「寄付をカジュアルにしたい」。ヘアメイク山本麻未の『キフクリエイト』は、どこが新しいのか【後編】
2024年に報告された「世界人助け指数」で日本は142ヵ国中141位となっています。そんななか、ヘアメイクアップアーティストの山本麻未さんは、「みんなの“好き”や個性、発想を寄付につなげたい」と『キフクリエイト』を設立。その活動内容や未来の展望について彼女に聞きました。【後編】
まずは人の親切を素直に受けることから
欧米などに比べて、日本では寄付文化が根づいていないように見える。そう山本さんに話したところ、「それは寄付の形が違うだけだ」という答えが返ってきた。
「日本には“おすそ分け”とか“助け合い”といった文化がありますよね。そういう寄付の精神的エネルギーみたいなものは、他の国と変わらないと思うんです。ただ、国によっては宗教的にお金を寄付することが当たり前だったりしますが、日本はそういう文化はあまりないんですよね。
この(世界人助け)指数を計るための質問項目には、『この1ヵ月間に見知らぬ人、あるいは助けを必要としている見知らぬ人を助けたか』というものもあって。日本人は謙虚だから、たとえば道を聞かれて答えていたとしても、『あれぐらいでは助けたと言えないだろう』とカウントしない気がするんです。募金額などは少ないのかもしれませんが、本当のところは、もっと人助け指数は高いんじゃないかと思っているんですよね」

「人助け指数の低さは、日本人の謙虚さが影響していると思う」と山本さん
そうはいっても、上位にランクインとまでいかないのはたしか。寄付精神をカジュアルに根づかせていくには、どうしたらいいのだろう?
「まずは、自分が素直に人の親切を受け止めるようにすることじゃないかと思います。たとえば電車の席だって、譲りたいけど『断られるかもしれないから』と躊躇(ちゅうちょ)してしまうことって多いですよね。皆、助けてあげたいけど、拒絶されそうで一歩を踏み出せない。
でも、自分が助けを受けたときに素直に感謝できたら、今度は自分も気軽に『助けるよ』と言えると思うんです。私も以前出張のとき、夫とどうしても時間を合わせられず、子どもにひとりで留守番をお願いすることになったんです。そのことを行きつけのカフェのオーナーさんに雑談として話していたら、『次回からはそういうとき、ウチで見てあげるよ』と言ってくれて!すごくありがたかった。子どももその時間が楽しかったみたいで、私もすごく助かりました。
世の中には、意外に“誰かの助けになりたい人”が多いんじゃないでしょうか。『人に迷惑をかけてはいけない』『他人に安易に子どもを預けるのは危険だ』といった認識も大事ですが、可能な範囲で、差し伸べられた手をつかんでみてはいかがでしょうか」

KIFU COFFEEの開発サポート、製造などを担当する『自家焙煎珈琲ふろんてぃあ2』オーナーの佐藤雅一さんと
寄付をする側、される側、どちらもハッピーに!
そもそも、寄付の精神とはどんなものだろうか。
「寄付に“こうあるべき”はありません。私もそうですが、自分自身が大変なときは、他人に手をさしのべるなんて難しいと思います。だからこそ、寄付にはいろんな形があっていいと思います。それが広く認められるようになってほしい。
たとえばキフクリエイトが販売しているKIFU COFFEEは、それを買って貢献する人というもいれば、パッケージのイラストを描くことで寄付活動としている人もいます。そのなかには子どももいます。そんなふうに、自分ができることだけでいいんです。
キフクリエイトでは、寄付を応援や共感の表現方法のひとつと考えています。想いを伝えられる手段をいろいろ提供するのが活動目的。寄付をする側、受け取る側の双方が幸せになれるものじゃないと、根づいていかないと思うんですよね」

KIFU COFFEEのキュートなイラスト。見るだけでハッピーな気持ちになる
KIFU COFFEEが軌道に乗り始めたいま、山本さんが次にやりたいことは?
「小さな団体なのでできることには限りがあるんですけど、いま扱っている大好きな花とコーヒーに、音楽を組み合わせたいと考えています。それが何らかの形で寄付につながるといい。理想は、寄付した人もハッピーになれること。だから何か、楽しくなる空間を設計したいんです」

山本さんの次の目標は、コーヒーと花と音楽をつなぐことだ
最後に、個人的な夢を教えてもらった。
「いろんな国や場所に生きる人たちと、違う価値観を認め合う生き方をしたい。頭に浮かんでいるイメージとしては、みんなでハイタッチをしながら暮らしている感じ(笑)。もしも将来、すごいお金持ちになれたら、若者に投資するおばあさん……かな。結局私は“応援する人”になりたいんですね」
text:山本奈緒子
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