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ニューカレドニアのサステナブルをめぐる旅② 先住民族カナックの暮らしを伝える「チバウ文化センター」で、世界的建築に出合った
ニューカレドニアのサステナブルをめぐる旅② 先住民族カナックの暮らしを伝える「チバウ文化センター」で、世界的建築に出合った
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ニューカレドニアのサステナブルをめぐる旅② 先住民族カナックの暮らしを伝える「チバウ文化センター」で、世界的建築に出合った

「天国に一番近い島」の呼び名で知られるニューカレドニアは、オーストラリア大陸の東、およそ1500kmに位置するフランスの海外領土。世界自然遺産に登録されたエメラルドグリーンのラグーンに囲まれた数十の島々から成る、南太平洋屈指のリゾート地です。ニューカレドニアは、サステナブルというワードがポピュラーになる以前から、持続可能な伝統文化、自然・野生動物観光に関する取り組みを積極的におこなってきました。2021年には、ナショナル・ジオグラフィック・トラベラーで「世界最高の持続可能なデスティネーション」のひとつに選ばれています。豊かな自然と多様な文化に彩られたニューカレドニアを、トラベルライターの鈴木博美さんがレポート。第2回目は、世界を舞台に活躍するイタリア人建築家、レンゾ・ピアノ氏が手がけた「チバウ文化センター」をご案内します。

「人も自然の一部でしかない」というカナックの教え

首都・ヌメアの中心部からバスで30分ほどのところにあるチバウ文化センターは、ニューカレドニアの先住民族・カナックの芸術文化の紹介や交流を目的とした複合施設。「チバウ」の名は、民族独立運動の指導者、ジャン=マリー・チバウ氏に由来する。設計は、パリのポンピドゥーセンターや日本の関西空港などで知られる世界的建築家レンゾ・ピアノ氏で、1998年にオープンした。

敷地内に大小10棟点在する、竹細工のような巨大な壁が弧を描く建物(上写真左)は、カナックの伝統的家屋「カーズ」(上写真右)を模してつくられた、カナック文化の展示室や図書館、ギフトショップなどだ。それぞれ、まるで長年そこにあったかのように風景にとけ込んでいる。その周囲ではヤシやナンヨウスギがすくすくと成長中。植栽はすべて、ニューカレドニアの植物相に取り込まれる構成にしたそうだ。

敷地内にはもちろん、伝統的なカーズもある。中を見学してみよう。まず、入り口に魔除けの木彫りがあるのが目につく。内部中央に進むと、とんがり屋根のおかげで天井がとても高いことに驚く。一年じゅう温暖なニューカレドニアで涼しく過ごすため、通気性をよくする工夫がなされているそうだ。いまでもカナックの人たちの集会所として利用されているだけでなく、このカーズで暮らしている家族もいる。

カナック文化を知ることができる貴重な施設とあって、観光客だけでなく、地元の小・中学生たちも課外授業で訪れていた。しっかり顔を上げて、先生の説明を聞いている子どたちの姿が印象的だった。

敷地内には「カナックの小径」という庭園がある。マングローブに沿って曲がりくねって続いている遊歩道沿いには、人類の始祖とされている「テア・カナケ」を誕生から死、そして再生までを描いた民族固有の神話の紹介があった。庭園ではまた、カナック社会におけるココナッツやタロイモ、ヤムイモなどの植物の重要性も学べる。

庭園に提示されている神話のひとつに、こんなものがある。「テア・カナケは新人類として生まれ変わる。切り株から新しい幹が出てくるように、語りを紡ぐ使者。テア・カナケは、再生の象徴である穴のあいた岩を横断するのです。(中略)、この語りのおかげで新しい時代が幕を開けます。とくにニューカレドニアなどに生息するウミヘビ、トリコレイエは、命ある世界へと赴くという意味の象徴です。ヘビは海辺に皮を残し、人間の形を成しながら海から出ていくのです」。ここにはカナックの輪廻感、つまり「人も自然の一部でしかない」ことが表現されているそうだ。鳥のさえずりと草木が擦れる音に包まれた庭園を歩いていると、まるでカナック神話の世界に入り込んだような気分になる。

ともに成長してゆける環境づくりを大切に、人びとに愛され続ける建築を探究してきたレンゾ・ピアノ氏ならではの「サステナブル」な建築とプリミティブに満ちたカナックの世界観。ニューカレドニア旅行の際には、ぜひ訪れてほしい。

協力:ニューカレドニア観光局

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