通し、親子の未来を豊かに育む「アランチヲネ株式会社」
昆虫の洋服や絵本通し、親子の未来を豊かに育む「アランチヲネ株式会社」
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昆虫の洋服や絵本通し、親子の未来を豊かに育む「アランチヲネ株式会社」

未来に向けた独自の取り組みやユニークな視点を紹介するFEATURE。今回取り上げるのは、3つのサステナブルなブランドと昆虫と学びのポータルサイトを運営するアランチヲネ株式会社。昆虫をモチーフにした洋服や絵本は高い支持を得ており、地球環境に配慮した素材や「服育」に根ざしたデザイン、そして価格までひとつひとつ徹底的にこだわる姿勢は近年増えつつある表面的なエシカルブランドとは一線を画す。服を通じて子どもの生きる力を育てるために真剣に取り組む人気企業の魅力を、前後編に分けて紹介する。

後編はこちら


撮影/明田光彦 取材・文/水谷美紀

「教育」を重視したブランドづくり

自然とふれあい、昆虫と共に大人も子どもも成長してほしい。そんな想いから生まれた、昆虫モチーフの服育ブランド「INSECT COLLECTION」、自然教育絵本を販売する「INSECT LAND」、草花と昆虫のエシカルブランド「Insect Garden」、そして昆虫と学びのポータルサイト「INSECT MARKET」を運営しているアランチヲネ株式会社。昆虫モチーフの可愛いアパレルや昆虫が主人公の絵本は子どもから大人まで幅広い層に人気だが、もともと洋服を売るのが一番の目的ではなく、自然教育を通してSDGsやESD教育を推進するために誕生したブランドだ。創業してまだ4年目ながら、これからの時代を生き抜く子どもに必要な力を育む学びの場として、大きな注目を集めている。

「洋服を売るのがわたしたちの仕事ではありますが、来店されたお客様に対し、ただ単に洋服を買っていただきたいわけではなく、一つ一つの商品に込めた想いや意味から、自然教育について何か一つ学んで帰っていただきたいと考えています。オンラインも同様で、商品を販売するだけでなく、知育記事という形でさまざまな記事を発信しています」と話すのは広報の河合美穂さん。

3つのブランドは、どれもただ可愛いだけでなく、デザインや素材などすべてにブランド側の熱い想いと自然環境への配慮があり、昆虫や植物のモチーフを通した学びがある。「服育」をわかりやすく効果的に実践している点も、子どもの将来を真剣に考える親世代に評価されている理由だが、ブランド設立前からSDGsやESD教育を浸透させたいという考えが強くあったという。


「プロデューサーである香川照之さんが昆虫に造詣が深いこと。子ども服のニーズが想定しやすかったこと。そして、地球と人類の未来が危なくなっていることに対して日本人はまだまだ危機感が薄いので、SDGsを浸透させたいという気持ちもありました。そのふたつが合致して、現在のような形になりました。たまたまアパレルに行き着きましたが、未来を託す子ども達に昆虫から生きる力を学んでほしいという強い想いがブランドの根幹になっています」

二子玉川店に次いでオープンした豊洲店。明るい店内は遊び場のようで、いるだけで楽しくなる。スタッフには子どものいる人も多く、店に連れて来ることも。「お客様に『お子さんを連れてきているんですね』と驚かれることもありますが、こういったことを実践することで、親であるスタッフが働きやすい職場であることがお客様にも伝わっていると思います」
さまざまな昆虫モチーフの商品が並ぶ。子どもが着たくなり、大人も着せたいと思うデザインであることも人気の理由。すでに昆虫に対し苦手意識が定着してしまった親でも受け入れられる可愛いデザインが多いのも特徴だ。

「服育」の考えに根ざした商品づくり

アパレルブランドだが、SDGsのなかでも「教育」をもっとも重視し、真剣に取り組んでいる点が同業他社と大きく異なる特徴だ。
「わたしたちがSDGsの中の17のゴールのなかで特に教育を重視しているのは、SDGs全体を下支えしているのが教育だからです。これから厳しい時代を子ども達が過ごしていくなかで、正しい知識がないと正しいアクションは起こせません。教育のなかでもわたしたちは自然教育を大切にしていますが、自然体験の多い子は、自律性、積極性、協調性に長ける傾向にあるというデータがあり、その重要性を多くの親に知ってもらうことが必要だと考えています。また、読書量の多さも子どもに良い影響を与えるので絵本も出版しています。教育はどの年齢にとっても大切ですが、まだ性格特性が決まっていない幼児期にアプローチすることが特に有効だと考えています」

さらに興味深いのが「服育」という考えだ。
「例えば我々は“ドレス効果”を唱えています。小さい子どもでも、ごはん食べにいくからこの服を着ようねといって襟付きのシャツを着せると、しゃんとします。どうしてこの服なのか意味を伝えることで、TPOを理解するようにもなります。そういった感覚を養ってあげることができれば、成長してもさまざまな選択ができるようになります」

なにげなく見える昆虫プリントのTシャツにも、さまざまな服育の理念が活かされているという。そのひとつが色使い。「INSECT COLLECTONを見ると白い服が多いのに気づかれると思いますが、子どもの脳の発達を考えてあえて白を多用しています。子どもの視覚はおよそ3歳を過ぎてようやく大人と同じくらい見えるようになると言われているので、小さいうちは暗い色を使うより、視認性の高い白い色や明るい色をベースに服を作りたいと考えています。黒などの暗い色がベースだと視認性が低いので、せっかくの情報も脳に届きにくくなってしまうのです。白は汚れが目立つという理由で敬遠されがちでしたが、そのことをお客様にお伝えすると納得され、積極的に白を選んでいただけるようになりました。」

子供の目でもはっきり視認できるように、カブトムシを青にするなど昆虫はすべて明るい色を使っている。紫外線に反応して虫が浮き上がってくるTシャツは子どもが自然に体を動かすようにと考えられた秀逸なもの。「商品ひとつひとつに教育的な意味があります。リアルな店舗は物を売る場所だけでもなく、さまざまなことを学んでいただく場だとも考えています」
大人のためのエシカルブランド「Insect Garden」を始めたのも、子どもだけでなくお母さんの服も変えたいと思ったからだという。秋冬の新作にはコーヒーかすで染められたフードテキスタイルやサステナブルな宝石であるパールが使われたアイテムも登場。

1商品につき64(むし)円が寄付へ。全額寄付の商品も

INSECT MARKETでは商品1点の注文につき、虫にちなんで64円が自動的に国内最古の環境 NPOである日本自然保護協会に寄付されている。買った側は特に意識することなく、自然と環境保護に貢献できるのは消費者にとっても嬉しい取り組みだ。中でも新型コロナウィルス拡大を受けて開発された除菌スプレーと昆虫マスクは、収益が全額、寄付される。

「INSECT MARKETの除菌スプレーはアルコールを一切使っていません。1歳、2歳の子にアルコールを吹きかけようなんて、新型コロナウィルスが拡大するまでは考えもしませんでしたよね。でも今の日本ではそれが当たり前になっています。そのために今、子ども達の手が荒れているわけですが、海外で子どもが使っている除菌スプレーを調べたところ、まるで成分が違ったのです。そこでコストはアルコールの10倍かかりますが、イギリスやフランスなどで子供向けに使われているものと同じ成分にしたオリジナルの除菌スプレーを作りました。この商品は1本3,000円で売っていますが、収益は全額インドの孤児院に寄付しています。昆虫のマスクは、白いマスクは子どもが嫌がるというのを聞いて急遽作ったものですが、この収益も全額アフリカに寄付し、1日一食、給食しか食べられない子のために休校を開ける費用に充てています」

子どもも安心して使えるオリジナルの除菌スプレーと昆虫プリントのマスク。それぞれ売り上げは全額寄付されている。

それほどこだわって作られていながら、商品の価格がかなりリーズナブルに抑えられていることも人気の秘密だが、そこには強い信念があった。
「サステナブル系と呼ばれるブランドは今とても増えていますが、その多くは非常に高額です。そうなると『サステナブルって富裕層の人がやることなのかな』と誤解されてしまい、むしろマイナスプロモーションになってしまいます。サステナビリティに取り組むことは一部の富裕層だけがやることではなく、みんなで取り組むものです。そのことを伝える意味でも、手が届く価格に抑えることを特に大事に考えています。そのため、たとえばTシャツの価格を2,000円にするのに、ものすごく努力をしています。もちろんもっとリーズナブルなTシャツはいくらでもありますが、どんなご家庭であっても誕生日や記念のときに買ってみようと思える価格を守っています」

祖父母から孫へなどギフトにも人気。この3年で約100万着の商品を作ったが、すべて売り切っていて在庫ロスは0。「すぐ売り切れになるとクレームをいただくこともありますが、在庫ロス出さないための取り組みであることをお伝えし、ご理解いただいています」
環境に負荷をかけるOPPの袋をやめ、木材パルプでできたセルロースフィルムを業界で初めて導入。「OPPに比べると1000倍コストはかかっていますが、使う人が増えれば価格は下がっていくので、ぜひ大手企業にも取り入れてもらいたいですね」。タグには植物の種が漉き込まれたシードペーパーを使用。

可愛いデザインや楽しさ、美しさも、サステナブルな生活を続けていく上で大切だという。「SDGsは一過性のブームではなく、一生継続すべきアクションです。無理があったらとても一生なんて続けられません。ですからデザインにもこだわりますし、毎日の生活のなかで楽しく、無理なく続けられることが一番だと思っています。笑顔で楽しみながら学びを続け、子どもたちに未来を生き抜く力を養ってもらいたい。そのためにINSECT MARKETがお役に立てたらいいなと思っています」

【後編】では、教育に関する取り組みや、アート、サイエンスに対するブランドの考えについても紹介します。

アランチヲネ株式会社
コーポレートサイト

香川照之プロデュース
「昆虫と学びのポータルサイト」
INSECT MARKET
公式サイト

昆虫モチーフ服育ブランド
INSECT COLLECTION
公式サイト

自然教育絵本
INSECT LAND
公式サイト

草花と昆虫のエシカルブランド
Insect Garden
公式サイト

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