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いい水は、いい森から生まれる。 「天然水の森」で植樹を体験!
いい水は、いい森から生まれる。 「天然水の森」で植樹を体験!
NATURE

いい水は、いい森から生まれる。 「天然水の森」で植樹を体験!

私たちが日々手軽に購入しているミネラルウォーターは、食品衛生法によると「水のみを原料とする清涼飲料水」。その原料である水は、地下から汲み上げられています。この地下水は、雨水が地表面から長い年月をかけて地中に浸透したもので、「木」と「森」が深く関係していることをご存じでしょうか? 森を整備せずに地下水を汲み上げすぎると、次世代に十分な地下水を残すことができなくなってしまいます。これからも良質な水を飲むための、森づくりを体験してきました

どんな森なら水を育めるのか?

水を育むのに、なぜ森づくりから始めるのか。それは、森が自然の濾過システムだからだ。森は雨水を何十年もかけて濾過するだけでなく、その土地が持つ豊富なミネラルもたっぷり含んだ地下水をつくりあげてくれる。雨が素早く地面に浸透するには、地表面が柔らかく、水を吸収しやすい状態であることが条件。雨水は、土や腐葉土によって濾過され、岩盤層を通ることで、カルシウムやマグネシウムといったミネラルを多く含んだ地下水になる。

ただ、森があればいいというわけではない。その地域に合った多種多様な植物が育つ森でなければ、土は柔らかくならず、良質な地下水は育まれないという。それぞれの土地に合った手入れも必要になる。自然のままに放置することも、人工的に伐採しすぎたり、同じ種類の植物ばかり植えたりするのも、どちらも好ましくないらしいのだ。

「 天然水の森 」で植樹

数人のグループに分かれ、東京チェンソーズのアドバイスを受けながら植樹していく

ミネラルウォーター「天然水」でも有名なサントリーは、製品をつくるうえで欠かせない「水」を守るため、全国22ヵ所の「サントリー天然水の森」で水源涵養(すいげんかんよう)活動をおこなっている。涵養とは「水がしみこむように、徐々に養い育てること」。つまり同社は、じっくり森を養い、美しい水を育もうと、グループ会社社員約6000人が参加する社員研修として、気の長い水源涵養活動を続けているわけだ。

今回、筆者が参加したのは、「サントリー 天然水の森 とうきょう檜原」での植林活動。ここは、サントリーが檜原村、檜原村木材産業協同組合とともに管理している森で、およそ1ヘクタールある人工林の斜面ではすでに杉や竹の伐採が済み、あらたに広葉樹を植林が進められている。この日の活動はサントリーの社員研修でもあるので、林業のプロである組合のメンバー「東京チェンソーズ」の指導のもと、計23人が数人ずつのグループに分かれておこなわれた。そのうちの1グループに、筆者が加えられたのだ。

青いポールが植樹する場所の目印。木が成長したときのことを考慮して間隔があけられている

うっかり気を抜くとすべり落ちそうな急斜面を進み、目印がつけられた場所に、苗木を植えていく。各目印に約1mずつの間隔があけられているのは、苗木が育ったときに、それぞれが枝葉を広げるスペースを確保するためだ。この間隔があれば、地面にも十分太陽光が届くという。

村の環境と斜面の状況なども考慮し、選ばれた6種の苗木

今回、植樹したのはウリハダカエデ、アカシデ、ヤマザクラ、エゴノキ、イロハモミジ、リョウブの6種類。日本の固有種や山地や雑木林などで、よく見る植物たちだ。これらは成長しても低木、または中木であまり高くはならず、村の日当たりを妨げることはない。しかも、根をしっかりと張るので、土砂崩れも防いでくれるのだ。

作業は、まず、目印の周辺の雑草や枯れ葉を取り除き、鍬をつかって、土の中に残っている根っこや石も除去する。苗木のポットの大きさに合う穴を掘ったら、ポットから苗木を取り出し、根っこをほぐしていく。その根っこ部分を掘った穴に入れて、土をかけ、踏み固める。ふんわり土をかけたほうが根が広がりやすいのではと思ったが、空気が入ると根が腐るため、踏み固めて空気を抜くのが重要だそうだ。

実際に鍬を持ってみると、柄が長くて少々苦戦

それにしても、この急斜面。苗を植えるための穴を掘るのも容易ではない。東京チェンソーズのみなさんが、あらかじめ丸太で道をつくってくれていなければ、私はまともに鍬を振ることもできなかっただろう。その丸太も、どう配置するかが木々の成長に影響するため、綿密に考えられ、設置されているらしい。

いつ植樹したものかわかるよう苗木には印のリボンがつけられている

植えた苗木の種類がわかるようにタグをつけ、リボンを結ぶ。リボンは、いつ植樹したものかわかるようにするための目印だそうだ。今後、雑草を刈る作業をすることから、植樹した苗木をうっかり切ってしまわないための目印にもなる。

国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養し、生物多様性を守りたい

植樹したエリアは、鹿が入らないよう柵で囲まれていて、柵の外周には、鹿が嫌う植物が植えられている

サントリー 天然水の森は、2023年で20周年を迎え、全国に約1万2000ヘクタールと活動対象面積が広がっている。サントリーによると、すでに同社の国内工場でくみ上げる地下水量の2倍以上の水を涵養、取水量以上の水を水系に育む「ウォーター・ポジティブ」を実現しており、さらに、生物多様性の減少傾向を食い止め回復を目指す「ネイチャー・ポジティブ」の取り組みにまでつなげているという。

「植樹を体験することで、自分の言葉で語れるようになります。研修で植樹したあと、休日に現地を再訪する社員も多数いるんです。檜原では3000本ほど植樹しますので、15年くらいで変化があるのではないでしょうか」(サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部・市田智之課長)

森を育て、守るにも時間がかかるが、水を育むためにはさらに長い年月がかかる。そのことをよく理解できた植樹体験だった。

なおサントリーでは、社員教育と並行して一般消費者向けに次世代環境教育「水育(みずいく)」も実施している。自然体験プログラムである「森と水の学校」や、小学校で先生方と一緒に行う「出張授業」を通して“自然との共生を意識してもらう”ことがその目的。実際に森を歩きながら学び土と水にふれる「森と水の学校」には、これまで約3.5万人以上が参加したという。

Text:林ゆり

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