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「海洋ごみからシューズを生む」adidasの挑戦
「海洋ごみからシューズを生む」adidasの挑戦
PROJECT

「海洋ごみからシューズを生む」adidasの挑戦

プラスチックごみや過剰漁獲など、海にまつわる問題は山積しています。すべての生命の源である海だからこそ、美しく変えたいという思いは万国共通。今回は、ドイツに本社を置くアディダスが取り組む、海のための活動を紹介します。

海洋プラスチックごみから、
さまざまなプロダクトを

海へのプラスチックごみの流入を防ぎ、環境の美しさを保つことを目的に活動をするParley for the Oceans。

地球環境保全のための活動に、いち早く取り組んできたスポーツブランド「アディダス」。直営店にはランニングシューズやトレーニングウエアをリサイクルするための回収箱が当たり前のように設置されているほか、2012年には、水を使わない染色方法「ドライダイ」を採用することで汚水の減量に成功した。

また、多くのグローバル企業の主導のもと、国際的に「持続可能な方法で生産された綿花」と認定された「ベター・コットン」を積極的に導入している。ドイツの本社をはじめ、日本を含む世界に75ヵ所あるオフィスでは、ペットボトルなどプラスチック製ボトルの使用を禁止することで、スタッフ個人個人の意識改革を行ってきた。

そんななか、いまもっとも深刻な環境問題として力を注ぐのが海洋汚染問題である。アディダス・ランニング・ジェネラルマネジャーのアルベルト・ウンシーニ・マンガネリ氏は言う。

「私たちが直面している海洋プラスチック危機は、ますます切迫しています。毎分、トラック1台分ものプラスチックごみが海に流れ出しており、2050年には世界の海に漂う海洋プラスチックの量が魚の量を上回る可能性があるのです。私たちは日々プラスチックを使って捨てることで、この問題に影響を及ぼしています。いまこそ、行動を起こさなければなりません」

回収後はリサイクルのために一度粉々に。

陸に打ち上げられたクジラの胃の中に詰まった大量のレジ袋、日本とハワイの間にポツリと位置するミッドウェー島に漂着した使い捨てライターや釣り糸、同地でコアホウドリのヒナ鳥が、親鳥からエサと間違えて与えられたプラスチック製のおもちゃ——。さらに、海に流されたプラスチック類が太陽の紫外線を浴びてマイクロプラスチックへと変質し、生態系に深刻なダメージを与える懸念もある。

アディダスは、海洋破壊の防止に努める環境保護団体「Parley for the Oceans」と手を組み、新しいプロジェクトを始動した。プラスチック廃棄物をプロダクトの原料として使用する取り組みだ。2015年、ニューヨークで開催された国連のイベントで、最初のコンセプトシューズを発表。

糸となり、やがてランニングシューズやトレーニングウエアになる。

それは、海洋のプラスチック廃棄物や、違法に設置された深海の漁網を回収し、リサイクルした糸や繊維をアッパー部分に使った画期的なものだった。以来、世界中の離島や海岸で海洋プラスチックごみを回収する役割をParley for the Oceansが担い、そこから生まれたリサイクル素材のランニングシューズやトレーニングウエアをアディダスが世に出すサイクルができあがった。

アッパーの一部に圧縮加工を施し、抜群のフィット感に。廃棄プラスチックから製造した糸を部分的に採用したアルファバウンス+ラン パーレイ W。

「2015年の試作品を経て、2016年にプラスチック廃棄物を用いた第1世代の製品を販売しました。2018年までに生産したアディダス×Parleyのシューズは800万足、2019年は1100万足の生産を目標に掲げています。これまでの回収活動により、1400t以上のプラスチックごみが海に流出するのを防ぎました。まだまだ、さらなる前進を続けます」

海のごみから作られたシューズは通気性とストレッチ性に優れ、軽くて走りやすいという機能性も兼ね備える。

見据える先はさらに大きく、2024年までに製品に使うポリエステルもリサイクル品に切り替えると表明している。石油から新しく製造するのではなく、ペットボトルなどのプラスチック廃棄物から抽出したリサイクルポリエステルをすべての製品に使用し、再生素材100%を目指す。

「自社のビジネスはもちろん、その周囲にも、自分たちの意思決定が地球の未来にどのような影響を与えるのか考えるよう働きかけていきたい」というアルベルト氏。企業発の挑戦は、世界を動かしていく。

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Photo:Tetsuya Ito Text:Toyofumi Makino Edit:Asuka Ochi

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