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重い病気と闘う子どもたちに、日本一のラーメンを! 湯河原「飯田商店」が大阪の「こどもホスピス」に参上
重い病気と闘う子どもたちに、日本一のラーメンを! 湯河原「飯田商店」が大阪の「こどもホスピス」に参上
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重い病気と闘う子どもたちに、日本一のラーメンを! 湯河原「飯田商店」が大阪の「こどもホスピス」に参上

生命を脅かされるような重い病気と闘う子どもたちは、病院と自宅にしか居場所がないケースが少なくないそうです。大阪市の鶴見緑地にある「TSURUMIこどもホスピス」は、そんな子どもたちと家族がゆっくり過ごせる場所として誕生しました。秋晴れに恵まれたある日曜日に、神奈川県の有名ラーメン店「飯田商店」のトラックがホスピスに到着。飯田将太店主をはじめとするラーメン職人が、病気と闘う子どもたちに渾身の一杯を提供するために駆けつけました。

――ホスピスについての記事はこちら――

ラーメンは病気の子どもたちにも大人気!

重い病気と闘う子どもたちが、前向きに自分らしく、深く生きられるようサポートしている「TSURUMI こどもホスピス」。病院や家でずっとガマンしてきた彼らが「やりたいこと」を叶えるために、看護師や理学療法士、保育士などのプロフェッショナルが、それぞれの分野を活かして奮闘している。

同ホスピスでは、月に1度ほどさまざまなイベントを開催。これまで、料理教室やメイク講座、小動物と触れ合えるイベントのほか、子どもを喪った家族に向けたグリーフケアなどをおこなってきた。2025年10月には、神奈川県湯河原のラーメン店「飯田商店」が、利用者たちにラーメンを振る舞うイベントが開催された。

)神奈川県湯河原本店から、打ちたての麺とスープを載せて到着した飯田商店のトラック

「飯田店主から、『ぜひ、子どもたちのためにラーメンをつくらせてください!』と電話がかかってきたんです。当時、わたしは飯田商店を知らなかったので、突然のお申し出にびっくりしました。でも、『おいしいラーメンを食べさせたい!』という強い熱意に打たれ、お願いすることにしたんです。周囲の人たちに『飯田商店!? すごいね、本当に来るの?』と驚かれて、そんな有名なお店が来てくれるんだ、と初めて実感しました」

そう語るのは、同ホスピスの広報担当で看護師の西出由美さん。さっそくラーメンイベントの参加者を募ったところ、申し込みが殺到し、すぐに満席になったそうだ。

飯田店主(前列左)のほか、横浜の「味噌ラーメン 雪ぐに」の柴田店主(後列左から5番目)、相模原の「中村麺三郎商店」の中村店主(後列左から3番目)、飯田店主にこどもホスピスを紹介した「玄品 とらふぐ料理専門店」の山口社長(後列右端)、佐賀の「カジ シナジー レストラン」の梶原シェフ(後列左から2番目)らも駆けつけた

「これまでも、ティーンの子どもたちに向けた魚のさばきかた教室や、胃ろうの子どもも参加できるイタリアンランチ会などを開催してきました。けれども、ここまで大規模の食イベントははじめて。思春期の子どもたちの多くはホスピスに来たがらなくて、孤独感を深めてしまうケースも少なくないんですが、ラーメンの力は絶大のよう。『ラーメンやったら、行く!』と、中学生以上の子どもたちもたくさん参加してくれました」(西出さん)

現在、TSURUMI こどもホスピスの利用者は約200家族。その約7割が、小児ガンを患うこどもとその家族だという。

「抗がん剤を受けていると、味覚が変わって味の濃い食事を好む子どもが多いんです。ですから、カップラーメンはとても喜ばれるんですよね。今回、全国的に有名なラーメン屋さんがやってくるということで、お父さんたちも大喜び。子どもも大人も一緒に体験できる、素敵なイベントになりました」(西出さん)

イベントで振る舞われた飯田商店のラーメン。麺もスープも本店仕様で、チャーシューはブランド豚「TOKYO X」のバラ肉など。サイドには、飯田店主が持参した松茸をつかった松茸ごはんが登場

湯河原の飯田商店といえば、全国からラーメンファンが訪れる超人気店。専用サイトで予約がスタートすると、あっという間に席が埋まってしまう「日本一予約のとれないラーメン店」としても有名だ。首都圏の旨いラーメンに贈られる「TRYラーメン大賞」のしょう油部門とつけ麺清湯部門、TRY大賞で連覇を続け、殿堂入りを果たしている。

この日提供されたのは、湯河原本店で提供されているしょう油ラーメン。夜中の12時前に仕込みを終え、その足でトラックに積んでホスピスにやってきたそうだ。黄金色に輝くスープは、地鶏とブランド豚でとる滋味たっぷりの味わい。華やかでピュアなしょう油スープと、国産小麦が香るしなやかな自家製麺がよく合う。

ホスピスの庭にゆで麺機と盛りつけカウンターを設置、ゆでたてのラーメンが提供された。温められたスープから、なんともいい香りが立ち上る

飯田店主が自家製麺をゆでて温めたスープに入れ、チャーシューとメンマ、青ネギと海苔をトッピング。できあがったアツアツのラーメンが、訪れた子どもと家族たちに手渡されていく。

「これがホンマもんのしょう油ラーメンや!」「こんなおいしいラーメン、初めてやわあ」と、子どもも大人もみんな笑顔。普段、病院の食事が進まないという子どもも、ニコニコと完食していた。

「いま、このときの大切さを実感しました」(飯田店主)

ボランティアスタッフにもラーメンが提供され、無事にイベントが終了。「楽しい一日でした! 小さな子から大きな子、ボランティアスタッフ、ご家族、みんながひとつになって、おいしいラーメンが一緒に食べられた。身体がしんどい子もいたと思いますが、みなさん笑って帰ってくれてよかったです」とは、施設スタッフの安在志織さん。

おいしいラーメンに、手を叩いて大喜び

飯田さんも子どもや家族たちと話したり遊んだり、充実した1日を過ごした。イベントに参加し、大きな学びを得たという。

「そもそものきっかけは、玄品ふぐの山口社長から『飯田商店さんがこどもホルピスにラーメンをつくりに来てくれたら、こどもたちはすごくうれしいと思うねんな』と、娘さんが言っていると聞いたことでした。そこでホスピスに連絡して、今回のイベントが実現したんです。参加した子どもとご家族がラーメンを食べている姿を見るだけで、グッとくるものがありましたね。みなさんに喜んでもらえて、純粋にうれしいです。僕たちも、いろんなものをもらった一日でした。一番強く感じたのは、お店でもそれ以外の場所でも、『もっと一生懸命にラーメンをつくろう』という想い。一生懸命生きている子どもたちやご家族と一緒に過ごして、心からそう感じました」(飯田店主、以下同)

いままでも真剣にラーメンや食べ手に向き合ってきたものの、どこかで「次、頑張ろう」「また会ったときでいいや」という気持ちがあったと気づいたそうだ。

「今日、このときが大切なんだなと。もっと一瞬一瞬を大切に、誠心誠意、魂を込めてラーメンをつくらなきゃ、と思いました。愛に包まれた空間ってこういう場所で、こんな時間なんでしょうね。ラーメンをつくって、また来ます!」

――ホスピスについての記事はこちら――

photo&text:萩原はるな

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