地球の呼吸を体感! 霧島ジオパークの韓国岳で火山の営みを知る
宮崎県と鹿児島県の県境に位置する霧島山(霧島連峰)は、大小20以上の山々の総称で、カルデラや火山湖が織りなす壮大な景観をはじめとする、多様性あふれる豊かな自然を体感できます。今回は霧島山の最高峰、ダイナミックな景観を見せる「韓国岳(からくにだけ)」登山をレポートします。
硫黄の匂いとガスの噴気音を感じながら、いざ、山頂へ
鹿児島空港から韓国岳へ向かう途中に通過する霧島温泉街では、もくもくと湯けむりが立ちのぼっている。近くの硫黄谷噴気地帯では、車の窓を閉めていても硫黄のにおいが感じられた。大地のエネルギーを間近に感じる。
「えびの高原ビジターセンター」の駐車場にクルマをとめて山登りを開始。「韓国岳登山道」の表示に従って進んでいく。硫黄のにおいがぷんぷんと漂う、いかにも火山らしい場所だ。上のほうでは「ゴーッ」という音が長く長く続いている。はじめは飛行機かと思ったが、どうやらガスの噴気音のようだ。
霧島山の魅力は、何といっても現在進行形で活動している火山。噴火活動のレベルによっては入山規制がかかることもあるが、それも活火山だからこそだ。
登山口から30分ほど進んだところにある「硫黄山火口展望所」からは、火口から勢いよく噴気が上がるようすが見られる。噴気孔から出る音が大きくなったり小さくなったり、まるで大地が呼吸しているかのようだ。
硫黄山を通りすぎると本格的な登山道となる。しばらくすると視界が開け、見通しのよい道を登っていく。手前には神秘的な大浪池 (おおなみのいけ)。その奥にはうっすら錦江湾と桜島が見える。森林限界が低い火山では、気軽に高山気分を楽しめるのが魅力だ。
五合目から先は、火砕流と軽石の噴出が繰り返されてできた噴石丘を登り頂上を目指す。歩を進めるにつれ、足元のゴロゴロした岩が増えてきて歩きにくい。
黒い溶岩の岩をつかみながら進み、ついに山頂へ。韓国岳は「韓国まで見渡せるほど高い山」ということから、その名がついたといわれる。標高1700mの山頂からは間近に青い水を湛える大浪池、2011年に爆発した新燃岳の大噴火口、その奥にそそり立つ高千穂峰などが望める。どこか他の惑星を見ているような、雄大で不思議な景色だ。さらに遠くには、桜島や開聞岳を見渡す360度の素晴らしい眺望が広がっている。振り向くと直径900m、深さ300mに達する大きな火口が口を開けていた。
山頂からひたすら階段を下り、大浪池を回って下山する。途中は板階段が外れていたり、倒木があったり、ぬかるみにハマったり、なかなかスリリング。気をつけながら、探検気分を味わった。そのためか、見た目よりもかなり遠く感じられ、体力を消耗する。
まるで池の中に青い山があるように見える、美しく澄んだ大浪池。最後の噴火から長い時間が経過しているため、多様な植物が生息できる環境ができあがり、青い池と広葉樹が織りなす風景が広がっていた。紅葉の時期のコントラストは絶景に違いない。
霧島山は、火山ならではの多様な自然環境に触れられる貴重な場所だ。近年はレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)が注目されている。旅行をする際には、地域や環境へ負荷を与えないよう、自律した行動を実践する必要性がある。そんな小さな心がけはきっと、明るい未来をつくるはずだ。
photo&text:鈴木博美