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海底火山が連続衝突してできた「ユネスコ世界ジオパーク」伊豆半島で“自然の大彫刻”に驚く
海底火山が連続衝突してできた「ユネスコ世界ジオパーク」伊豆半島で“自然の大彫刻”に驚く
NATURE

海底火山が連続衝突してできた「ユネスコ世界ジオパーク」伊豆半島で“自然の大彫刻”に驚く

いまから2000万年前には、本州のはるか南にあった海底火山たち。それが100万年くらい前にフィリピン海プレートに載って北へ移動、本州に衝突し、噴火や隆起を繰り返しました。結果、60万年前にできたのが伊豆半島。その地層には、かつての海の記憶と、大地となったときの痕跡(こんせき)が残っています。南伊豆や西伊豆は、荒々しい断崖や波に削られた洞窟=海食洞でいっぱい。海と温泉だけじゃない、もうひとつの伊豆を訪ねました。(写真:千貫門と富士山)

ダイナミックな地球の歴史を確認できる半島

「恵比須島」の水底土石流の地層

前述のように、伊豆半島は海底火山が移動してきてできた地域。複雑な海岸線や地層などで、いまもダイナミックな地球の歴史を感じられることから、ユネスコが「ユネスコ世界ジオパーク」に認定している。ジオパークとは、地球(Geo)と公園(Park)を合わせた言葉で、地球科学的に意義のある地形や景観などが保全されていて、教育や観光に活用されているエリアを指す。伊豆半島を歩けば、地球のエネルギーと気の遠くなるような時間の流れを体感できるだろう。

徒歩20分で一周できる地質の宝庫「恵比須島」

恵比須島の岩肌には軽石や火山灰でできた美しい縞模様が

伊豆半島の南端部東側、下田湾の須崎半島南端に浮かぶ恵比須島。橋でアクセスできるうえ、島をぐるりと取り囲む遊歩道の全長は300m、歩いて20分ほどという、ジオパーク体験の始まりにはうってつけの小さな無人島だ。

歩き始めるとすぐ、断崖に刻まれた縞模様が目に飛び込んできた。海底火山が噴火後にしたあと溶岩が冷え固まり、そこを気の遠くなるような年月をかけて波と風が削ってできた、自然の彫刻だ。目を凝らせば、海底で起きた火山噴火の痕跡や、崖崩れで流れ落ちた水底土石流の地層も確認できる。白っぽい層は、かつてここが海底だった証なのだとか。

恵比須島の千畳敷

潮が引き始めると、海岸線は表情を変え、足もとに「千畳敷」と呼ばれる平らな岩場が現れる。波に削られてなめらかになった地層が隆起したもので、干潮時のみその姿を見せる。千畳敷の表面には人が岩を切り出したような跡が。ここは江戸時代やそれ以前に「やわらかくて加工しやすいうえ、耐火性にすぐれる」とたたえられた伊豆石の採石場だったそうだ。切り出された伊豆石は、船で江戸まで運ばれ、あの江戸城にも使用されたといわれる。

マグマが地層を裁ち切った跡「岩脈」

南伊豆町の入間港から、山道を歩くこと約40分。木立を抜けると、突然、視界が開ける。見下ろせばそこが、「伊豆の秘境」とも呼ばれる千畳敷だ。切り立った崖には、地層の縞模様が幾重にも刻まれている。

訪れる人は少なく、秘境気分は満点

訪れる人は少なく、秘境中央左寄りの黒い部分が、岩脈の痕跡だ

恵比寿島と同様に、ここもかつての採石場。人が切り出した痕跡が、遺跡のように残っている。視線を上げると三ツ石岬の断崖がそびえ立ち、地下から上昇したマグマが地層を断ち切った「岩脈」がむき出しになっている。入間千畳敷では、地球内部で起きたエネルギーの爆発が、ときを越えて可視化されていた。

競馬ファンの聖地?「馬ロック」で必勝祈願

西伊豆町・黄金崎(こがねざき)公園の展望台から北を見ると、駿河湾を背景に、巨大な馬の首から頭のようにも見える断崖絶壁が浮かび上がる。いまにも海へ駆け出しそうな「馬ロック」だ。約1600万年前、火山活動でできた安山岩の割れ目に、地下から熱水が入り込んで化学反応がおき、岩石が黄白色や金色に変わった。その後、長い年月をかけて風や波に削られ、こんな馬の頭部のような形になったという。夕日が沈むころ、岩肌は黄金色に染まる。

黄金崎公園から望む馬ロック(写真:西伊豆町観光協会)

馬ロックは日本の奇岩百景のひとつに数えられており、県の天然記念物でもある。勝負運アップのパワースポットとして、多くの競馬ファンが訪れることでも有名だ。

無数の五角柱、六角柱が突き出た浮島海岸の「火山の根」

奇岩は、海底火山のマグマが隆起して地上に現れた「火山の根」の一部

同じく西伊豆の浮島(ふとう)海岸も見逃せない。「火山の根」と呼ばれる、ウロコのような岩肌をもつ奇岩の群れが、板状に立ち並んでいる。地中でマグマが爆発すると、溶岩が岩の割れ目を通って上に押し上がる。その通り道が冷え固まり、長い時間を経て地表に現れ、こんな奇岩群となったのだ。

近づいてみると、岩の表面には無数の五角柱や六角柱が突き出て並んでいる。溶岩やマグマは、冷え固まるときに少し縮むが、その際もっとも効率よく収縮できる形が五角形や六角形だそうで、こんな幾何学的な柱をつくってしまったのだ。

横向きに発達した珍しい柱状節理

これらの冷え固まったマグマは、もともとは地下深くにあった。それが隆起し、周囲の岩が波や風によって削られ、いま私たちの前に姿を現している。浮島海岸は、火山の内部構造が見える場所なのだ。

下田・ペリーロードの伊豆石に2000万年前の跡を見た

下田の旧町に点在する伊豆石の壁

さて、伊豆半島南部の下田市に戻ろう。ここの旧町(きゅうちょう)には、江戸時代に幕府直轄の「風待港」として栄えた区画が残る。ここで出合える縞模様の石壁が、前述の伊豆石だ。その石肌には細かな気泡や層の跡が。2000年前についた模様なのだろうか。平滑川(ひらなめがわ)沿いのペリーロード周辺には、伊豆石でできた蔵などが残り、リノベーションされてカフェや雑貨店になっていて、歩いているだけでも、かなり楽しい。ジオパークをめぐるときは、ぜひこのまちにも立ち寄ってほしい。

photo & text:鈴木博美

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